11 最後に

本稿では、地中を通る最速降下線を考え、 [1] と同様に変分法により最速降下線 (14) (または (20)) を得ることができた。 ただし、オイラー方程式 (8) の解は一意的ではなく、 途中に円運動を挟む解 (31) や 反対に回る解 (32)、 半径方向の移動を挟む解 (10 節) なども示した上で その到達時間を比較し、 やはり (14) が最速であることを確認した。

最初にも述べたように、(14) は 厳密にはサイクロイドではないし、 具体的な名前がついている曲線なのかは 単純な場合の (27), (28) に限ってもわからないが、 それほど複雑な計算ではないので、 既に知られている結果ではあるだろう。

最近、中東の方で「ハイパーループ」という、地中にトンネルを掘り、 その中を減圧することで空気抵抗を減らして飛行機並 (より速い ?) の 速度を実現する輸送手段が計画されているという話を聞いた。 空気抵抗が 0 でなければ完全に今回の地中最速線が最速にはならないが、 ある程度はこういう話を参考にして、この手の形状のトンネル、 すなわち出発時と到着時は地面に垂直になるのだろうかと少し興味はある。 燃料ロスを小さくするにはそれが最適だと思うが、 人が乗るのだとすると そういう運行はほぼ垂直落下型のジェットコースターになり、 だれでも乗れるというものではなくなってしまうような気がする。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年2月24日