6 グラフ

次は、解 (14) によるトンネルのグラフを紹介する。 もちろん、一般の $g(r)$ ではグラフは書けないので、 均質な地球の場合のグラフを示す。これは、
\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{ll}
x & = f(\theta)\cos\theta\\
y &...
...n\theta
\end{array}\right. \hspace{1zw}(0\leq\theta\leq\phi_0)\end{displaymath} (19)

で、$f(\theta )$ は (14), (15) より
\begin{displaymath}
f(\theta) =
\left\{\begin{array}{ll}
H^{-1}(\theta) & (0...
...-\theta) & (\phi_0/2\leq \theta\leq \phi_0)
\end{array}\right.\end{displaymath} (20)

であり、$H=H(Y)$ は、 地球が均質な場合は (10) より
\begin{displaymath}
H(Y) = \arctan s - \frac{1}{k_2}\arctan k_2 s,
\hspace{1zw...
...rt{\frac{R^2-Y^2}{k_2^2Y^2-R^2}}
\hspace{1zw}(R/k_2 < Y < R)
\end{displaymath}

であった。 ここで、$k_2$ は (11), (15) より、
\begin{displaymath}
\frac{\pi}{2}\left(1-\frac{1}{k_2}\right) = \frac{\phi_0}{2},
\hspace{1zw}\frac{1}{k_2} = 1-\frac{\phi_0}{\pi}
\end{displaymath}

となるので、
\begin{displaymath}
k_2 = \frac{\pi}{\pi-\phi_0}\end{displaymath} (21)

である。これで、$\phi_0$ ($0<\phi_0<\pi$) と $R$ ですべて 決定できることになる。 ただし、(20) に $H$ の逆関数が入っているため グラフ化はしにくいようにみえるかもしれないが、 それはパラメータを $\theta$ から $Y$ に変えれば済む。

例えば、 $0\leq\theta\leq\phi_2/2$ では $Y=f(\theta)$ とすると、 (20) より $\theta=H(f(\theta)) =H(Y)$ なので、 (19) を

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{ll}
x &= Y\cos H(Y),\\
y &= Y\sin H(Y)
\end{array}\right. \hspace{1zw}(R/k_2\leq Y\leq R)
\end{displaymath}

とすればよい ( $H^{-1}(\phi_0/2) = r_1 = R/k_2$)。 さらに、$\hat{Y} = Y/R$ とすると $1/k_2\leq \hat{Y}\leq 1$ で、
\begin{displaymath}
s = \sqrt{\frac{R^2-R^2\hat{Y}^2}{k_2^2R^2\hat{Y}^2-R^2}}
= \sqrt{\frac{1-\hat{Y}^2}{k_2^2\hat{Y}^2-1}}\end{displaymath} (22)

となり、$H$$R$ によらない式になる (それを $H=\hat{H}(\hat{Y})$ と書く)。 これによりグラフは
\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{ll}
\displaystyle \frac{x}{R} &= \hat...
...t{Y})
\end{array}\right. \hspace{1zw}(1/k_2\leq \hat{Y}\leq 1)\end{displaymath} (23)

となり、$R=1$ の場合のグラフ全体を そのまま $R$ 倍したものになっていることがわかる。 よってグラフとしては $R=1$ のもののみ考えればよいことになる。

これで、例えば gnuplot1 の媒介変数モードを使えば、このグラフが書けるようになるのだが、 複数の $\phi_0$ に対するグラフを一緒に書く場合には、 パラメータの範囲が一定でないのは問題があるし、 関数に特異性が含まれている ($\hat{Y}=1/k_2$ で (22) の 分母が 0 になる) とそこがうまくつながらない場合があるので、 それらを修正する。

まずパラメータの範囲を固定するために、 $1/k_2\leq \hat{Y}\leq 1$ を、

\begin{displaymath}
0\leq 1-\hat{Y}\leq 1-\frac{1}{k_2} = 1-\frac{\pi-\phi_0}{\pi}
= \frac{\phi_0}{\pi}
\end{displaymath}

より、 $\tau_0 = \phi_0/\pi$ として、新たなパラメータ $\xi$ $\xi = (1-\hat{Y})/\tau_0$ とれば $\xi$ の範囲は $0\leq\xi\leq 1$ に 固定される。 そして (22), (23) に $\hat{Y}=1-\tau_0\xi$ を代入すれば $\xi$ の式が得られる。

次は特異性の解消であるが、まず、

\begin{displaymath}
\arctan s = \arctan \sqrt{\frac{1-\hat{Y}^2}{k_2^2\hat{Y}^2-1}} = \mu
\hspace{1zw}(-\pi/2<\mu<\pi/2)
\end{displaymath}

とすると、
\begin{eqnarray*}&&
\tan\mu = \sqrt{\frac{1-\hat{Y}^2}{k_2^2\hat{Y}^2-1}},
\hs...
...-1}{(k_2^2-1)\hat{Y}^2}
= \frac{1-\hat{Y}^2}{(k_2^2-1)\hat{Y}^2}\end{eqnarray*}


となり、この最後の式の分母は $\hat{Y}\geq 1/k_2$ より 0 にはならない。 よって、$\mu$ を特異性のない式
\begin{displaymath}
\mu = \arcsin\sqrt{\frac{1-\hat{Y}^2}{(k_2^2-1)\hat{Y}^2}}\end{displaymath} (24)

