8 非一意解の時間の比較

7 節の議論により、 A, B を通る「逆さサイクロイド」は一意的に決まることがわかったが、 $L>\pi H/2$ の場合は $\theta_0>\pi$ となるので、 そのような逆さサイクロイドは一旦 $x$ 軸よりも下を通り、 そこから上がってくることになる。

その場合は、 5 節の (27) で見たように、 A, B を通る微分方程式 (20) の「別な解」が存在する。 すなわち、$0<x<\pi H/2$ では逆さサイクロイドで $x=\pi H/2$$x$ 軸に接し、 そしてそこから $x$ 軸自体を経路とする解である (図 8)。 なお、7 節の「一意存在」は、 あくまで「直線部分のない通常の逆さサイクロイド」としての一意存在であり、 「A, B を通る微分方程式 (20) の解」 という意味では一意的ではない。

この両者のどちらが速いのか、実際にかかる時間を比較してみることにする。

なお、$L<\pi H/2$ の場合は、7 節の逆さサイクロイド でも B では最下点に達せず、これ以外の解は見当たらない。

前者の逆さサイクロイドを $f_1(x) = H-\alpha_0\mathrm{cyc}(x/\alpha_0)$ とし、 後者を $f_2(x)$ とする ( $\alpha_0 > H/2$):

\begin{displaymath}
f_2(x) =
\left\{\begin{array}{ll}
\displaystyle H-\frac{H}...
...le \left(\frac{\pi H}{2} < x \leq L\right)\\ \end{array}\right.\end{displaymath}

実はこの場合、A, B を通る (20) の解は、 この $f_1$, $f_2$ 以外にもある。 それは、$H/2$$\alpha _0$ の間の $\alpha $ に対するもので、 $f_2$ のように逆さサイクロイドの最下点 ($x$ 軸の下) まで進み、 そこから一旦水平に進み、最後 B の手前で同じ逆さサイクロイドに 戻って少し上がるものである。
図 8: $f_1(x)$, $f_2(x)$, $f_3(x)$
\includegraphics[width=0.7\textwidth]{fig-timediff-f1f2f3.eps}

これを $f_3(x)$ として、これにかかる時間もついでに比較することにする。 $f_3(x)$ は、 $H/2<\alpha_3<\alpha_0$ なる $\alpha_3$ に対して、

\begin{displaymath}
f_3(x) =
\left\{\begin{array}{ll}
\displaystyle H - \alph...
...ght)
& (\alpha_3\pi + c_1\leq x \leq L)\\
\end{array}\right.\end{displaymath} (41)

としたものである。ここで、$c_1$ は以下のようにして $f_3(L)=0$ となるように取る。すなわち、$\theta_3$
\begin{displaymath}
H=\alpha_3(1-\cos\theta_3),\hspace{1zw}\pi<\theta_3<2\pi\end{displaymath} (42)

となるものとして取り、$x_3$
\begin{displaymath}
x_3 = \alpha_3(\theta_3-\sin\theta_3)\end{displaymath} (43)

とする。この $\theta_3$ は、 直線部分を持たない逆さサイクロイド $y=H-\alpha_3\mathrm{cyc}(x/\alpha_3)$ が、 一旦 $y<0$ となった後で再び $y=0$ となるパラメータ値 ($>\pi$) であり、 $x_3$ はそのときの $x$ 座標である。 これに対し (41) の $c_1$ は、$c_1=L-x_3$ とすればよい。

まず、$f_1(x)$ に対してかかる時間 $T_{f_1}$ は、(29) より、

\begin{displaymath}
T_{f_1} = \sqrt{\frac{\alpha_0}{g}}\,\theta_0\end{displaymath} (44)

であることがわかる。ここで、$\theta_0$, $\alpha _0$ は、
\begin{displaymath}
L = \alpha_0(\theta_0-\sin\theta_0),
\hspace{1zw}H = \alpha_...
...pace{1zw}\pi<\theta_0<2\pi,
\hspace{0.5zw}\alpha_0>\frac{H}{2}
\end{displaymath}

