() に対して、 でなければ、 Tartar 方程式の解は、 関数となる。
補足を一つ述べる。 , すなわち に対しては、 Ding-Chen-Luo [7], Lions-Perthame-Souganidis [9] の どちらも Tartar 方程式を解いているが、その Young 測度の元となる (1) の近似解については、 [7] では Lax-Friedrichs 型差分近似 (以下 LF-差分) を用い、 [9] では動力学近似を用いている。 そのいずれも補償コンパクト性理論により、 それぞれの近似解に対するエントロピーの弱コンパクト性が示されて、 その後の Tartar 方程式の議論に入っている。
一方 () に関しては [9] でしか 扱われておらず、[9] では用いられていない LF-差分が の場合に収束するかについては、 そこでは直接は示されてはいない。 LF-差分に関する [7] の方法では、 、 すなわち でないと LF-差分に対するエントロピーの コンパクト性が得られず、よって その方法では () に関しては LF-差分の収束性に本稿の結果を適用することができないことになる。
しかし最近知ったのだが、その部分については既に Wang,Li,Huang らの結果 [12] があり、 彼らは ( ) に対する LF-差分の エントロピーの弱コンパクト性を示している。 よって、 の LF-差分からでも Tartar 方程式を 得ることができ、[9]、または本稿の手法により、 Young 測度が 関数になるので、 結局 に対して LF-差分が弱解に収束することが 保証されることになる。
なお、Tartar 方程式の解法部分に関しては、LF-差分であるか 動力学近似であるかは関係がないので、その手法は本稿の方法でも [9] の方法でもどちらでも構わない。 つまり、LF-差分の収束性についても、本稿によって新しく何かが 得られているわけではなく、あくまで [9] と [12] に よって既に得られていることの別証明をしているに過ぎない。
また、 に関しては、 Lions-Perthame-Tadmor [8] によって、 に関しては [13] によって Tartar 方程式が 解かれているが、それらの場合に LF-差分に関するコンパクト性が 得られているのかは良くはわからないので、 それぞれの場合に弱解の存在は示されていても、 LF-差分が収束することまで示されているかどうかはわからない。
竹野茂治@新潟工科大学