6 空間遠方に減衰している場合の減衰評価
この節では、問題 1 の空間遠方に減衰している解 の
時間方向の減衰を考える。
この場合は、
が遠方で十分速く 0 に減衰しているという仮定の元で も 0 に減衰することが示される。
しかし、問題 2 の場合とは減衰する速さは異なる。
まずは簡単のため、 (いわゆる Burgers 方程式) とし、
として考えてみる。
この場合は、
なので、
となり、よって の に関する の評価
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(21) |
が得られる。
5 節と同様に , を用いれば
より
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(22) |
となるので、
(21), (22), および定理 2 により、
が得られる。ここから、 の の評価
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(23) |
が得られる。
これと同じことを、一般の で、 () の場合で考えてみよう。
まず、次に注意する。
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(24) |
これらは、
より、
として得られる。
の 乗の積分を で微分すると、(24) より
となるが、今
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(26) |
とすれば、 より は 級で、よって
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(27) |
となる。また、(24) より、
となるので、
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(29) |
となる。結局 (25), (27), (29) より
が得られるから、 の 乗積分は、
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(30) |
と評価される。これは の場合の (21) に対応する。
そして、(24) より、
となるが、 に対して (24) より、
なので、 の場合と同様にして
となり、よって (30) と定理 2 より、
と評価できる。よって、() より
となり、結局 の の評価
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(32) |
が得られる。
また、特に がコンパクト台を持つ関数の場合は、
すべての に対し となるので、
(32) で
とすれば、
となり、 の の評価
が得られる。
定理 4
問題 1 の場合、
() のときは、
(2) の解 は に一様に
次の減衰評価を満たす。
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(33) |
さらに がコンパクト台を持つ場合は
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(34) |
が成り立つ ( は , , による定数)。
初期値がコンパクト台を持つ場合の という評価は、
コンパクトな台を持つ 型波の漸近挙動に対応し、
よって より強い評価を期待することはできない (詳細は、例えば [1] 参照)。
なお、 の評価を得るために (25) を直接 としようとすると、
は でしか成り立たないため、 での例外的な議論が入って難しくなる。
さらに (26) の も ではなくなるし、
(28) も ではそのままは成立しない。
つまり では上のような議論が直接は使えないので、
ここでは
として考えた。
しかし でも似たような考察が行えないわけではない。
それについては付録として 8 節に記すこととする。
また、この節では、 なる 級の関数 に対して、
なる論法を何回か用いた。
これが成り立つためには、もちろん にそれなりの速さでの の遠方での減衰性や微分の可積分性などが必要になる (詳しくは [3] 参照) が、
我々の問題では元々考えている は (1) に対する近似解なので、
必要ならば初期値も の遠方では十分早く減衰するもので近似しておくことができ、
それほど問題とはならない (多分)。
竹野茂治@新潟工科大学
2009年1月25日