5.4.0.2 [A-2] の場合

この場合、 $\Delta V_k(\tau)$ は、 $j$ 以外の特性族に出る front の世代は $k$ 以上で、 (55) より $\bar{\sigma}_j$ の 世代も $k-1$ 以下となり、よって $V_k(\tau+)$ $\bar{\sigma}_j$ を 含まない。$V_k(\tau-)$$k',k''$ のうち $k$ 以上のものがあれば それを含むが、結局

$\displaystyle \Delta V_k(\tau)
=\sum_{\ell\neq j}\vert\bar{\sigma}_\ell\vert
-\...
...epsilon'\vert\sigma''_j\vert
\leq \sum_{\ell\neq j}\vert\bar{\sigma}_\ell\vert
$

となり Lemma 7.2 (ii) により (53) の 1 本目 が得られる。

$\Delta Q_{k-1}(\tau)$ は、

$\displaystyle {\Delta Q_{k-1}(\tau)}$
  $\textstyle =$ $\displaystyle \sum_{\ell\neq j}\vert\bar{\sigma}_\ell\vert Sw(\bar{\sigma}_\ell...
...-\vert\sigma''_j\vert(S''_j-\vert\sigma'_j\vert)
-\vert\sigma'_j\sigma''_j\vert$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle -\vert\sigma'_j\sigma''_j\vert
+\sum_{\ell\neq j}\vert\bar{\sigma}_\ell\vert Sw(\bar{\sigma}_\ell)
+I^{k-1}_j$ (58)

の形に書ける。以後この
  $\displaystyle
I^{k-1}_j
= \vert\bar{\sigma}_j\vert\bar{S}_j
-\vert\sigma'_j\vert(S'_j-\vert\sigma''_j\vert)
-\vert\sigma''_j\vert(S''_j-\vert\sigma'_j\vert)$ (59)
を考える。 (55) より、 $\bar{k}=Go(\bar{\sigma}_j)=\min\{k',k''\}<k-1$ となる。

3.6 節の 2. を除いた 5 通りで場合分けし、 まず 1. の $\sigma'_j<0$, $\sigma''_j<0$, $\bar{\sigma}_j<0$ のときを考える。

$\displaystyle k'=\bar{k}<k-1\leq k''
$

の場合は $S''_j=Sw(\sigma''_j)$ だが $S'_j\leq Sw(\sigma'_j)$ で、$\sigma'_j$ $\bar{\sigma}_j$ は 世代が同じなので、結局 $\bar{S}_j$ とそれらの大小関係は
  $\displaystyle
\bar{S}_j = S'_j-\vert\sigma''_j\vert\leq S''_j-\vert\sigma'_j\vert$ (60)
となる。よって、この場合、

\begin{eqnarray*}I^{k-1}_j
&=&
(\vert\bar{\sigma}_j\vert-\vert\sigma'_j\vert)(...
... \leq\
\vert\bar{\sigma}_j-\sigma'_j-\sigma''_j\vert V(\tau -)\end{eqnarray*}

となる。

$\displaystyle k''=\bar{k}<k-1\leq k'
$

の場合も $\sigma'_j$$\sigma''_j$ 等を入れかえるだけで 同様の評価ができ、結局いずれの場合も
  $\displaystyle
I^{k-1}_j\leq \vert\bar{\sigma}_j-\sigma'_j-\sigma''_j\vert V(\tau -)$ (61)
が得られる。

次は 3. の $\sigma'_j<0$, $\sigma''_j>0$, $\bar{\sigma}_j<0$ の場合。

$k'=\bar{k}<k-1\leq k''$ の場合は $\bar{S}_j=S'_j-\vert\sigma''_j\vert$ で、 $k''=\bar{k}<k-1\leq k'$ の場合は $\bar{S}_j\leq S'_j-\vert\sigma''_j\vert$ なので、いずれの場合も、

\begin{eqnarray*}I^{k-1}_j
&\leq &
(\vert\bar{\sigma}_j\vert-\vert\sigma'_j\ve...
... &\leq &
\vert\bar{\sigma}_j-\sigma'_j-\sigma''_j\vert V(\tau -)\end{eqnarray*}

となって (61) が得られる。

5. の場合は、3. の場合の $\sigma'_j$$\sigma''_j$ の入れかえなので、 同じく (61) が得られる。

次は 4. の $\sigma'_j<0$, $\sigma''_j>0$, $\bar{\sigma}_j\geq 0$ の場合。 $\bar{\sigma}_j=0$ ならば明らかに $I^{k-1}_j\leq 0$ となり (61) が成り立つので、 $\bar{\sigma}_j>0$ の場合を考える。

$k'=\bar{k}<k-1\leq k''$ の場合は $\bar{S}_j\leq S''_j-\vert\sigma'_j\vert$ で、 $k''=\bar{k}<k-1\leq k'$ の場合は $\bar{S}_j= S''_j-\vert\sigma'_j\vert$ なので、 いずれの場合も、

\begin{eqnarray*}I^{k-1}_j
&\leq &
(\vert\bar{\sigma}_j\vert-\vert\sigma''_j\v...
... &\leq &
\vert\bar{\sigma}_j-\sigma'_j-\sigma''_j\vert V(\tau -)\end{eqnarray*}

となって (61) が得られる。

6. も、4. の $\sigma'_j$$\sigma''_j$ の入れかえなので、 同じく (61) が得られる。

よって、[A-2] の場合はすべて (61) が 成り立ち、、(58), (61) により、

$\displaystyle \Delta Q_{k-1}(\tau)
\leq
-\vert\sigma'_j\sigma''_j\vert
+\left(\...
...gma}_\ell\vert
+\vert\bar{\sigma}_j-\sigma'_j-\sigma''_j\vert\right)V(\tau -)
$

となり、Lemma 7.2 (ii) より (53) の 2 本目が得らえることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-06-03