なお、サイクロイドについては、振り子同様の等時性があること、すなわち、
「逆さサイクロイドのどの高さから出発しても、 最下点に達するまでの時間は一定」であることが知られている ([1], [5]) が、 ついでにそれも調べてみる。
まず、逆さサイクロイド の A を 初速度 0 で出発した物体が、 () まで 到達するのにかかる時間
(28)
(28) の積分を、 サイクロイドのパラーメータでの積分に置換する。
(29)
(30)
逆さサイクロイドの最下点までの時間は、(29) より
(31)
さらに、この (31) は、 いわゆる普通の振り子の周期の式に似ている。 長さ の振り子の運動は、 振幅が小さい場合は単振動で近似できて、その周期 は、
なお、この振り子との対応は「サイクロイド振り子」と呼ばれる話と関係する (例えば [4], [1], [5] 参照)。
次は、逆さサイクロイドの途中からすべらせた場合の時間を計算する。
上と同じ の ( ) から 初速 0 ですべらせて、最下点 までにかかる時間 を 計算する。
その時間 は、2 節の議論を繰り返せば、 を に置きかえた
(32)
なお、 から速度 0 ですべらせて、 へ達する時間 は、 今と同様の置換により、
(33)
の場合は、 なので、 (33) は となり、 の計算に対応する。
さて、逆さサイクロイドの から初速 0 ですべらせた場合も、 () から初速 0 すべらせた場合も、同じ時間 () で 最下点に達することを見たが、 その両者を同じ時刻にスタートさせた場合、 それらがどのような動きをするのかを見てみよう。
わかりやすいように、 とし、最下点が と なるようにする。 (33) で、 と考えると、 を初速 0 でスタートした方 (動点 P とする) は、 のときには に いることになる。
同じ時刻に初速 0 で をスタートした方 (動点 Q とする) は、 (29) より、 のときには
(34)
(35)
なお、この P の運動の方は、「最速降下」の解ではないことに注意する。 最速降下の解は、あくまで逆さサイクロイドの から落ちる解 (Q の方) であり、 出発点の傾きが となっているものである。
竹野茂治@新潟工科大学