5.7 バロトロピックのオイラー座標系の場合

バロトロピックのオイラー座標系の場合、 3.7 節、 4.10 節で見たように $R_j(U_0)$, $S_j(U_0)$ ($j=1,2$) は以下のように表される。

\begin{displaymath}
\begin{array}{lll}
R_1(U_0):
& \displaystyle u=u_0-\int_{\...
...\sqrt{\frac{P(\rho)-P(\rho_0)}{\rho-\rho_0}}\right)
\end{array}\end{displaymath}

よって、

\begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
f_5(\rho;\rho_0)
&=
\left\{\begin{array...
...(\rho;\rho_0) & (\rho\leq\rho_0)
\end{array}\right.\end{array}\end{displaymath}

とすれば、$R_j$, $S_j$ をつないだ $T_j$

\begin{displaymath}
\begin{array}{lll}
T_1(U_0): & u=u_0-f_5(\rho;\rho_0) & (\r...
...=u_0+\hat{f}_5(\rho;\rho_0) & (\rho=\rho_0e^\delta)
\end{array}\end{displaymath}

となる。この場合、

\begin{displaymath}
\hat{f}_5(\rho_1;\rho_0)=-f_t(\rho_0;\rho_1)
\end{displaymath}

であるので、 $T_2(U_0)\ni U_1$ を逆に $U_0$ について解いた $\hat{T}_2(U_1)\ni U_0$ を考えると、

\begin{displaymath}
\begin{array}{lll}
\hat{T}_2(U_0): & u=u_0+f_5(\rho;\rho_0) & (\rho=\rho_0e^{-\delta})
\end{array}\end{displaymath}

となることがわかる。

リーマン問題の解は、 $T_1(U_l)\ni U_m$, $T_2(U_m)\ni U_r$ となる $U_m={\,}^T\!(\rho_m,u_m)$ を求めればよいが、 それは $T_1(U_l)$ $\hat{T}_2(U_r)$ の交点として $U_m$ を求めればよいことになる。 それにより、$U_l$$U_m$ を結ぶ 1-単純波、 $U_m$$U_r$ を結ぶ 2-単純波によって リーマン問題の解が構成される。

これが常に解けるかどうかを考えてみる。

$f_5(\rho;\rho_0)$ は、$\rho<\rho_0$ ならば $f_5'=\sqrt{P'}/\rho>0$ であり、 $\rho>\rho_0$ ならば

\begin{displaymath}
(f_5)^2
=(\rho-\rho_0)^2(f_1(\rho;\rho_0))^2
=\frac{\{P(\rho...
...ho_0\rho}
=(P-P_0)\left(\frac{1}{\rho_0}-\frac{1}{\rho}\right)
\end{displaymath}

であり、$P-P_0$, $1/\rho_0-1/\rho$$\rho>\rho_0$ ではいずれも正で、 かつ増加関数なので $f_5$ ($>0$) も増加関数となる。

よって、$f_5$ はすべての $\rho>0$ に対して増加関数であり、

\begin{eqnarray*}\lim_{\rho\rightarrow\infty}f_5(\rho;\rho_0)
&=&
f_5(\infty;...
...\rho_0)
&=&
-\int_0^{\rho_0}\frac{\sqrt{P'(\rho)}}{\rho}d \rho\end{eqnarray*}

となるので、交点を求める方程式

\begin{displaymath}
u_l-f_5(\rho;\rho_l)=u_r+f_5(\rho;\rho_r)\end{displaymath}


\begin{displaymath}
f_5(\rho;\rho_l)+f_5(\rho;\rho_r)=u_l-u_r
\end{displaymath}

と書き直せば、この左辺は $\rho$ の増加関数で、 $\rho \rightarrow +0$ のときは

\begin{displaymath}
-\left(\int_0^{\rho_l}+\int_0^{\rho_r}\right)\frac{\sqrt{P'(\rho)}}{\rho}d\rho
\ (=\alpha)
\end{displaymath}

となり、 $\rho\rightarrow\infty$ のときは

\begin{displaymath}
\sqrt{\frac{P_\infty-P_l}{\rho_l}}+\sqrt{\frac{P_\infty-P_r}{\rho_r}}
\ (=\beta)
\end{displaymath}

となるので、解が $\rho>0$ で求まるためには
\begin{displaymath}
\alpha<u_l-u_r<\beta\end{displaymath} (5.114)

であることが条件となる。

例えば $P=A\rho$ のときは $P_\infty=\infty$,

\begin{displaymath}
\int_0^{\rho_0}\frac{\sqrt{P'(\rho)}}{\rho}d \rho
= \left[\sqrt{A}\log\rho\right]_0^{\rho_0}
=\infty
\end{displaymath}

なので、この条件 (5.6) は常に満たされ、 よってどんな $U_l$, $U_r$ に対しても解が求まる。 一方 $P=A\rho^\gamma$ ($1<\gamma<3$) の場合は、 $P_\infty=\infty$ であるが、

\begin{displaymath}
\int_0^{\rho_0}\frac{\sqrt{P'(\rho)}}{\rho}d \rho
=\left[\f...
..._0^{\rho_0}
=\frac{\sqrt{A\gamma}}{\theta}\rho_0^\theta<\infty
\end{displaymath}

なので、(5.6) は
\begin{displaymath}
u_l+\frac{\sqrt{A\gamma}}{\theta}\rho_l^\theta
>u_r-\frac{\sqrt{A\gamma}}{\theta}\rho_r^\theta\end{displaymath} (5.115)

となり、これが満たされるときのみ解を持つことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2018-08-01