に書き直すことができる。同様に、
\begin{displaymath}
\arctan k_2s = \arctan k_2\sqrt{\frac{1-\hat{Y}^2}{k_2^2\hat{Y}^2-1}} = \eta
\hspace{1zw}(-\pi/2<\eta<\pi/2)
\end{displaymath}

とすると、
\begin{eqnarray*}&&
\tan\eta = \sqrt{\frac{k_2^2-k_2^2\hat{Y}^2}{k_2^2\hat{Y}^2...
...{k_2^2\hat{Y}^2-1}{k_2^2-1}
= \frac{k_2^2(1-\hat{Y}^2)}{k_2^2-1}\end{eqnarray*}


となり、こちらも特異性のない
\begin{displaymath}
\eta = \arcsin\sqrt{\frac{k_2^2(1-\hat{Y}^2)}{k_2^2-1}}\end{displaymath} (25)

と書き直せる。

この (24), (25) を、 さらに $\tau_0$, $\xi$ で書き直す。 $1-1/k_2=\tau_0$ より $k_2 = 1/(1-\tau_0)$、 および $\hat{Y}=1-\tau_0\xi$ より、

\begin{eqnarray*}\frac{1-\hat{Y}^2}{(k_2^2-1)\hat{Y}^2}
&=&
\frac{(1-\tau_0)^2...
...\xi)^2}{1-(1-\tau_0)^2}
 =\
\frac{\xi(2-\tau_0\xi)}{2-\tau_0}\end{eqnarray*}


となる。よって、$H$$\xi$, $\tau_0$ で書き表すと、
\begin{displaymath}
H = \bar{H}(\xi,\tau_0)
= \arcsin\frac{1-\tau_0}{1-\tau_0...
...0}}
-(1-\tau_0)\arcsin\sqrt{\frac{\xi(2-\tau_0\xi)}{2-\tau_0}}\end{displaymath} (26)

となる ( $0\leq\xi\leq 1$)。

グラフのもう半分の $\phi_0/2\leq\theta\leq\phi_0$ の方は、 (20) より

\begin{displaymath}
\theta = \phi_0 - H(f(\theta))
= \tau_0\pi - \hat{H}(\hat{Y})
= \tau_0\pi - \bar{H}(\xi,\tau_0)
\end{displaymath}

とすればよいので、結局 $0\leq\theta\leq\phi_0/2$ の方は、 (26) の $\bar{H}(\xi,\tau_0)$ を使って
\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{ll}
\displaystyle \frac{x}{R} &= (1-\...
...H}(\xi,\tau_0)
\end{array}\right. \hspace{1zw}(0\leq\xi\leq 1)\end{displaymath} (27)

と表され、 $\phi_0/2\leq\theta\leq\phi_0$ の方は、
\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{ll}
\displaystyle \frac{x}{R} &= (1-\...
...}(\xi,\tau_0))
\end{array}\right. \hspace{1zw}(0\leq\xi\leq 1)\end{displaymath} (28)

と表されることになる。$0<\tau_0<1$ よりこれらには特異性はなく、 パラメータの範囲も固定されるので、グラフ化は難しくない。 実際、 $\tau_0=0.1, 0.2, \ldots, 1.0$、すなわち $\phi_0 = 0.1\pi, 0.2\pi, \ldots, \pi$ に対して gnuplot で 書いたグラフが図 5 である。
図 5: 均質な地球の場合の最速降下曲線
\includegraphics[width=14cm]{fig-cyc3-graph.eps}

なお、最後の $\phi_0=\pi$ に対して注意をしておく。 この場合、$\tau_0=1$ だから $\bar{H}$ は 0 になり、 よって (27) では $x = 1-\xi$, $y=0$、 (28) では $x = -(1-\xi)$, $y=0$ となる。 それが、円の直径になっているわけである。

実際に、一般の場合でも $r_1\rightarrow +0$ ( $\phi_0\rightarrow\pi-0$) の 場合に $H(y)$ がこのような直径を表すものに収束することを示しておく。

$r_1<y<R$ である $y$ を固定し、$r_1$ $r_1\rightarrow +0$ とする。このとき、(9) の被積分関数の分母は $f$ に 関して単調なので、

\begin{displaymath}
0\leq H(y)\leq \frac{\sqrt{G(R)}}{\sqrt{k_1^2y^2-G_1(y)} y}\int_y^R df
= \frac{(R-y)}{y}\sqrt{\frac{G(R)}{k_1^2y^2-G_1(y)}}
\end{displaymath}

でおさえられ、よって $r_1\rightarrow +0$ のとき $k_1=G_1(r_1)/r_1^2\rightarrow\infty$ より
\begin{displaymath}
\lim_{r_1\rightarrow +0}{H(y)}=0
\end{displaymath}

となることがわかる。すなわち、図 3$H$ のグラフは、 $r_1$ を小さくすると横軸と鉛直線 $y=r_1$ に張り付いてきて、その極限は $0<y\leq R$ では 0、$y=0$ では $H(+0)=\pi/2$ (命題 1) に 近づいていくことになる。 その結果、解は 0 と $\pi$ 方向以外の $\theta$ に対しては $f(\theta)=0$ で ある直径に近づいていくことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年2月24日