という組は, の範囲では という組に 1 対 1 に対応し,
と表される. よって滑らかで な解に対しては, で考えることと で考えることは同等となる. 弱エントロピー対 や Young 測度 も, の関数, の測度と考える代わりに の関数, の測度, と考えることもできる. で考えると方程式 (3) も対角化され, 色々見通しが良くなり, 本稿でもほぼ で考察する.補償コンパクト性理論で用いられる (3) の 近似解は, 一様有界性を持つ人工粘性近似や Lax-Friedrichs 型の差分近似 が用いられる. それらは, ある不変領域を持つことが知られている. まず, 平面の三角領域 を以下のように定める.
なお, は に対応し, これは常に満たす必要がある. この は 平面, 平面では 図 1 のようになる. なお, これは 平面のものと 平面のものを同一視し, 同じ で表すことにする. また, 厳密に言えば弱解は () の値を取り得て, その部分では は未定義になってしまうのであるが, 弱解は正確には の対ではなく, の対で考えるので, も問題なく弱解として含み得る. 本稿では, 弱解と に関する議論は詳しくは行わないが, 参考文献[9] を参照のこと. 三角領域 に関して次が成り立つことが知られている.初期値 がすべての に対してある 三角領域 に含まれていれば, そこから構成する (3) の 人工粘性近似解, あるいは Lax-Friedrichs 型差分近似解 は, に対し常に に含まれる.これにより, この近似解の部分列 , その汎弱極限 , およびそれに対する Young 測度 が 取れ, は 以外では 0 となる. そして, 補償コンパクト性理論により, この Young 測度 と, 任意の弱エントロピー対 , に対して, 冒頭の Tartar 方程式 (1) が, ほとんどいたるところの () に対して 成り立つことが示される. ここまでは標準的な流れで, この部分に変更はない. 詳しくは参考文献[9] 等を参照のこと.
あとは, Tartar 方程式を解くのに必要な弱エンロピー対を, 以下のいわゆる Darboux の公式から具体的に生成して, それを使って考察する.
のとき, 実数上の任意の連続関数 に対して,
は, (5) を満たす弱エントロピー 対 () となる. ここで, は
で, は
弱エントロピー対は, この Darboux の公式 (11) により, の自由度だけ存在し, ここから多くの種類のエントロピー対を生成できる. この Darboux の公式の形のエントロピー対を, 本稿では「Darboux エントロピー対」と呼ぶ. なお, 以後, とする. Darboux エントロピー対に対しては
となる.本稿の議論で必要なエントロピー対を以下に紹介する.
竹野茂治@新潟工科大学