8 直接証明: 境界上

次は、$w(\bar{U})$ の、$U_L$, $U_R$ $\Sigma (w_0,z_0)$ の境界上を動くときの最大値を考える。 $\Sigma (w_0,z_0)$ の境界は、

\begin{eqnarray*}B_w &=& \{U;\ w(U)=w_0,\ z_0\leq z(U)\leq w_0\},\\
B_z &=& \{...
...eq w(U)\leq w_0\},\\
B_0 &=& \{U;\ \rho=0,\ z_0\leq u\leq w_0\}\end{eqnarray*}

の 3 つの部分からなる (図 1) が、まず $B_0$ を 除外しておく。

$U_L\in B_0$ の場合は、$\rho_L=0$ より、

\begin{displaymath}
U_L = \left[\begin{array}{c}\rho_L\\ \rho_L u_L\end{array}\r...
...y}{c}\rho_L u_L\\ \rho_L u_L^2+P(\rho_L)\end{array}\right] = 0
\end{displaymath}

となるので、

\begin{displaymath}
\bar{U} = \frac{1}{2\mu}(\mu U_R - F(U_R))
\end{displaymath}

となるが、これは $B_z$ の端 ( $z(U_L)=w(U_L)=z_0$)、 および $B_w$ の端 ( $z(U_L)=w(U_L)=w_0$) でも同じなので、 それらに含まれると考えてよい。 $U_R\in B_0$ の場合も同様なので、 よって、 $U_L, U_R\in B_w\cup B_z$ としてよいことになる。

今後、 $\bar{w}\leq w_0$ であることを示す代わりに、

  $\displaystyle
I = \bar{\rho}(w_0-\bar{w})$ (27)
とし、この $I$ が 0 以上になるかどうかを考えることにする。 まず $I$ を変形する。

\begin{eqnarray*}\bar{m}
&=&
\frac{1}{2}(\rho_L u_L + \rho_R u_R)
- \frac{1}{...
...ho_L u_L D_L^{+} + \rho_R u_R D_R^{-})
- \frac{1}{2\mu}(P_R-P_L)\end{eqnarray*}

より、

\begin{eqnarray*}I
&=&
\bar{\rho}w_0-\bar{\rho}(\bar{u}+G(\bar{\rho}))
= \ba...
...o_R u_R D_R^{-})
+\frac{1}{2\mu}(P_R - P_L)
-\bar{\rho}\bar{G}\end{eqnarray*}

となるので、
  $\displaystyle
I
=
\frac{1}{2}\rho_L D_L^{+}(w_0-u_L) + \frac{1}{2}\rho_R D_R^{-}(w_0-u_R)
+\frac{1}{2\mu}(P_R - P_L)
-\bar{\rho}\bar{G}$ (28)
と書ける。

まず、$U_L$$B_w\cup B_z$ 上に固定して、$U_R$$B_z$ 上で 動かして考える。この場合、$z(U_R)=z_0$ より

\begin{displaymath}
u_R = z_0 + G(\rho_R)
\end{displaymath}

なので、これを代入すれば $I$$\rho_R$ の 1 変数関数と見ることができる。 その $\rho_R$ に関する導関数を計算する。

\begin{displaymath}
\frac{dI}{d\rho_R}
=
\frac{1}{2}\{\rho_R D_R^{-}(w_0-z_0-G(\...
...)-(\bar{\rho}\bar{G})_{\bar{\rho}}
\frac{d\bar{\rho}}{d\rho_R}
\end{displaymath}

となるが、

\begin{eqnarray*}\frac{d}{d\bar{\rho}}(\bar{\rho}G(\bar{\rho}))
&=&
G(\bar{\rh...
...-})_{\rho_R}
=
\frac{1}{2}\left(D_R^{-} -\frac{C_R}{\mu}\right)\end{eqnarray*}

となるので、

\begin{eqnarray*}\frac{dI}{d\rho_R}
&=&
\frac{1}{2}\left(D_R^{-} -\frac{C_R}{\...
...}\left(D_R^{-} -\frac{C_R}{\mu}\right)
(w_0-z_0-G_R-C_R-\bar{H})\end{eqnarray*}

