4 オイラー方程式の解

本節では、3 節で得られたオイラー方程式を 満たす関数を求める。

$F$ が陽に $x$ に依存しない場合、 オイラー方程式 (16) は 容易に 1 回積分できることが知られている。 まず、それを紹介する。

(16) は、

\begin{displaymath}
F_f-(F_{ff'}f'+F_{f'f'}f'')=0\end{displaymath} (17)

という $f$ の 2 階の微分方程式に変形できるが、
\begin{eqnarray*}(F-f'F_{f'})'
&=&
F_ff'+F_{f'}f''-f''F_{f'}-f'(F_{ff'}f'+F_{f'f'}f'')
\\ &=&
f'(F_f-F_{ff'}f'-F_{f'f'}f'')\end{eqnarray*}


なので、(17) より $(F-f'F_{f'})'=0$ となり、よって
\begin{displaymath}
F-f'F_{f'} = 定数\end{displaymath} (18)

となる。これは、$f$ の 1 階の微分方程式となる。

さて、最速降下線の問題の場合、

\begin{displaymath}
F-f'F_{f'}
=
\sqrt{\frac{1+(f')^2}{2g(H-f)}}
-
\frac{(f')^2}...
...{1}{\sqrt{2g(H-f)}}
=
\frac{1}{\sqrt{1+(f')^2}\sqrt{2g(H-f)}}
\end{displaymath}

となるので、
\begin{displaymath}
(1+(f')^2)(H-f)=c_0\hspace{1zw}(>0)\end{displaymath} (19)

となり、$H-f(x)=h(x)$ とすると、$h(x)>0$ ($0<x<L$), $h(0)=0$, $h(L)=H$ で、$f'=-h'$ より、
\begin{displaymath}
(1+(h')^2)h=c_0\end{displaymath} (20)

となる。これは、変数分離形の微分方程式であり、
\begin{displaymath}
(h')^2=\frac{c_0}{h}-1 = \frac{c_0-h}{h}
\end{displaymath}

より、
\begin{displaymath}
\sqrt{\frac{h}{c_0-h}}\,h' =\pm 1\end{displaymath} (21)

となり、$f'(+0)<0$ より $h'(+0)>0$ であるから、 少なくとも $x=0$ の付近では、符号は正で、 これを $x=0$ から $x$ まで積分すれば、
\begin{displaymath}
\int_0^h\sqrt{\frac{h}{c_0-h}}\,dh = x\end{displaymath} (22)

が得られる。

(20) より、 $0\leq h\leq c_0$ でなければいけないことになるが、 (22) で $h=c_0s$ とすると、 $0\leq s\leq 1$ で、

\begin{eqnarray*}x
&=&
\int_0^h\sqrt{\frac{h}{c_0-h}}\,dh
=
c_0\int_0^{h/...
...splaystyle \sqrt{\frac{1}{4}
-\left(s-\frac{1}{2}\right)^2}}\,ds\end{eqnarray*}


となる。よって、 $s=(1-\cos\theta)/2$ $(0\leq\theta\leq\pi)$ と置換すると、
\begin{displaymath}
x
=
c_0\int_0^\theta \frac{1}{2}\frac{(1-\cos\theta)\sin\t...
...heta(1-\cos\theta)\,d\theta
=
\frac{c_0}{2}(\theta-\sin\theta)
\end{displaymath}

となる。ここで、この $\theta$ $h/c_0=(1-\cos\theta)/2$ を満たすものなので、 結局 $h$$x$ は、
\begin{displaymath}
h=\frac{c_0}{2}(1-\cos\theta),
\hspace{1zw}
x=\frac{c_0}{2}(\theta-\sin\theta)
\hspace{1zw}(0\leq\theta\leq\pi)\end{displaymath} (23)

によって結びつくことになる。 これは、良く知られているように「サイクロイド曲線」を 全体的に拡大 (または縮小) したグラフの パラメータ表示になっていて、 直径 $c_0$ の車輪で作られるサイクロイドになる。

よって、$f(x)$ は、これを上下逆にした「逆さサイクロイド」 として $f(x)=H-h(x)$ によって作られることになる。 次節で、この「サイクロイド曲線」について詳しく見ることにする。

竹野茂治@新潟工科大学
2016年1月8日