8 最後に

本稿では, 1 次元等エントロピー流に対する補償コンパクト性理論による, Tartar 方程式の解法の後半部分に関する DiPerna[3], Ding-Chen-Luo[2] らの方法の改良を, DiPerna[3] の 扱った断熱指数に対して, 5, 6 節で紹介した. (25) を使うこと, および $B_n$ の極限を考える代わりに, $h(a)$ 倍の積分の極限 (37) を考えることがその主な部分である.

この改良によって, DiPerna[3] の結果よりも良いことが示された わけではないが, 証明が多少シンプルになり, 証明に使われるエントロピーに 対する制約が多少緩められ, $\psi_0$, $\widehat{\psi}_0$ は (16) と (32) の条件, および (34) の $I_5$ が 0 でないものを 取ればよいこと, 例えば (41) のような 簡単な関数で構成できることがわかる.

一方この方法を, 一般の $1<\gamma\leq 5/3$ に対する Ding-Chen-Luo[2] の結果に適用すると, 彼らの膨大な計算を簡略化で きる可能性があるだけでなく, $\gamma$ に関する条件を $1<\gamma\leq 2$$1<\gamma<3$ まで広げられる可能性もある. それについても今後紹介したいと思うが, 存在定理はすでに一般の $\gamma>1$ に 対して示されているので, その改良により特に新しい結果が得られるわけではない. しかし, さらにより一般の $P(\rho)$ に結果を拡張する場合には このような簡略化の考察が解決につながる可能性はあるし, この分野の学習を多少容易にすることにはなるので, 意味のないことではないと考える.

竹野茂治@新潟工科大学
2023-02-18