11 K10 の評価
は、
を と置換して、そして 10 節の (122) での の分割を用いて、
次のように分ける。
まずは
の方から考えるが、 を固定すれば
当然 に関して なので、Fubini の定理より
となるが、
であることを利用し、最内側の積分を
と書き換え、さらにこの中かっこの部分を以下のように分ける。
そして、そのそれぞれの積分を
とする:
まずは、この
() を順に評価する。
このうち、
,
については、
命題 3 と (114) の により
と評価でき、よって
,
は
一様有界となる。
は (124) より 上 , に関して で、その積分は
でおさえられるので、
より
,
も一様有界となる。
極限は、
のときに
となるので、Lebesgue 収束定理により、
(145)
となる。
については、 と置換すると
となるが、
より、これは、
と評価できる。
また、この については , に
以下のように取り込む。
一般に、
に対して
なのでよって
は、
とおさえられ、
(146)
より
は一様有界となることがわかる。
さらに、この (146) の左辺は
より 0 に収束するので、
のときの
の極限は
(147)
となる。
は
となるが、 によらない関数
(149)
の 上での に関する可積分性を示す。まず、
と分ける。この の方は、
より可積分となる。次に の方であるが、
と分けると、 で なので
では
を でおさえて、
この を補題 7 を用いて と に取り込む。
より、
でおさえられる。
また、
は、
とおさえられる。
よって、(150), (151), (152) より、
(153)
となり、
は 上 に
関して となる。
は によらないので、
(148) に戻ると、
は、
とおさえられ、一様有界となる。
の極限も、(153) により Lebesgue 収束定理が適用でき、よって、
となることがわかる。
この極限の評価については、後で考える。
これで、
の有界性と極限が得られたことになる。
次は (144) の
を考える。
の の部分を
と分け、
を、
前者を持つ
と
後者を持つ
の 2 つに分ける。
まずは
から考える。
を
と置換すると、
となる。
この、, を除いた、最も内側の に
関する積分の部分を
とする。
と置換すると、
となる。後者の積分で を に変えると、
より、
となる。この中かっこの部分を
とすると、
命題 3 より、
と評価できるので、
の被積分関数の絶対値は
| |
| |
|
| (155) |
以下となり、(155) は 上 に
関して なので、
は一様有界となる。
よって、
も一様有界となる。
そして、(155) が であることから、
に Lebesgue 収束定理を適用でき、
となる。
この極限
は には
依存するが には無関係なので、
よって
の極限は、再び Lebesgue 収束定理により
となる。
は , の
入れかえで不変となり、よって
(156)
となる。
あとは
のみであるが、これも
と
すると、
となる。ここで、
(157)
が 上
に関して で
あることを示す。
そのために、関数
(158)
を考える。この積分の特異性は、
と に現れるが、
のときは
より
となるので、
に関しては (158) の積分は収束する。
また、
のとき、 の付近では、
なので、やはり可積分となり、
よって は確かに収束する。
また
も容易にわかるので、
の場合のみ考えればよい。
とすると、
となるが、 は 以外では連続で、
の付近では可積分なので、
ならば は有界となる。
での評価を考えるために、
でのオーダーの評価を行う。
は では可積分ではないので、
では は に発散する。 に対して、
であり、最後の式の
に対する極限は、
ロピタルの定理より
となる。よって再びロピタルの定理により、
となることがわかり、
よって
なので、よって
(159)
と評価できることになる。ここから例えば、
(160)
となる定数 も取れることになる。
に戻れば、(157), (158), (160) より
となるので、これで
が 上で
に関して可積分であることがわかる。
よって、
より
が一様有界であることが示されたことになる。
の極限は、Lebesgue 収束定理より、
(161)
となる。ここで、 は
(162)
とした。 が収束することは の考察から
わかる。
以上で の一様有界性とその極限がわかり、
(145), (147), (154), (156), (161) より、
のみが残ることになる。
よってあとは (154) の
と
(161) の
を考えればよい。
(154) の最内側の に関する積分は
となるので、
(165)
が 上で に関して であることが
わかれば、
の積分を (165) に置き換えたものに対して Fubini の
定理が使えることになる。
今、 に対し、
(166)
とすると、 の置換により
となるので、(159) より、
となるから、
とおさえられ、これで
が可積分であることが
保証される。よって、(154) の
を (165) に変えたものに Fubini の定理が使えて、
(167)
となる。ここで、
(168)
としたが、 により、
となるので、よって (161), (167) より
(169)
となる。
この
を考えてみる。
なお、
となるので は奇関数であり、
よって として考える。
であり、後者で を にすれば、
となるが、
とすると より
となる。ここで、 とすると、
となるので、結局
は、 によらない定数 ( とする) になることがわかる。
一応この値 も求めておく。
まず と置換すると、
,
より、
となり、 とすると , より
なので、Lebesgue 収束定理により、
となる。これで、 が奇関数であることと合わせて、
を符号関数とすれば、, の
いずれでも
と表されることになる。
よって (169) は、
となる。これで、(163) より
は
となる。
以上、8 節、9 節、10 節と本節の
内容、特に (110), (111), (170) より、次のことが言える。
命題 8
は
上 に関して一様有界で、
その
の極限は、
となる。
竹野茂治@新潟工科大学
2023-04-03