10 その他の性質について

その他、今までの考察でわかる Fk , Gk に関する性質を簡単に述べておく。

7 節、9 節の議論により、 Fk , Gk の分子に表われる多項式 $ \hat{{F}}_{k}^{}$ , $ \hat{{G}}_{k}^{}$

$\displaystyle \hat{{F}}_{k}^{}$ = $\displaystyle \Im$(s + i)k+1,   $\displaystyle \hat{{G}}_{k}^{}$ = $\displaystyle \Re$(s + i)k+1 (16)
であることがわかる。 これは、3 項漸化式 (15) の、 初期値 (16) を満たす一般項でもある。

(17) から、 $ \hat{{F}}_{k}^{}$ , $ \hat{{G}}_{k}^{}$ は一つおきの次数の項しか持たず、 よって必ず奇関数か偶関数のどちらかになることもすぐにわかる。 特に、次のことが言える:

なお、ここで s , t に関する「奇関数」「偶関数」という言葉を用いているが、 厳密に言えば、t の関数は t > 0 でしか定義されておらず、 またそのラプラス変換も s の関数としては s > 0 でしか意味を持たないので、 s = 0 での対称性を意味する「偶関数」「奇関数」という言葉は適切ではないが、 ここではそれらの式を「自然に実数全体に拡張したものを考えれば」 という意味で用いることにする。

また、Fk , Gk の分子は (17) の定数倍であるから

もわかる。

そして、例えば F5 は、

F5 = $\displaystyle {\frac{{240s(3s^4-10s^2+3)}}{{(s^2+1)^6}}}$ = $\displaystyle {\frac{{240s(3(Y-1)^2-10(Y-1)+3)}}{{Y^6}}}$  
  = 240s(3Y-4 -16Y-5 +16Y-6)  
  = 240s$\displaystyle \left\{\vphantom{\frac{3}{(s^2+1)^4}-\frac{16}{(s^2+1)^5}
+\frac{16}{(s^2+1)^6}}\right.$$\displaystyle {\frac{{3}}{{(s^2+1)^4}}}$ - $\displaystyle {\frac{{16}}{{(s^2+1)^5}}}$ + $\displaystyle {\frac{{16}}{{(s^2+1)^6}}}$$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{3}{(s^2+1)^4}-\frac{16}{(s^2+1)^5}
+\frac{16}{(s^2+1)^6}}\right\}$  

のように変形できる。 このようにして、結局以下のような形に変形できることがわかる:

F2m-1 = s $\displaystyle {\frac{{\mbox{$Y$ の $(m-1)$ 次式}}}{{Y^{2m}}}}$ = s$\displaystyle \left(\vphantom{\frac{a_1}{Y^{m+1}}+ \cdots + \frac{a_{m}}{Y^{2m}}}\right.$$\displaystyle {\frac{{a_1}}{{Y^{m+1}}}}$ + ... + $\displaystyle {\frac{{a_{m}}}{{Y^{2m}}}}$$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{a_1}{Y^{m+1}}+ \cdots + \frac{a_{m}}{Y^{2m}}}\right)$,
F2m = $\displaystyle {\frac{{\mbox{$Y$ の $m$ 次式}}}{{Y^{2m+1}}}}$ = $\displaystyle {\frac{{b_1}}{{Y^{m+1}}}}$ + ... + $\displaystyle {\frac{{b_{m+1}}}{{Y^{2m+1}}}}$,
G2m-1 = $\displaystyle {\frac{{\mbox{$Y$ の $m$ 次式}}}{{Y^{2m}}}}$ = $\displaystyle {\frac{{c_1}}{{Y^{m}}}}$ + ... + $\displaystyle {\frac{{c_{m+1}}}{{Y^{2m}}}}$,
G2m = s $\displaystyle {\frac{{\mbox{$Y$ の $m$ 次式}}}{{Y^{2m+1}}}}$ = s$\displaystyle \left(\vphantom{\frac{d_1}{Y^{m+1}}+ \cdots + \frac{d_{m+1}}{Y^{2m+1}}}\right.$$\displaystyle {\frac{{d_1}}{{Y^{m+1}}}}$ + ... + $\displaystyle {\frac{{d_{m+1}}}{{Y^{2m+1}}}}$$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{d_1}{Y^{m+1}}+ \cdots + \frac{d_{m+1}}{Y^{2m+1}}}\right)$

実際にこの係数を求めるのは容易ではないが、 これらをこの形に変形すること自体は意味があり、 有理関数のラプラス逆変換の計算に利用できる。 それについては、また別の機会にまとめる予定である。

竹野茂治@新潟工科大学
2008年3月18日