を満たす、一意に決まる値である。

また、$f_2(x)$ に対してかかる時間 $T_{f_2}$ は、 $(x,y)=(\pi H/2, 0)$ までにかかる時間は (31) より $\pi\sqrt{H/(2g)}$ で、 その点での物体の速さ $v$ は (10) より $v = \sqrt{2gH}$ で、 あとはその速さで等速に $L-\pi H/2$ の距離だけ進むから、

\begin{displaymath}
T_{f_2}
= \pi\sqrt{\frac{H}{2g}} + \frac{\displaystyle L-...
...gH}}
= \frac{\pi}{2}\sqrt{\frac{H}{2g}} + \frac{L}{\sqrt{2gH}}\end{displaymath} (45)

となる。

$f_3(x)$ に対してかかる時間 $T_{f_3}$ は、 直線部分では $f_2$ 同様等速に進むので、 その直線部分を取り除いて連結した逆さサイクロイドに対してかかる 時間 $\sqrt{\alpha_3/g}\,\theta_3$ と、 その直線部分を進む時間の和になることがわかる。 最下点までの落下高さは $2\alpha_3$ なので、最下点での速さ $v$ $v=\sqrt{4g\alpha_3}$ となり、よって、

\begin{displaymath}
T_{f_3}
= \sqrt{\frac{\alpha_3}{g}}\,\theta_3
+ \frac{c...
...rac{\alpha_3}{g}}\,\theta_3
+ \frac{L-x_3}{2\sqrt{g\alpha_3}}\end{displaymath} (46)

となる。

まず、細かい関係を一応確認しておく。 まず、 $\pi<\theta_0<2\pi$, $\alpha_0 > H/2$ は、図からは明らかであるが、 式の上で確認すると、 まず、$\theta_0$7 節の (40) で 決まるもので、今の場合は、

\begin{displaymath}
p_1(\theta_0) = \frac{L}{H} > \frac{\pi}{2}
\end{displaymath}

を満たすが、 $p_1(\pi)=\pi/2$ であるから 確かに $\theta_0>\pi$ であることがわかる。また、$\alpha _0$ $\pi<\theta_0<2\pi$ より、確かに
\begin{displaymath}
\alpha_0 = \frac{H}{1-\cos\theta_0} > \frac{H}{2}
\end{displaymath}

となる。

一方、$f_3$ の方は、$\alpha_3$ $H/2<\alpha_3<\alpha_0$ ととり、$\theta_3$ を (42) で決めたものであるが、 この場合、

\begin{displaymath}
1-\cos\theta_3 = \frac{H}{\alpha_3} < 2
\end{displaymath}

なので、確かに $\pi<\theta_3<2\pi$ の範囲では (42) を満たす $\theta_3$ がただ一つ決まる。 そしてこのとき、
\begin{displaymath}
1-\cos\theta_3 = \frac{H}{\alpha_3} > \frac{H}{\alpha_0} = 1-\cos\theta_0
\end{displaymath}

となるので、 $\pi<\theta_3<\theta_0<2\pi$ となることもわかる。

さて、$T_{f_1}$ は、$\alpha _0$ を使わずに $\theta_0$ だけで表わせば、

\begin{displaymath}
T_{f_1} = \theta_0\sqrt{\frac{H}{g(1-\cos\theta_0)}}\end{displaymath} (47)

となり、$T_{f_3}$$\alpha_3$, $x_3$ を使わずに $\theta_3$ だけで 表すと、
$\displaystyle T_{f_3}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \theta_3\sqrt{\frac{H}{g(1-\cos\theta_3)}}
+ \frac{L-\alpha_3(\theta_3-\sin\theta_3)}{2\sqrt{g\alpha_3}}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \theta_3 \sqrt{\frac{H}{g(1-\cos\theta_3)}}
+ \frac{L}{2\sqrt{g}}...
...3}{H}}
- \frac{\theta_3-\sin\theta_3}{2\sqrt{g}}\sqrt{\frac{H}{1-\cos\theta_3}}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle = \frac{L}{2\sqrt{g}}\sqrt{\frac{1-\cos\theta_3}{H}}
+ \frac{\theta_3+\sin\theta_3}{2\sqrt{g}}\sqrt{\frac{H}{1-\cos\theta_3}}$ (48)