より、
  $\displaystyle
\frac{dI}{d\rho_R}
= \frac{1}{2}\left(D_R^{-} -\frac{C_R}{\mu}\right)(w_0-z_0-H_R-\bar{H})$ (29)
となることがわかる。ここで、右辺の最初の部分は、CFL 条件より

\begin{displaymath}
D_R^{-} -\frac{C_R}{\mu}
=
1-\frac{u_R + C_R}{\mu}
=
1-\frac{\lambda_2^R}{\mu} > 0
\end{displaymath}

となるので、$dI/d\rho_R$ の符号は $(w_0-z_0-H_R-\bar{H})$ の符号に等しい。

\begin{displaymath}
\frac{d\bar{\rho}}{d\rho_R}
= \frac{1}{2}\left(D_R^{-} -\frac{C_R}{\mu}\right) > 0
\end{displaymath}

で、 $H'(\rho)\geq 0$ より

\begin{displaymath}
\frac{d}{d\rho_R}(w_0-z_0-H_R-\bar{H})
=-H'(\rho_r)-H'(\bar{\rho})\frac{d\bar{\rho}}{d\rho_R}\leq 0
\end{displaymath}

となるから $w_0-z_0-H_R-\bar{H}$$\rho_R$ に関して非増加関数となる。 よって、(29) の右辺は正の値と非増加関数の積なので、 常に負か、常に正か、またはあるところまでは正であるところから負、 の 3 通りのうちのいずれかとなり、 $I$ はそれぞれ単調減少、単調増加、または増加して減少する関数となるから、 いずれの場合でもその最小値は両端の $\rho_R=0$, $\rho_R=\rho_0$ の いずれかで取ることになる。

$\rho_R=0$ の場合は、$B_0$ に含まれ、 それはどこでも値は変わらなかったので、 結局その端の値は $B_w$ の端での値と同じになるから、 結局 $U_R\in B_z\cup B_w$ での $I$ の最小値は、$U_R\in B_w$ での最小値 に等しい。

よって次は、$U_R\in B_w$ を固定して、$U_L\in B_z$ を動かして その最小値を考える。この場合は、$z(U_L)=z_0$ より

\begin{displaymath}
u_L = z_0 + G(\rho_L)
\end{displaymath}

なので、これを $I$ に代入すれば $\rho_L$ の 1 変数関数となり、 それを $\rho_L$ で微分する。この場合、

\begin{displaymath}
\frac{dI}{d\rho_L}
=
\frac{1}{2}\{\rho_L D_L^{+}(w_0-z_0-G(\...
...)-(\bar{\rho}\bar{G})_{\bar{\rho}}
\frac{d\bar{\rho}}{d\rho_L}
\end{displaymath}

で、

\begin{eqnarray*}\frac{d D_L^{+}}{d\rho_L}
&=&
\frac{1}{\mu}\frac{d u_L}{d\rh...
...+})_{\rho_L}
=
\frac{1}{2}\left(D_L^{+} +\frac{C_L}{\mu}\right)\end{eqnarray*}

となるので

\begin{eqnarray*}\frac{dI}{d\rho_L}
&=&
\frac{1}{2}\left(D_L^{+} +\frac{C_L}{\...
...c{1}{2}\left(D_L^{+} +\frac{C_L}{\mu}\right)(w_0-z_0-H_L-\bar{H})\end{eqnarray*}

となる。 $\rho_R$ の場合同様、CFL 条件により

\begin{displaymath}
D_L^{+} +\frac{C_L}{\mu}
= 1 + \frac{\lambda_2^L}{\mu} > 0
\end{displaymath}

であり、 $(w_0-z_0-H_L-\bar{H})$$\rho_L$ に関して非増加となるので、 $I$ の最小値は両端 $\rho_L=0$, $\rho_L=\rho_0$ で取る。 よって、 $U_L\in B_z\cup B_w$ での $I$ の最小値は $U_L\in B_w$ の最小値に等しくなる。

