5.2 非物理 front の大きさの評価

まずは、非物理 front の大きさの評価 (7.66) から説明する。 これは、ほぼ 4 節と同様に行われる。

非物理 front 接続 $\sigma_\alpha(t)$ ($t\geq t_0$) は、 新規には [S-1],[S-2] でのみ生成され、 無限に伸びる。 なお、 $\sigma_\alpha(t)$ の符号は特に定められていないが、 本節では正として話を進めることにする。 $\sigma_\alpha(t)$ は、simplified method で作られるから、 その出発点 $t=t_0$ では、Lemma 7.2 (iii) より

$\displaystyle \sigma_\alpha(t_0) = \vert\sigma_{np}\vert\leq M_1\vert\sigma'_i\sigma''_j\vert
$

となるが、物理 front 同士の simplified method は、 $\vert\sigma'_i\sigma''_j\vert<\rho$ のときにしか実施しないので (p132)、 よって
  $\displaystyle
\sigma_\alpha(t_0)\leq M_1\rho$ (39)
である。

次は、衝突時刻 $t=\tau$ での評価を、 4 節同様 CASE 1 と CASE 2 に分けて考える。

CASE 1 は $\sigma_\alpha(t)$ が他の front と衝突していない場合で、 この場合は当然

  $\displaystyle
\Delta\sigma_\alpha(\tau)=0$ (40)
となるが、このとき、
  $\displaystyle
\Delta V_\alpha(\tau)+C_0\Delta Q(\tau)\leq 0$ (41)
となることを示す。

$\sigma_\alpha(\tau)$ がその衝突点より左にあれば、 $\sigma_k$, $\sigma'_i$, $\sigma''_j$ のうちの物理 front はすべて $\sigma_\alpha(t)$ と approach し、 右にあれば衝突に関わるすべての front は $\sigma_\alpha(t)$ と approach しない。

よって、[A-1] であれば、前者の場合は

$\displaystyle \Delta V_\alpha(\tau)
=
\sum_{k=1}^n \vert\bar{\sigma}_k\vert - ...
...+ \vert\bar{\sigma}_j-\sigma''_j\vert
\leq
M_1\vert\sigma'_i\sigma''_j\vert
$

となり、後者は $\Delta V_\alpha(\tau)=0$ となる。 [A-2] の場合も、

$\displaystyle \Delta V_\alpha(\tau)
=
\sum_{k=1}^n \vert\bar{\sigma}_k\vert - ...
...ar{\sigma}_j-\sigma'_j-\sigma''_j\vert
\leq
M_1\vert\sigma'_j\sigma''_j\vert
$

か、または $\Delta V_\alpha(\tau)=0$ となる。 [S-1] は、$\sigma_{np}$ $\sigma_\alpha(t)$ とは approach せず、 よって $\Delta V_\alpha(\tau)=0$。 [S-2] は、 $\sigma_\alpha(\tau)$ が衝突点の左ならば

$\displaystyle \Delta V_\alpha(\tau)
= \vert\sigma'_j+\sigma''_j\vert-\vert\sigma'_j\vert-\vert\sigma''_j\vert
\leq 0
$

で、右ならば $\Delta V_\alpha(\tau)=0$。 [S-3] は $\Delta V_\alpha(\tau)=0$ となる。

よって、すべて $\Delta V_\alpha(\tau)\leq M_1\vert\sigma'_i\sigma''_j\vert$ と なるので、4.3 節の (31) と 同様にして (41) が得られる。

次は、CASE 2 の、$t=\tau$ $\sigma_\alpha(t)$$\sigma_\beta$ が衝突 する場合を考えてみる。この場合それは [S-3] となるので、

  $\displaystyle
\Delta V_\alpha(\tau) = -\vert\sigma_\beta\vert$ (42)
であり、 $\Delta Q(\tau)$ は、 (7), (11), (23) により、

\begin{eqnarray*}\Delta Q(\tau)
&\leq &
- \vert\sigma_\alpha(\tau-)\sigma_\bet...
...\frac{1}{2} \vert\sigma_\alpha(\tau-)\sigma_\beta\vert
\ &<&
0\end{eqnarray*}

となるし、 $\Delta\sigma_\alpha(\tau)$ は、Lemma 7.2 (iv) より

$\displaystyle \Delta\sigma_\alpha(\tau)
= \sigma_\alpha(\tau+) - \sigma_\alpha(...
...rt\sigma_\alpha(\tau-)\vert
\leq M_1\vert\sigma_\alpha(\tau-)\sigma_\beta\vert
$

となり、4.4 節の (32) が 成り立つので、よって、(33) と 同じ式で $\eta$ を定義すれば (34), (35) が得られ、よって (36) と 同様にして

$\displaystyle \eta(t)\leq\sigma_\alpha(t_0)e^{M_1\delta_2}
$

となるので (39) より
  $\displaystyle
\sigma_\alpha(t)\leq \rho M_1e^{M_1\delta_2}$ (43)
が得られる。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-06-03