となる。

この $\theta_3$ $\pi<\theta_3<\theta_0<2\pi$ の範囲で動かすことが可能で、 元の $f_3$ の定義より、 この (48) で $\theta_3$ $\theta_3 = \theta_0$ ( $\theta_3\rightarrow\theta_0-0$)、 または $\theta_3=\pi$ ( $\theta_3\rightarrow\pi+0$) とすると、 $T_{f_3}$$T_{f_1}$, $T_{f_2}$ にそれぞれ一致することが予想される。

実際、 $\theta_3 = \theta_0$ とすると、(48) は

\begin{displaymath}
T_{f_3}
= \frac{L}{2\sqrt{g}}\sqrt{\frac{1-\cos\theta_0}{H}...
...heta_0+\sin\theta_0}{2\sqrt{g}}\sqrt{\frac{H}{1-\cos\theta_0}}
\end{displaymath}

となるが、$\theta_0$ では
\begin{displaymath}
\frac{L}{H} = p_1(\theta_0) = \frac{\theta_0-\sin\theta_0}{1-\cos\theta_0}
\end{displaymath}

が成り立つから、
\begin{displaymath}
\theta_0+\sin\theta_0
= 2\theta_0-(\theta_0-\sin\theta_0)
= 2\theta_0-\frac{L}{H}(1-\cos\theta_0)
\end{displaymath}

となり、よって、(47) より
\begin{displaymath}
T_{f_3}
= \frac{L}{2\sqrt{g}}\sqrt{\frac{1-\cos\theta_0}{H}...
...heta_0}}
- \frac{L}{2\sqrt{gH}}\sqrt{1-\cos\theta_0}
= T_{f_1}
\end{displaymath}

となることがわかる。 また、$\theta_3=\pi$ とすれば、 $T_{f_3}=T_{f_2}$ となることは容易に確認できる。 すなわち $f_3$ は、$f_1$$f_2$ を連続的につなぐものに なっていることがわかる。

よって、$T_{f_3}$$\theta_3$ の関数と考え、 その単調性などを調べれば、$T_{f_1}$, $T_{f_2}$, $T_{f_3}$ の 大小関係がわかることになる。

(48) より、

\begin{displaymath}
2\sqrt{\frac{2g}{H}}\,T_{f_3}
= \frac{L}{H}\sqrt{2(1-\cos\t...
...c{\theta_3+\sin\theta_3}{\displaystyle \sin\frac{\theta_3}{2}}
\end{displaymath}

となるが、この右辺を $p_3(\theta_3)$ とする ($\theta_0$ は定数と見る)。 このとき、
\begin{eqnarray*}p_3'(\theta_3)
&=&
p_1(\theta_0) \cos\frac{\theta_3}{2}
+\fr...
...eta_3}{2}
=
(p_1(\theta_0)-p_1(\theta_3))\cos\frac{\theta_3}{2}\end{eqnarray*}


となる。

今、 $\pi\leq\theta_3\leq\theta_0<2\pi$ より、 $p_1(\theta_0)-p_1(\theta_3)\geq 0$, $\cos(\theta_3/2)\leq 0$ であるから、 $p_3'(\theta_3)\leq 0$ で、0 になるのは $\theta_3=\theta_0,\pi$ の ときのみなので $p_3$ は単調減少であり、 よって $\pi<\theta_3<\theta_0$ に対して

\begin{displaymath}
T_{f_2} > T_{f_3} > T_{f_1}\end{displaymath} (49)

