5.3 衝撃波曲線と膨張波曲線

5.1 節で見たように、 $k$-特性方向が線形退化である場合は $k$-接触不連続のみが起こり、 その左右の定数ベクトル $U_l$$U_r$ に対しては、 $U_r$$U_l$ を通る $r_k(U)$ の積分曲線 ($C_k(U_l)$) 上の点である必要があり、 よってその選択は 1 次元の自由度のみを持つ。

また、$k$-特性方向が真性非線形である場合は、 $k$-膨張波か $k$-衝撃波が起こり、 その左右の定数ベクトル $U_l$$U_r$ に対しては、 $U_r$ が膨張波曲線 $R_k(U_l)$ 上にあるか、 $U_r$ が衝撃波曲線 $S_k(U_l)$ 上にあるか、 のみが許される。なお、この $R_k(U_l)$$S_k(U_l)$ は、 相空間 $\Omega $ 上でいずれも $U_l$ から出発する半曲線であるが、 実は、それらは綺麗につながることがわかる。


命題 5.1

$k$-特性方向が真性非線形である場合、 $R_k(U_l)$$S_k(U_l)$$U=U_l$$C^2$ で (すなわち 2 階導関数まで連続に) つながる。


証明

補題 4.2 より、$S_k(U_l)$ は、

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
U=\hat{U}_k(\delta)\ (\delta\leq 0),\\
...
...e{1zw}\hat{U}_k''(0)=(\nabla_U r_k\cdot r_k)(U_l)
\end{array} \end{displaymath}

と表される。 一方、$R_k(U_l)$$r_k(U)$ の積分曲線であるから それを $U=\check{U}_k(\delta)$ と書けば、それは

\begin{displaymath}
\check{U}_k'(\delta)=r_k(\check{U}_k(\delta)),
\hspace{1zw}\check{U}_k(0)=U_l
\end{displaymath}

を満たし、かつ $\lambda_k(U)$ の増加する方向なので、

\begin{displaymath}
\frac{d}{d \delta}\lambda_k(\check{U}_k(\delta))
=\nabla_U...
...bla_U\lambda_k(\check{U}_k(\delta))r_k(\check{U}_k(\delta))>0
\end{displaymath}

より、$\delta >0$ の部分の半曲線となる。 よって、

\begin{eqnarray*}\check{U}_k'(0)
&=&
r_k(U_l),\\
\check{U}_k''(0)
&=&
\...
...{U}_k'(\delta)\Big\vert _{\delta=0}
=\nabla_U r_k(U_l)r_k(U_l)
\end{eqnarray*}

なので、

\begin{displaymath}
U=U_k(\delta)
=\left\{\begin{array}{ll}
\hat{U}_k(\delta)...
...)\\
\check{U}_k(\delta) & (\delta\geq 0)
\end{array}\right. \end{displaymath}

とすれば、確かに $C^2$ でつながることがわかる。


竹野茂治@新潟工科大学
2018-08-01