3.5 オイラー座標系の理想気体の場合の例
ここでは、2.4, 2.5 節で紹介した、
オイラー座標系での理想気体の保存則方程式系 (2.10), (2.15), (2.16)
に対する固有値、固有ベクトル、リーマン不変量、膨張波解を計算する。
まず、
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(3.31) |
を扱うが、そのために で考えても、
で考えても、それらには本質的な違いはないことを
まず示す。
命題 3.2
準線形方程式系 (3.3) が
(
) によって
|
(3.32) |
と変換されるとき、(3.13) に
対する固有値 , 左右の固有ベクトル
, , -リーマン不変量 は、
以下のように得られる:
また、
が成り立ち、よって線形退化性、真性非線形性もこの変換で不変である。
証明
(3.3) に を代入すると
より、(3.13) の は
となる。よって の固有値は
であり、
固有ベクトルは
より、
,
となる。
を (3.3) の
-リーマン不変量とし、 とすると、
となるので、 が -リーマン不変量となる。
また、
となるので、
(3.3) と (3.13)
の線形退化性、真性非線形性も変わらない。
この命題 3.2 より、
(3.12) を の式に直して考えてもよい
ので、それで考える。
(3.12) の第 1 式、第 2 式より、
となるので に関する方程式は
となる。第 3 式は
より、
となるので、結局
の方程式
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(3.33) |
が得られる。この場合、 は
となる。
より、固有値は
固有ベクトルは
と
とればよいので、
となる (これらは命題 3.2 の にあたる)。
, なので、
となり、
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(3.34) |
となるので 1-特性方向、3-特性方向は真性非線形である。
一方、
より
であるので、2-特性方向は線形退化となる。
よって、2-特性方向には膨張波解は存在しない。
次にリーマン不変量を求める。
1-リーマン不変量は、
となるので、微分方程式 ( の積分曲線を与える方程式)
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(3.35) |
を解くと、
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(3.36) |
となる。よって、
|
(3.37) |
より
となるので、よって
|
(3.38) |
となる。
Rimann 不変量はこの積分曲線 (3.17), (3.19) 上不変で
となるものだから、
(3.17) で を消去すると、
より、
となるので、
が一つの 1-リーマン不変量である。
また、(3.18), (3.19) より
となるので、 がもうひとつの 1-リーマン不変量となる。
とすると、
であるから、この 2 つのリーマン不変量に を加えると、
この
は相空間 上で
は 1 対 1 に対応する。
同様に、3-リーマン不変量の場合は、
(3.17) と
とより、 と が 3-リーマン不変量であり、
なので、
と は 1 対 1 に対応する。
2-リーマン不変量は、
より、, が 2-リーマン不変量であり、
同様に をつけ加えると と 1 対 1 に対応する
(この場合は 自身になる)。
1-膨張波曲線 は、
を満たしながら
の増加方向に進む。
(3.16) より、
となるので、 の減少する方向が の伸びる方向。
よって、 で、
となるので、結局 は、
またはパラメータ表示により、
|
(3.39) |
と表される。
ここで、 とすれば で、丁度
となる。
また、1-膨張波 は、(3.8) より
を満たす必要があるので、
によるパラメータ表示の式を代入すれば、
となるので、
より
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(3.40) |
となる。これを、(3.20) () に代入すれば、
1-膨張波解を の式で表すことができることになる。
容易にわかる通り、 は の一次式になる。より詳しく見れば、
のようになる。
図 3.4:
ある に対する膨張波解のグラフ
|
同様にして、3-膨張波曲線 は、
またはパラメータ表示により
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(3.41) |
と表される。
こちらは、 ()
でそのまま
となり、
となるので、
を (3.22) () に代入すれば 3-膨張波を で表せる。
この場合も は の一次式であり、
となる。
竹野茂治@新潟工科大学
2018-08-01