2 基本事項

方程式 (1) をベクトル形で書くと、
  $\displaystyle
\left[\begin{array}{c}\rho\\ m\end{array}\right]_t + \left[\begi...
...rho+P(\rho)\end{array}\right]_x = \left[\begin{array}{c}0\\ 0\end{array}\right]$ (2)
の形となる。ここで、$m=\rho u$ (気体の運動量) とした。

一般に、次の形の方程式を、1 次元保存則方程式 と呼ぶ。

  $\displaystyle
U_t + F(U)_x = 0\\ $ (3)
ここで、 $U=U(t,x)={}^t(u_1(t,x),\ldots,u_N(t,x))$$(t,x)$ 2 変数の $N$ 次元ベクトル値の未知関数、 $F(U)={}^t(f_1(U),\ldots, f_N(U))$ $U={}^t(u_1,\ldots,u_N)$ に関して滑らかな $N$ 次元ベクトル関数で、 $F(U)$ 自体 ($F(U(t,x))$ ではなく) は既知とする。 例えば、(2) では、 $U(t,x)={}^t(\rho(t,x),m(t,x))$, $F(U) = {}^t(m, m^2/\rho + P(\rho))$ である。

この $F(U)$$U$ に関する勾配 ($N\times N$ 行列)

\begin{displaymath}
\nabla_U F(U) = \left[
\begin{array}{ccc}
\displaystyle \...
...laystyle \frac{\partial f_N}{\partial u_N}
\end{array}\right]
\end{displaymath}

が異なる実固有値 $\lambda_1(U)<\lambda_2(U)<\cdots<\lambda_N(U)$ を持つ場合、保存則方程式 (3) は 双曲型 と呼ばれる。

本稿では、(1) の圧力 $P=P(\rho)$ は 以下の条件 (4), (5) を 満たすとする。

  $\displaystyle
P(+0) = 0,
\hspace{1zw}P'(\rho)> 0 \ (\rho >0),
\hspace{1zw}\rho P''(\rho) + 2P'(\rho) \geq 0\ (\rho>0)$ (4)
かつ、ある正数 $\varepsilon>0$ に対して
  $\displaystyle
\int_0^\varepsilon\frac{\sqrt{P'(\rho)}}{\rho}\,d\rho < \infty.$ (5)
なお、(4), (5) により、 自然に $C(+0)=0$ となる (A 節参照)。 ポリトロピック、すなわち $P=A\rho^\gamma$ の場合は、 (4) の条件は $\gamma>0$ に対応し、 (5) の条件は $\gamma>1$ (等エントロピー的) に対応する。 今後、

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
\displaystyle C(\rho) = \sqrt{P'(\rho)},
...
... G(\rho)+C(\rho) \hspace{0.5zw}(=\{\rho G(\rho)\}')
\end{array}\end{displaymath}

と書くことにする。なお、(4) の最後の条件は、
$\displaystyle H'(\rho)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{C(\rho)}{\rho} + \frac{P''}{2\sqrt{P'}}
\ = \
\frac{2P'+\rho P''}{2\rho C}
\geq 0,$ (6)
$\displaystyle (\rho C(\rho))'$ $\textstyle =$ $\displaystyle C(\rho) + \frac{\rho P''}{2\sqrt{P'}}
=
\frac{2P'+\rho P''}{2C}
\geq 0$ (7)

などに対応する。


\begin{displaymath}
w(U) = u+G(\rho),\hspace{1zw}z(U) = u-G(\rho)
\end{displaymath}

Riemann 不変量 と呼ぶ。

(2) に関する $\nabla_UF(U)$

  $\displaystyle
\nabla_U F(U)
=
\left[
\begin{array}{cc}
0 & 1\\
-m^2/\...
...t]
=
\left[
\begin{array}{cc}
0 & 1\\
-u^2+C^2 & 2u
\end{array} \right]$ (8)
であり、よってその固有値は

\begin{displaymath}
\lambda_1(U)=u-C(\rho),
\hspace{1zw}\lambda_2(U)=u+C(\rho)
\end{displaymath}

となり、よって (4) より、 $\rho>0$ では (2) は双曲型となる。 なお、この $\lambda_1$, $\lambda_2$ を使うと、(8) は
  $\displaystyle
\nabla_U F(U)
=
\left[
\begin{array}{cc}
0 & 1\\
-\lambda_1\lambda_2 & \lambda_1+\lambda_2
\end{array} \right]$ (9)
と書くこともできる。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-02-28