4.4 CASE 2

次に、p139 の CASE 2 の (7.64) を考える。 $\sigma_\alpha(t)$$t=\tau$ で他の front $\sigma_\beta$ と衝突するとし、 このとき、
  $\displaystyle
\Delta V_\alpha(\tau)=-\vert\sigma_\beta\vert,
\hspace{1zw}\Del...
...igma_\alpha(\tau)
\leq M_1\vert\sigma_\alpha(\tau-)\vert\vert\sigma_\beta\vert$ (32)
を示す。 まず、$t=\tau$ の前後で $\sigma_\alpha(t)$ の符号は変わらずに 正のままなので、 $\sigma_\beta$ 以外の項は $\Delta V_\alpha(\tau)$ には現れず、 よって (32) の 1 つ目は正しい。 (32) の 2 つ目は、 (7), (11), (23) より、

\begin{eqnarray*}\Delta Q(\tau)
&\leq &
\vert\sigma_\alpha(\tau-)\sigma_\beta\...
... &\leq&
- \frac{1}{2}\vert\sigma_\alpha(\tau-)\sigma_\beta\vert\end{eqnarray*}

となって成り立つことがわかる。

(32) の 3 つ目は、[A-1] の場合は Lemma 7.2 (i) より、

$\displaystyle \Delta\sigma_\alpha(\tau)
= \sigma_\alpha(\tau+)-\sigma_\alpha(\t...
...)-\sigma_\alpha(\tau-)\vert
\leq M_1\vert\sigma_\alpha(\tau-)\sigma_\beta\vert
$

となって成り立つ。

[A-2] の場合は $\sigma_\alpha(t)>0$ より $\sigma_\beta<0$ で、 よって Lemma 7.2 (ii) より、

\begin{eqnarray*}\Delta\sigma_\alpha(\tau)
&=&
\sigma_\alpha(\tau+)-\sigma_\al...
...ta\vert
\ &\leq&
M_1\vert\sigma_\alpha(\tau-)\sigma_\beta\vert\end{eqnarray*}

となる。

[S-1], [S-3] の場合は $\Delta\sigma_\alpha(\tau)=0$ で、 [S-2] の場合は $\sigma_\beta<0$ で、 よって $\Delta\sigma_\alpha(\tau)=\sigma_\beta<0$ となるから、 よってすべての場合で (32) の 3 つ目が成り立つことがわかる。

これで、(32) がすべて成り立つことになる。

今、$t_0\leq t<t_1$ に対して

  $\displaystyle
\eta(t)=\sigma_\alpha(t)e^{M_1(V_\alpha(t)+C_0Q(t))}
\hspace{1zw}(>0)$ (33)
と定義すると、衝突点以外では $\eta(t)$ は定数で、 衝突点 $t=\tau$ で CASE 1 なら (26) より、
  $\displaystyle
\frac{\eta(\tau+)}{\eta(\tau-)}
= \frac{\sigma_\alpha(\tau+)}{\sigma_\alpha(\tau-)}
e^{M_1(\Delta V_\alpha(\tau)+C_0\Delta Q(\tau))}
\leq 1$ (34)
となるし、CASE 2 なら (32)、 および $\sigma_\alpha(\tau-)>0$ より、
  $\displaystyle
\frac{\eta(\tau+)}{\eta(\tau-)}
= \left(1+\frac{\Delta\sigma_\...
...au)}
\leq (1+M_1\vert\sigma_\beta\vert) e^{-M_1\vert\sigma_\beta\vert}
\leq 1$ (35)
となるので、$\eta(t)$ は非増加であることがわかり、よって (21), (23), (24) より、
  $\displaystyle
\eta(t)
\leq \eta(t_0+)
= \sigma_\alpha(t_0)e^{M_1(V_\alpha(t_...
...M_1\Upsilon(t_0)}
\leq \delta e^{M_1\Upsilon(0+)}
\leq \delta e^{M_1\delta_2}$ (36)
となり、よって、
  $\displaystyle
\sigma_\alpha(t)\leq \eta(t)\leq \delta e^{M_1\delta_2}$ (37)
が得られる。

この (37) は [1] の (7.61) (p138) に 対応するが、これは、定義 7.1 (p125) の 3. (7.8) の、膨張 front の サイズ $\sigma_\alpha$

$\displaystyle \sigma_\alpha\in]0,\varepsilon]
$

であることを保証するものになる。 $\delta$ を小さく変更すれば、 もちろんそれに伴い近似解の構造もだいぶ変わってしまうが、 それとは無関係に (37) は常に成立するので、 よって、$\varepsilon>0$ に対して、$\delta$
  $\displaystyle
0<\delta e^{M_1\delta_2}\leq \varepsilon$ (38)
となるようにとれば確かに (7.8) が満たされる。 それは、定理 7.2 (p127) の一部でもあるが、 それについてはまた後 (5.9 節) で説明する。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-06-03