8 最後に

双曲型保存則方程式 (1.1) の 初期値問題の弱解の存在証明法としては、 現在は Glimm の差分近似以外にも、 波面追跡法 (front tracking method)、補完測度法 (compensated compactness) などの方法が知られていて、 特に最近はこれらの方法による研究が盛んに行われている。

波面追跡法は、相互作用評価も Glimm 差分ほど 詳しいものは必要とはせず、 解の適切性を保証する Bressan 理論にもつながる話であるし、 また補完測度法は、Glimm の差分が、特別な場合を除いては 全変動が十分小さい初期値にしか適用できないのに対し、 ある種の方程式に対してはより一般的な初期値に対しても 弱解の存在を示すことができる、というメリットがある。

しかし、Glimm 差分の解の性質との密接な関連や、 初期値に対する制限を除けば適用できる方程式の範囲が広いこと (補完測度法は適用できる方程式が制限される)、 そして Glimm 差分に関する色々な拡張、改良が行われてきたことからすれば、 現在でも保存則方程式の研究者にとっては必須の道具であり、 重要な方法であることには変わりがない。

本稿が、それを学ぶための一助となれば幸いである。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年1月18日