4 逆関数

次は、解の逆関数に関係する関数 (9) を 少し簡単に見てみることにする。

まず、地球が均質である (2) の場合を考えると、

\begin{displaymath}
G(r) = \int_0^r g(u)du = \frac{r^2}{2R}g_0,
\hspace{1zw}G_1(r) = G(R)-G(r) = \frac{g_0}{2R}(R^2-r^2)
\end{displaymath}

であるから、この場合 (9) は
\begin{displaymath}
H(y)
=
\int_y^R \sqrt{\frac{G_1(f)}{k_1^2f^2-G_1(f)}} \fra...
...
=
\int_{y^2/R^2}^1 \sqrt{\frac{1-u}{k_2^2u-1}} \frac{du}{2u}
\end{displaymath}

となる。ここで、 $k_2^2 = 1+2Rk_1^2/g_0$ ($>1$), $f=R\sqrt{u}$ とした。

この最後の式からわかるが、$r_1=R/k_2$ とすれば $H(y)$ はこの場合 $r_1<y<R$ に対して値を持ち、$y$ に関して単調減少で、

\begin{displaymath}
H(R)=0,
\hspace{1zw}
H(r_1+0) <\infty
\end{displaymath}

となる。この $H$ は実際に積分できて、
\begin{displaymath}
\sqrt{\frac{1-u}{k_2^2u-1}} = s
\end{displaymath}

とすると
\begin{displaymath}
\frac{1-u}{k_2^2u-1} = s^2,
\hspace{1zw}
1-u = k_2^2s^2u-s^2,
\hspace{1zw}
u=\frac{1+s^2}{1+k_2^2s^2}
\end{displaymath}

で、よって
\begin{eqnarray*}du
&=&
\frac{2s(1+k_2^2s^2)-2k_2^2s(1+s^2)}{(1+k_2^2s^2)^2} ds
 =\
- \frac{2(k_2^2-1)s}{(1+k_2^2s^2)^2} ds\end{eqnarray*}


なので、
$\displaystyle H(y)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \int_0^{\sqrt{(R^2-y^2)/(k_2^2y^2-R^2)}}
s\cdot \frac{2(k_2^2-1)s}{(1+k_2^2s^2)^2}
\times\frac{1+k_2^2s^2}{2(1+s^2)} ds$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \int_0^{\sqrt{(R^2-y^2)/(k_2^2y^2-R^2)}}
\frac{(k_2^2-1)s^2}{(1+k_2^2s^2)(1+s^2)} ds$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \int_0^{\sqrt{(R^2-y^2)/(k_2^2y^2-R^2)}}
\left(\frac{1}{1+s^2}-\frac{1}{1+k_2^2s^2}\right)ds$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \left[\arctan s-\frac{1}{k_2}\arctan k_2 s
\right]_0^{\sqrt{(R^2-y^2)/(k_2^2y^2-R^2)}}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \arctan\sqrt{\frac{R^2-y^2}{k_2^2y^2-R^2}}
-\frac{1}{k_2}\arctan k_2\sqrt{\frac{R^2-y^2}{k_2^2y^2-R^2}}$ (10)

となる。よって、
\begin{displaymath}
H(r_1+0)
=
H\left(\frac{R}{k_1}+0\right)
= \lim_{s\righ...
...tan k_2 s\right\}}
= \frac{\pi}{2}\left(1-\frac{1}{k_2}\right)\end{displaymath} (11)

となる。 $H(y)$ の導関数はそのまま (9) の 被積分関数の $(-1)$ 倍なので、$H(y)$ は単調減少関数で、
\begin{displaymath}
H'(R-0)=0,
\hspace{1zw}
H'(r_1+0)=-\infty
\end{displaymath}

であることがわかる。 よって、$H(y)$$[r_1,R]$ から $[0,\pi(1-1/k_2)/2]$ への 1 対 1 の 関数で、その逆関数が存在する。これによって、$f$ が得られることになる。

一般の $g(r)$ の場合も、$g(r)$ は単調増加関数で $g(0)=0$ だから、 $G(r)$$G(0)=0$ で単調増加な関数になっている。 よって $k_1^2r^2 - G_1(r)$$r$ に関して増加関数で、 $r=0$ では $-G(R)<0$$r=R$ では $k_1^2R^2>0$ となるから、 $0<r_1<R$

\begin{displaymath}
k_1^2r_1^2 - G_1(r_1) = 0\end{displaymath} (12)

となる $r_1=r_1(k_1)$ がただひとつ存在し、 $H(y)$$r_1<y<R$ で存在することがわかる。 なお、この $r_1$$k_1$ から決まるが、 逆に (12) から
\begin{displaymath}
k_1 = \frac{\sqrt{G_1(r_1)}}{r_1}\end{displaymath} (13)

により、$r_1$ から $k_1$ が決まると考えることもできる。

(9) より $H'(r_1+0)=-\infty$ であるが、ロピタルの定理より、

\begin{displaymath}
\lim_{r\rightarrow r_1}\frac{k_1^2r^2-G_1(r)}{r-r_1}
= 2k_1r_1+g(r_1)>0
\end{displaymath}

なので、(9) は $r\rightarrow r_1+0$ でも積分が収束し、 $H(r_1+0)<\infty$ となることがわかる (図 3)。

図 3: $H(y)$
\includegraphics[width=6cm]{fig-cyc3-H.eps}
図 4:$f(\theta )$
\includegraphics[width=10cm]{fig-cyc3-f.eps}

$H(y)$ のさらなる性質はまた後で調べる。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年2月24日