7 直接証明: 停留点

次は、いよいよ定理 2 を、 Riemann 問題の解を経由せずに、直接計算で示す方法を紹介する。

まず、定理 2 の (22) は $w$ の不等式の方だけ考えれば良いことを先に示す。

$U={}^t(\rho, \rho u)$ に対して、 速度の符号を反対にしたものを $U^\ast = {}^t(\rho, -\rho u)$ のように 書くことにする。このとき、容易に

  $\displaystyle
w(U^\ast) = -z(U),
\hspace{1zw}
z(U^\ast) = -w(U),
\hspace{1zw}
LF(U_1^\ast, U_2^\ast) = LF(U_2,U_1)^\ast$ (26)
となることがわかる。 そして、 $U_L,U_R\in\Sigma(w_0,z_0)$ のときは、 $w(U_L^\ast)=-z(U_L)\leq -z_0=w(U_0^\ast)$ 等より $U_L^\ast, U_R^\ast\in\Sigma(w_0^\ast,z_0^\ast)$ であり、 (17) より $\Lambda(w_0,z_0)=\Lambda(w_0^\ast,z_0^\ast)$ も いえるので、 よって、もし定理 2 の (22) の $w$ に 関する不等式が成り立てば、 それを $\Sigma(w_0^\ast, z_0^\ast)\ni U_L^\ast, U_R^\ast$ に 適用すると

\begin{displaymath}
w(LF(U_R^\ast, U_L^\ast))\leq w_0^\ast
\end{displaymath}

が得られるが、これは、(26) より

\begin{displaymath}
-z(LF(U_L,U_R))\leq -z_0
\end{displaymath}

を意味するので、(22) の $z$ に関する不等式が 得られる。よって以後 $w$ の方のみ考える。

$w(LF(U_L,U_R))$ は、$U_L$, $U_R$ が領域 $\Sigma (w_0,z_0)$ を 動く 4 変数関数と見ることができるが、 まずは一方を固定して 2 変数関数として考える。

以後、 $\bar{U}=LF(U_L,U_R)$ とし、 $U_L$, $U_R$, $\bar{U}$$\lambda_j$$w$ 等に代入したものを、 それぞれ $\lambda_j^L$, $\lambda_j^R$, $\bar{\lambda}_j$, $w_L$, $w_R$, $\bar{w}$ のようにも書くこととする。

まず、 $U_L\in\Sigma(w_0,z_0)$ を固定し、$w(\bar{U})$$U_R$ に 関する 2 変数関数とみて、その停留点を求めてみる。

\begin{displaymath}
\nabla_{U_R}w(\bar{U})
=
\nabla_{\bar{U}}w(\bar{U})\nabla_{U_R}\bar{U}
\end{displaymath}

だが、(9) より

\begin{eqnarray*}\nabla_U w(U)
&=&
\left(\frac{\partial w}{\partial \rho}, \f...
...R\lambda_2^R & \mu - \lambda_1^R-\lambda_2^R
\end{array} \right]\end{eqnarray*}

となるので、

\begin{eqnarray*}\nabla_{U_R}w(\bar{U})
&=&
\frac{1}{2\mu\bar{\rho}}(-\bar{\la...
...da_1^R\lambda_2^R,
\mu+\bar{\lambda}_1 -\lambda_1^R-\lambda_2^R)\end{eqnarray*}

となる。よって、$w(\bar{U})$$U_R$ に関する停留点があるとすると、 そこで

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{l}
\mu\bar{\lambda}_1 = \lambda_1^R\la...
...\mu+\bar{\lambda}_1 = \lambda_1^R+\lambda_2^R\end{array}\right.\end{displaymath}

となるが、これは $\mu$, $\bar{\lambda}_1$ が 2 次方程式 $t^2-(\lambda_1^R+\lambda_2^R)t+\lambda_1^R\lambda_2^R=0$ の解 であることを意味し、よって

\begin{displaymath}
(\mu,\bar{\lambda}_1) = (\lambda_1^R,\lambda_2^R),
(\lambda_2^R,\lambda_1^R)
\end{displaymath}

のいずれかとなるが、しかし CFL 条件より $\mu>\vert\lambda_j(U_R)\vert$ なので、これらはいずれも成立しない。 つまり、$U_R$ に関する停留点は存在しない。

よって、$U_R$ を動かした場合、$w(\bar{U})$ はその最大値を 領域 $\Sigma (w_0,z_0)$ の内部で取ることはない。

同様に $U_R\in\Sigma(w_0,z_0)$ を固定して $U_L$ に関する停留点を考えると、

\begin{eqnarray*}\nabla_{U_L}w(\bar{U})
&=&
\nabla_{\bar{U}}w(\bar{U})\nabla_...
...da_1^L\lambda_2^L,
\mu-\bar{\lambda}_1 +\lambda_1^L+\lambda_2^L)\end{eqnarray*}

となるので、停留点では

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{l}
-\mu\bar{\lambda}_1 = \lambda_1^L\l...
...\mu+\bar{\lambda}_1 = \lambda_1^L+\lambda_2^L\end{array}\right.\end{displaymath}

となるが、これは

\begin{displaymath}
(\mu,\bar{\lambda}_1) = (-\lambda_1^L,\lambda_2^L),
(-\lambda_2^L,\lambda_1^L)
\end{displaymath}

のいずれかとなって、やはり CFL 条件に反するので、 $U_L$ を動かした場合の停留点も存在しない。

よって、$w(\bar{U})$$U_L$ に関する最大値を領域 $\Sigma (w_0,z_0)$ の 内部では取らない。

これらにより、4 変数関数 $w(\bar{U})$ の最大値は、 $U_L$, $U_R$ の両方が領域 $\Sigma (w_0,z_0)$ の境界上にあるときに 取ることがわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-02-28