となることがわかる。 つまり、$f_2(x)$, $f_3(x)$ の経路よりも $f_1(x)$ の経路の方が 短い時間で B に到達し、$f_2$, $f_3$ は最速降下線ではなく、 やや遠回りするように見える $f_1$ が最速らしいことがわかる。

次に、$f_1$, $f_2$ で同時に物体をすべらせると、 $f_2$ の場合に最下点に達する時刻

\begin{displaymath}
T_4=\pi\sqrt{\frac{H}{2g}}
\end{displaymath}

のときには、$f_1$ の方はどこにいるかを考えてみる。 $f_1$ の方は、(29) により時間とパラメータが比例するので、 $f_1$ の方のパラメータ $\theta_4$ は、
\begin{displaymath}
\theta_4
= T_4\sqrt{\frac{g}{\alpha_0}}
= \pi\sqrt{\frac...
...\pi\sqrt{\frac{1-\cos\theta_0}{2}}
= \pi\sin\frac{\theta_0}{2}\end{displaymath} (50)

となるが、 $\pi<\theta_0<2\pi$ より $\theta_4 < \pi$ であり、 よって $f_1$ の方はまだ最下点には達していないことがわかる。 ではその $x$ 座標 $x_4$ と、 $f_2$ の方の $x$ 座標 $\pi H/2$ の大小はどうだろうか。 (50) より、
\begin{eqnarray*}x_4 - \frac{\pi H}{2}
&=&
\alpha_0(\theta_4-\sin\theta_4)-\fr...
...\alpha_0\left(\theta_4-\sin\theta_4-\frac{\theta_4^2}{\pi}\right)\end{eqnarray*}


となるので、 $p_4(\theta) = \theta-\theta^2/\pi-\sin\theta$ ( $0\leq\theta\leq\pi$) として、この符号を考える。
\begin{displaymath}
p_4'(\theta) = 1-\frac{2}{\pi}\,\theta -\cos\theta
\end{displaymath}

となるが、$1-2\theta/\pi$ は傾き $(-\pi)/2$$y$ 切片が 1 の直線なので、 $y=\cos\theta$ のグラフとは $\theta=0,\pi/2,\pi$ で交わり、 そこで符号が変わる。よって、$p_4'$ の増減表は以下のようになる
$\theta$ 0 $\cdots$ $\pi/2$ $\cdots$ $\pi$
$p_4'$ 0 $-$ 0 $+$ 0
$p_4$ 0 $\searrow$   $\nearrow$ 0
よって $\theta_4 < \pi$ では $p_4(\theta_4)<0$ となるので、 $x_4<\pi H/2$、すなわち $f_1$ の方の $x$ 座標は $T_4$ 時点ではまだ $\pi H/2$ に達しておらず、 水平位置では $f_2$ の方よりも負けていて、 その後で $f_2$ の方が直線に入ったところで $f_1$ が追い抜くことがわかる。

では、$T_4$ の時点での $f_1$ の方の $y$ 座標 $y_4$ はどうだろうか。 (50) より、

\begin{eqnarray*}y_4
&=&
f_1(x_4)
= H - \alpha_0(1-\cos\theta_4)
= \alpha_...
...0\left(\frac{\theta_4^2}{\pi^2} - \sin^2\frac{\theta_4}{2}\right)\end{eqnarray*}


となるが、 $0<\theta_4<\pi$ であり、 $y=x/\pi$ は原点を通り傾き $1/\pi$ の直線、 $y=\sin(x/2)$$x=\pi$ で 1 となるので、 これらは原点と $(\pi,1)$ で交わり、 $0<x<\pi$ では $0<x/\pi<\sin(x/2)$ となる。 よって $y_4<0$ であり、$T_4$ の時点では $x=\pi H/2$ や最下点までは 達してはいないが、 既に $x$ 軸よりも下の位置には来ていることがわかる。

