5 空間周期的な場合の減衰評価

この節では、問題 2 の空間周期的な解 $u$ の 時間方向の減衰を考える。

まず、

\begin{displaymath}
\bar{u}=\frac{1}{L}\int_0^L u(t,x)dx
\end{displaymath}

$t$ によらない定数であることに注意する。 それは、(2)、 および $u$ (よってもちろん $u_x$ も) の周期性により
\begin{eqnarray*}\lefteqn{\frac{d}{dt}\int_0^L u(t,x)dx
=\int_0^L u_t(t,x)dx
...
...dx}
\ &=&
\left[-f(u)+\varepsilon u_x\right]_{x=0}^{x=L}
=
0\end{eqnarray*}


となるからである。 この $\bar{u}$$u$ の平均値であり、 $u(t,x)$ はこの $\bar{u}$ に向かって減衰する。 ここでは、定理 2 を用いてそれを示す。

$u(t,x)$ は滑らかであり $\bar{u}$ は平均値であるから、 各 $t$ に対して $u(t,x_0)=\bar{u}$ となる $x_0\in [0,L)$ が存在する。 よって、$x\in [0,L]$ に対して、

\begin{displaymath}
\vert u(t,x)-\bar{u}\vert
=\vert u(t,x)-u(t,x_0)\vert
=\l...
...0}^x u_x(t,y)dy\right\vert
\leq \int_0^L\vert u_x(t,x)\vert dx\end{displaymath} (16)

となる。

今、$u_x(t,x)$ の正の部分を $v_{+}(t,x)$、負の部分を $v_{-}(t,x)$ とする。

\begin{displaymath}
v_{+}(t,x)=\max\{0,u_x(t,x)\},\hspace{1zw}
v_{-}(t,x)=\max\{0,-u_x(t,x)\}\end{displaymath} (17)

すると、
\begin{displaymath}
u_x(t,x)=v_{+}(t,x)-v_{-}(t,x),\hspace{1zw}
\vert u_x(t,x)\vert=v_{+}(t,x)+v_{-}(t,x)
\end{displaymath}

であり、$u$ の周期性により
\begin{displaymath}
\int_0^L u_x(t,x)dx=\left[u(t,x)\right]_{x=0}^{x=L}=0
\end{displaymath}

なので、
\begin{displaymath}
\int_0^L v_{+}(t,x)dx = \int_0^L v_{-}(t,x)dx,\hspace{1zw}
\int_0^L \vert u_x(t,x)\vert dx = 2\int_0^L v_{+}(t,x)dx\end{displaymath} (18)

が言える。定理 2 により
\begin{displaymath}
v_{+}(t,x)=\max\{0,u_x(t,x)\}\leq\frac{1}{\delta t}\end{displaymath} (19)

であるので、 (16), (18), (19) より
\begin{displaymath}
\vert u(t,x)-\bar{u}\vert
\leq \int_0^L\vert u_x(t,x)\vert dx
= 2\int_0^L v_{+}(t,x)dx
\leq \frac{2L}{\delta t}
\end{displaymath}

が得られる。


定理 3

問題 2 の場合、 (2) の解 $u$$\varepsilon$ に一様に 次の減衰評価を満たす。

\begin{displaymath}
\vert u(t,x)-\bar{u}\vert\leq \frac{2L}{\delta}t^{-1}
\end{displaymath} (20)


竹野茂治@新潟工科大学
2009年1月25日