6.6 反省

前節までで、front の速度の変更の考察を行ったが、 実はこの変更の仕方は [1] には沿っていない部分がある。 前に述べたように、(101) の条件も 沿ってはいないのであるが、 その他にも実は 6.4 節、 6.5 節の方法は、 Remark 7.2 (p142-143) の (FT4) の要請を満たしていない。 具体的には、我々の方法は速度を常に「上げる」方向に変更するので、 膨張 front に対してはその速度が $\lambda_{k_\alpha}(u^+)$ を 越えることになってしまって (FT4) を満たさない。 場合分けをして考えれば、膨張 front の速度を下げる方向に変更することも 可能かもしれないが、良くはわからない。 とりあえず前の方法は、(FT4) は満たさないが、 弱解の存在を示すのにはそれで十分である。

なお、(FT4) の後半、すなわち $i^\ast$-特性方向のみは 速度を変えないようにできるというのは少し疑わしいと感じるが、 もしかしたら私が読み間違えているのかもしれない。

また、本節で考察してきた速度の変更は、 あくまで [1] を読み解くという立場で考えたために必要であったが、 例えば Holden-Risebro 流 ([5]) の波面追跡法では それは必要とせず、!(T1) のような 3 つ以上の front の同時衝突も許容し、 そのような形での評価を行っているので、 front 速度の変更は不要となる。

そのように評価を変更すれば本節の考察も不要となるし、 その方が簡単にできるかもしれないが、 本稿は一応 [1] の解説という形を取っているので、 少し面倒だが速度の変更についても検討した。 しかし上に述べたように、 本節の考察が正しく [1] に沿っているかはだいぶ怪しい。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-06-03