4.2 例 2

次に、(5) の応用例を一つ紹介する。

$n$ 個の $m$ 次元数ベクトル $\mbox{\boldmath$a$}_j$ ( $j=1,2,\ldots,n$, $n\leq m$) が、 単位ベクトルで、互いに垂直であるとき、それらの内積は

$\displaystyle \mbox{\boldmath$a$}_i\mathop{・}\mbox{\boldmath$a$}_j
=\left\{\beg...
...ll}
0 & (\mbox{$i\neq j$\ のとき})\\
1 & (\mbox{$i=j$\ のとき})\end{array}\right.$

となる。なお、そのような $\{\mbox{\boldmath$a$}_j;\hspace{0.5zw}j=1,2,\ldots,n\}$ の組は、 $n\leq m$ でなければ取ることはできない。 このとき、それを並べた行列

$\displaystyle A = [\mbox{\boldmath$a$}_1\ \mbox{\boldmath$a$}_2\ \cdots\ \mbox{\boldmath$a$}_n]
$

$m\times n$ 行列となるが、$\,{}^T\!{A}A$ は (5) により、

$\displaystyle \,{}^T\!{A}A
=
\left[\begin{array}{c}{\,{}^T\!{\mbox{\boldmath$a...
..._j]_{n,n}
=
[\mbox{\boldmath$a$}_i\mathop{・}\mbox{\boldmath$a$}_j]_{n,n}
= E_n
$

となり、$n$ 次の単位行列になる。

特に、$n=m$ の場合は、 $\,{}^T\!{A}=A^{-1}$ となり、$A$ は直交行列となる。 すなわち、$n$ 個の互いに垂直な $n$ 次元の単位ベクトルを列ベクトルとする $n$ 次の正方行列は直交行列となるし、逆に直交行列の列ベクトルは、 互いに垂直な単位ベクトルとなる。

竹野茂治@新潟工科大学
2021-09-10