7 Young 測度の決定

前節の (39) から, $\nu=\delta_{(w_1,z_1)}$ であることを示す.

命題 2 より, $(w-z)^{2m}\{h(w)+h(z)\}$ は 0 以上で, $\Sigma(w_1,z_1)$ 上で 0 になるのは $w=z$ か, または $w>z$ $(w,z)=(w_1,z_1)$ の場合のみである.

よって, (39) より, $\nu$ の台はそこに含まれる ことになり, 台 が $\{w=z\}$ に含まれる非負の測度 $\mu$ により

$\displaystyle
\nu = c_0\delta_{(w_1,z_1)} + \mu$ (42)
の形に書けるが, $\nu$ の台は点 $(w_1,z_1)$ を含むから $c_0>0$ である.

一方, Tartar 方程式より

$\displaystyle \langle B_{0,1}\rangle
=\langle\eta^{(0)}\rangle \langle\sigma^{(1)}\rangle
-\langle\eta^{(1)}\rangle \langle\sigma^{(0)}\rangle
$
が成り立つが, この $\nu$ の被積分関数はいずれも $w=z$ で 0 で, よって (42) より,
$\displaystyle c_0B_{0,1}(w_1,z_1)
=c_0^2\left.(\eta^{(0)}\sigma^{(1)}
-\eta^{(1)}\sigma^{(0)})\right\vert _{(w,z)=(w_1,z_1)}
=c_0^2B_{0,1}(w_1,z_1)
$
となり, $B_{0,1}(w_1,z_1)=\theta(\eta^{(0)})^2(w_1,z_1)>0$ より $c_0=c_0^2$ となるので $c_0=1$ となる. $\nu$ $\delta_{(w_1,z_1)}$ も全測度 1 なので, よって $\mu=0$ となり, これで $\nu=\delta_{(w_1,z_1)}$ が得られる.

なお, 本節の議論は標準的な手法[9] であり, 改良点は特にない.

竹野茂治@新潟工科大学
2023-02-18