以上により、 $U_L, U_R\in B_w$ での最小値を考えればよいことになる。

最後に、$U_R\in B_w$ に固定したまま、$U_L\in B_w$ を動かして 考える。この場合は $w(U_L)=w_0$ より

\begin{displaymath}
u_L = w_0-G(\rho_L)
\end{displaymath}

なので、

\begin{displaymath}
\frac{dI}{d\rho_L}
=
\frac{1}{2}\{\rho_L D_L^{+}G(\rho_L)\}_...
...)-(\bar{\rho}\bar{G})_{\bar{\rho}}
\frac{d\bar{\rho}}{d\rho_L}
\end{displaymath}

で、

\begin{eqnarray*}\frac{d D_L^{+}}{d\rho_L}
&=&
\frac{1}{\mu}\frac{d u_L}{d\rh...
...+})_{\rho_L}
=
\frac{1}{2}\left(D_L^{+} -\frac{C_L}{\mu}\right)\end{eqnarray*}

となるので

\begin{eqnarray*}\frac{dI}{d\rho_L}
&=&
\frac{1}{2}\left(D_L^{+} -\frac{C_L}{\...
...=&
\frac{1}{2}\left(D_L^{+} -\frac{C_L}{\mu}\right)(H_L-\bar{H})\end{eqnarray*}

となる。

\begin{displaymath}
D_L^{+} -\frac{C_L}{\mu}
= 1 + \frac{u_L-C_L}{\mu}
= 1 + \frac{\lambda_1^L}{\mu} > 0
\end{displaymath}

なので、$dI/d\rho_L$ の符号は $(H_L-\bar{H})$ の符号に等しく、 $H'\geq 0$ よりそれは $(\rho_L-\bar{\rho})$ の符号に等しい。

\begin{displaymath}
\rho_L-\bar{\rho}
= \rho_L-\frac{1}{2}(\rho_L D_L^{+} + \rho...
..._R^{-})
= \frac{1}{2}\rho_L D_L^{-} -\frac{1}{2}\rho_R D_R^{-}
\end{displaymath}

となり、よって

\begin{displaymath}
\frac{d}{d\rho_L}(\rho_L-\bar{\rho})
=
\frac{1}{2}(\rho_L D_...
...right)
=
\frac{1}{2}\left(1-\frac{\lambda_1^L}{\mu}\right) > 0
\end{displaymath}

となるので $(\rho_L-\bar{\rho})$ は増加関数。 $\rho_L = \rho_R$ のときは、

\begin{displaymath}
u_L
= \left.(w_0 - G(\rho_L))\right\vert _{\rho_L = \rho_R}
= w_0 - G(\rho_R)
\end{displaymath}

となるが、$U_R\in B_w$ より $w(U_R)=w_0$ なので $w_0-G_R=w_R-G_R=u_R$、 よって $u_L = u_R$ となるから、

\begin{displaymath}
\left.(\rho_L-\bar{\rho})\right\vert _{\rho_L=\rho_R}
=
\fra...
...o_L=\rho_R}
=
\frac{1}{2}(\rho_R D_R^{-} - \rho_R D_R^{-}) = 0
\end{displaymath}

となるので、 $(\rho_L-\bar{\rho})$$\rho_L = \rho_R$ で符号を変え、 $\rho_L>\rho_R$ ならば正、$\rho_L<\rho_R$ ならば負となる。

$dI/d\rho_L$ の符号はその符号に等しいので、 よって $I$ $\rho_L = \rho_R$ で最小値を取る。 $\rho_L = \rho_R$ のときは $u_L = u_R$ なので、

\begin{displaymath}
\bar{\rho}
= \frac{1}{2}(\rho_L D_L^{+}+\rho_R D_R^{-})
= \frac{1}{2}\rho_R(D_R^{+}+D_R^{-})
= \rho_R
\end{displaymath}

となり、よって $I$ の最小値は

\begin{eqnarray*}\left.I\right\vert _{\rho_L=\rho_R}
&=&
\frac{1}{2}\rho_R(D_R...
...)-\rho_RG_R
=
\rho_R(w_0-u_R-G_R)
\\ &=&
\rho_R(w_0-w_R)
= 0\end{eqnarray*}

となる。以上で $I$ の最小値が 0 であることがわかり、 $w(\bar{U})\leq w_0$ が示されたことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-02-28