(35)
よって、この場合も一見 , は 上から のような評価を持つように見える。 実際この場合の の有界性は、3 節のようにして の極大点で が増加しないこと、 の極小点で が減少しないことを示すことで得られる。
しかし連立方程式の場合は でも膨張波の始点が現われうるという問題がある。 例えば、ある 2-衝撃波に、それより左にある 2-衝撃波が追いつくと、 その衝突点で (弱い) 1-膨張波と 1 つの 2-衝撃波が生成される。 その膨張波はその始点が衝突時刻 にあるので、 その で は になってしまう。 同様に 1-衝撃波同士の衝突により、(弱い) 2-膨張波が現われ、 そこで となってしまう。
単独の方程式の場合は、衝撃波同士の衝突では、 その合成の衝撃波ひとつしか生まれず、このようなことは起きない。 よって膨張波の始点も のみにしかなく、 Oleinik のエントロピー条件 (6) が成り立つのであるが、 連立方程式の場合はそうはいかず、 このような不等式は , に対しては成立し得ない。
では、, はだめだとして、 他に での微分が上からおさえられるような の関数はないだろうか。 の関数は (35) より , の関数と表すこともできるが、 今それを とすると、この関数の に関する微分は
しかし、, では、衝撃波のことを考えると、 , でない限り上から押さえることはできなくなる。 よって、, の関数でも、 の微分を上からおさえられるようなものは 定数以外には存在しないことになる。
つまり、連立方程式の場合は、本稿で説明しているような、 「 での微分を片側からおさえる」ことによる に一様な評価を得る方法は無理だということになる。
竹野茂治@新潟工科大学