なお、本節で、$f_2$, $f_3$ が実際には最速降下線には ならないことを示したが、 実はそれは微分方程式 (20) の導出の段階での 問題もある。

(20) は、一般解 (23) 以外に、 $h=c_0$ という特異解を持っていて、 そのために (27) のような解も できてしまっていたが、その特異解は実は (18) を 導くところでついてしまったものである。 それを次に説明する。

オイラー方程式の元々の 2 階の微分方程式 (17) に 戻って考える。 今 $\langle z\rangle =\sqrt{1+z^2}$ と書くことにすると、$F$

\begin{displaymath}
F=\frac{\langle f'\rangle }{\sqrt{2g}}(H-f)^{-1/2}
\end{displaymath}

と書け、
\begin{eqnarray*}(\langle x\rangle )'
&=&
(\sqrt{1+x^2})'
= \frac{2x}{2\sqrt...
...\rangle }{\langle x\rangle ^2}
=
\frac{1}{\langle x\rangle ^3}\end{eqnarray*}


より、
\begin{eqnarray*}F_f
&=& \frac{\langle f'\rangle }{2\sqrt{2g}}(H-f)^{-3/2},
\...
..._{f'f'}
= \frac{1}{\sqrt{2g}\,\langle f'\rangle ^3}(H-f)^{-1/2}\end{eqnarray*}


となる。よって、(17) は、
\begin{eqnarray*}\lefteqn{\sqrt{2g}(F_f - F_{ff'}f' - F_{f'f'}f'')}
\\ &=&
\fr...
...\langle f'\rangle ^3}(H-f)^{-3/2}(\langle f'\rangle ^2-2f''(H-f))\end{eqnarray*}


となるので、よって、$h=H-f$ が満たすべき 2 階の微分方程式は、本来
\begin{displaymath}
1+(h')^2+2h''h=0\end{displaymath} (51)

であることがわかる。これは、明らかに $h=c_0$ という解を持たない。 すなわち、(20) に含まれる、 $f_2$, $f_3$ のように水平な部分を持つ解は、 元々 $I$ の極値を与えるものにはなっていなかったことがわかる。

一方、(20) の解は、

\begin{displaymath}
1+(h')^2=\frac{c_0}{h}
\end{displaymath}

となるので、両辺微分すると
\begin{displaymath}
2h'h''=-\frac{c_0}{h^2}\,h'
\end{displaymath}

となり、もし「$h'\neq 0$」であれば、
\begin{displaymath}
2h''=-\frac{c_0}{h^2}
\end{displaymath}

となるので、
\begin{displaymath}
2hh'' = -\frac{c_0}{h} = -1-(h')^2
\end{displaymath}

となり、確かに (51) を満たしている。 この「$h'\neq 0$」の部分は $h=c_0$ を排除するが、 元々 $h'=0$ は、(18) の微分が (17) の $f'$ 倍であるところで紛れこんだものである。

なお、(51) は陽に $x$ を含んでいないので、 常微分方程式の階数低下法により、1 階の微分方程式に帰着できるが、 (51) の場合はその手順を踏まなくても、 容易に 1 回積分できる形に変形できる。 (51) より、

\begin{displaymath}
\frac{2h''}{1+(h')^2}+\frac{1}{h}=0
\end{displaymath}

なので、「両辺を $h'$ 倍」すると、
\begin{displaymath}
\frac{2h'h''}{1+(h')^2}+\frac{h'}{h}=0,
\hspace{1zw}
\left(\log(1+(h')^2)+\log h\right)'=0
\end{displaymath}

となるので、これを積分すれば (20) が得られる。 しかし、この途中で「両辺を $h'$ 倍」する作業が入っていて、 そこで $h'=0$ という特異解が追加されてしまうことがわかる。

また、本節では、$f_1$$f_2$, $f_3$ よりも 「最速降下線らしい」ことは見たが、 実際にそれが本当に「最速」であるかの証明にはなっていないし、 3 節の変分法も、そこでも述べたように、 $f_1$ が本当に $I$ の最小値を与えるかどうかまでは示してない。 それについては、次節で考察する。

竹野茂治@新潟工科大学
2016年1月8日