7.2 エントロピー条件

最後に、エントロピー条件 (2.3) を考える。 7.1 節と同様にして、
\begin{displaymath}
\eta(U^\Delta)_t+ q(U^\Delta)_x=0\hspace{1zw}\mbox{a.e. in $(0,\infty)\times R$}
\end{displaymath}

であるので、 $\phi\in C^1_0([0,\infty)\times R)$, $\phi\geq 0$ に対し、
\begin{eqnarray*}0
&=&
\int\!\!\!\int _{t>0}\{\eta(U^\Delta)_t+q(U^\Delta)_x\}...
...
-\int\!\!\!\int _{t>0}(\phi_t\eta^\Delta+\phi_x q^\Delta) dtdx \end{eqnarray*}


ここで、[竹野] にあるように、不連続波に対する $[q^\Delta]-\sigma'[\eta^\Delta]$ の値は、 であるので、
\begin{eqnarray*}\int\!\!\!\int _{t>0}(\phi_t\eta^\Delta+\phi_x q^\Delta) dtdx
...
...,x)\eta(U^\Delta(+0,x))dx
&\geq &
\hat{E}(\Delta x,\theta,\phi)\end{eqnarray*}


が言えることになる。ここで、
\begin{displaymath}
\hat{E}(\Delta x,\theta,\phi)
=\sum_{n=1}^\infty\int_R\phi(t_n,x)
\left[\eta^\Delta\right]^{t_n-0}_{t_n+0}dx
\end{displaymath}

である。

今、$\Delta x$ $\Delta\bar{x}_n(n)$ と取れば、 7.1 節と同様にして、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\int\!\!\!\int _{t>0}(\phi_t\eta^\Delta+\phi_x q^\Delt...
...(\phi_t\eta+\phi_x q) dtdx
+\int_R\phi(0,x)\eta(U_0(x))dx
+o(1)\end{eqnarray*}


であることが言えるから、よって後は $\hat{E}(\Delta x,\theta,\phi)$ が 0 になるようにすればよい。 しかし、これに対しては、 $E(\Delta x,\theta,\phi)$ と全く同じ議論を繰り返すことにより、 $\{\Delta\tilde{x}_n\}_n$ の部分列 $\{\Delta\hat{x}_n\}_n$ と、$\nu$ に関する 0 集合 $N'\supset N$ が取れて、 $\theta\in X\setminus N'$ に対し、 任意の $\phi\in C_0^1([0,\infty)\times R)$ に対して
\begin{displaymath}
\hat{E}(\Delta\hat{x}_n,\theta,\phi)\rightarrow 0
\end{displaymath}

となることを言うことができる。

よって、その $\{\Delta\hat{x}_n\}_n$ $\theta\in X\setminus N'$ に対する極限は、 弱解でかつエントロピー条件

\begin{displaymath}
\int\!\!\!\int _{t>0}(\phi_t\eta+\phi_x q) dtdx
+\int_R\phi(0,x)\eta(U_0(x))dx
\geq 0\end{displaymath} (7.116)

を満たすことが言える ($\phi\geq 0$)。 なお、この (7.19) は、初期値の項がついているので、 その分だけ (2.3) よりも強い条件になっている が、もちろん (2.3) も成立する。


定理 7.2

定理 5.1 の仮定の下で構成した Glimm 差分近似解 $U^\Delta$ に対し、 0 に収束する列 $\{\Delta\hat{x}_n\}_n$$\nu$ に関する 0 集合 $N'(\subset X)$ が存在して、 $\theta\in X\setminus N'$ に対する $U^{\hat{\Delta}_n}$ の極限は、エントロピー条件 (7.19) を満たす弱解であり、 (6.9), (6.10), (6.11) を満たす。


竹野茂治@新潟工科大学
2009年1月18日