6 ロンスキー行列式が恒等的に 0 の場合

最後に、ロンスキー行列式が恒等的に 0 の場合でも、 関数の集まりが一次従属とは限らないこと、 すなわち、定理 5 の逆は成立しないことを示す。

簡単な反例は、ロンスキー行列式の Wikipedia ([1]) にも 載っている、 $f_1(x)=x^2$$f_2(x)=x\vert x\vert$ である。$f_2(x)$ は、 $f_1(x)$ の放物線の$x<0$ の方を上下反転させたものになっているが、 $x=0$$x$ 軸に 2 次に接しているので、$f_1,f_2$ は 1 回微分可能で、 導関数 $f_1'(x)=2x$, $f_2'(x)=2\vert x\vert$ も連続となる。 このとき、$f_1,f_2$ のロンスキー行列式は、

$\displaystyle W(x;f_1,f_2)=\left\vert\begin{array}{cc}x^2&x\vert x\vert\\ 2x&2\vert x\vert\end{array}\right\vert=2x^2\vert x\vert-2x^2\vert x\vert=0
$
となって恒等的に 0 になる。$x\leq 0$ だけみれば $f_2(x)=-f_1(x)$ で、$x\geq 0$ だけみれば $f_2(x)=f_1(x)$ なので、 それぞれ一次従属であるが、実数全体でみれば一次従属ではないので (一方が 他方の実数倍では表せない)、 これがロンスキー行列式は恒等的に 0 だが一次従属ではない例のひとつ となる。

このように、区分的には一次従属であり、全体で見れば一次従属ではない 例はいくらでも作ることができて、例えば $n$ 個の関数の例も 上の例を発展させれば以下のように作ることができる。

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竹野茂治@新潟工科大学
2026-02-17