5.2 波の位置

リーマン問題の解は、後で示すようにこれら膨張波、衝撃波、接触不連続の波を 並べて構成される (図 5.1)。
図 5.1: リーマン問題の解の例
\includegraphics[height=0.2\textheight]{Riemann1.eps}
この図にある $r_j$ は膨張波、$s_j$ は衝撃波、または接触不連続であり、 $U_j$ は、この領域では解はその定数ベクトルであることを意味する。

このように同じ点を出発する場合、 それらの波は同じ特性方向の波は 1 つしかなく、 左から 1,2,...,$N$ という順の特性方向の波しか並び得ないことを 以下に見てみる。

まず、定数ベクトルを挟んで、その左に $j$-膨張波、 右に $k$-衝撃波がある場合を考える (図 5.2)。

図 5.2: $j$-膨張波の右に $k$-衝撃波 (または $k$-接触不連続)
\includegraphics[height=0.2\textheight]{relation_rs.eps}
図 5.3: $j$-衝撃波 (または $j$-接触不連続) の右に $k$-膨張波
\includegraphics[height=0.2\textheight]{relation_sr.eps}
この場合、膨張波の右端の速度 $dx/dt$ $\lambda_j(U_m)$ であるから

\begin{displaymath}
\lambda_j(U_m)<s_k
\end{displaymath}

となるが、ラックス条件 (4.41) より

\begin{displaymath}
\lambda_k(U_m)>s_k
\end{displaymath}

となるので、よって、

\begin{displaymath}
\lambda_j(U_m)<\lambda_k(U_m)
\end{displaymath}

すなわち $j<k$ が示される。 よって、左にある波の $j$ の方が右の $k$ よりも小さくなくてはならない。

なお、この $k$-衝撃波が $k$-接触不連続である場合も、ラックス条件の代わりに

\begin{displaymath}
\lambda_k(U_m)=s_k
\end{displaymath}

が成り立つので、やはり $\lambda_j(U_m)<\lambda_k(U_m)$ となり $j<k$ が言える。

$j$-衝撃波の右に $k$-膨張波がある場合 (図 5.3) は、 $s_j<\lambda_k(U_m)$ であるが、ラックス条件により $s_j>\lambda_j(U_m)$ となるので $\lambda_j(U_m)<\lambda_k(U_m)$ となるので、やはり $j<k$ となる。 この $j$-衝撃波が $j$-接触不連続である場合も、 ラックス条件の代わりに $s_j=\lambda_j(U_m)$ となるので、やはり $\lambda_j(U_m)<\lambda_k(U_m)$ となるので $j<k$ が言える。

図 5.4: $j$-不連続波と $k$-不連続波
\includegraphics[height=0.2\textheight]{relation_ss.eps}
図 5.5: $j$-膨張波と $k$-膨張波
\includegraphics[height=0.2\textheight]{relation_rr.eps}
$U_m$ をはさんで $j$-不連続波 (衝撃波、または接触不連続) の右に $k$-不連続波がある場合 (図 5.4) は、 $s_j<s_k$ であるが、衝撃波と接触不連続のいずれの場合も、

\begin{displaymath}
s_j\geq\lambda_j(U_m),
\hspace{1zw}
s_k\leq\lambda_k(U_m)
\end{displaymath}

が成り立つので、 $\lambda_j(U_m)<\lambda_k(U_m)$ となり $j<k$ が言える。

$U_m$ をはさんで $j$-膨張波と $k$-膨張波が並んでいる場合 (図 5.5) は、 $U_m$ に接する波の端の部分を見れば

\begin{displaymath}
\lambda_j(U_m)<\lambda_k(U_m)
\end{displaymath}

であるから $j<k$ となる。

よって、いずれの場合も同じ始点を持つ 2 つの波が並ぶ場合は、 必ず $j<k$ が成り立つことがわかる。よって、 考えられる配置は、 左から 1,2,...,$N$ という順の特性方向の波のみで、 その間に定数ベクトルが並ぶことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2018-08-01