next up previous
Next: 4 半線形方程式の解の爆発 Up: 非線形偏微分方程式入門 1 Previous: 2 特性曲線 (PDF : pdetutor.pdf)


3 より一般の方程式と特性曲線

2 節で取り上げた特性曲線 $x=at+x_0$ が有効に働いたのは、こ の直線が

\begin{displaymath}
\frac{dx}{dt}=a
\end{displaymath}

という性質を持ち、その値が方程式 (7) の $u_x$ の係数に 等しかったためであることが、(10) の計算によりわかる。

よって、より一般の 1 階線形偏微分方程式

\begin{displaymath}
u_t+\alpha(t,x)u_x=\beta(t,x)\end{displaymath} (11)

に対して、常微分方程式
\begin{displaymath}
\frac{d x}{d t}=\alpha(t,x)\end{displaymath} (12)

を満たす関数 $x=x(t)$ のことを、通常方程式 (11) の特性 曲線と呼んでいる。(7) の場合にはこの方程式は

\begin{displaymath}
\frac{dx}{dt}=a
\end{displaymath}

となるので確かに $x=at+$(定数) となる。

$t=0$$x(0)=x_0$ となる (12) の解は、 $\alpha(t,x)$ が通常の連続な関数であれば確かに存在する。 ここで、``存在する'' という言葉の意味は、例えば、$0\leq t\leq 1$ の 範囲で $\alpha(t,x)$ が連続で、$\vert\alpha(t,x)\vert$ の最大値が有限な値な らば、どんな $x_0$ に対しても、$x(0)=x_0$ となる (12) の解は、$0\leq t\leq 1$ の範囲内では無限大に 発散するようなことは起こらない、という意味である。

図 6: 発散する解のグラフ
\includegraphics{image/blowup.eps}

単に、発散せずに解が伸びるという意味であり、(12) の 解が、簡単な式で表されるという意味ではない。

このことは、特性曲線の集まりが $(t,x)$ 平面の領域を埋め尽くすということ を意味する。

さらに、$\alpha(t,x)$ が通常の滑らかな関数、もう少し詳しくいうと $\alpha_x(t,x)$ が連続な関数ならば、$x(0)=x_0$ となる (12) の解は、ただ一つしかないことが知られている。 これは、特性曲線同士が交わることはないことを意味する。

これらの性質により、 方程式 (11) についても、2 節と同様の方法で 特性曲線を用いて解を求めることができる。さらに、方程式の右辺の $\beta(t,x)$ の部分に $u$ が含まれて $\beta(t,x,u)$ のような形であって も同じ方法で解を求めることができる。

一般的な方法の説明はわずらわしいので、2 つ程例を上げておくのみとする。


例 1

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{ll}
u_t+2tu_x=t+x & (t>0,-\infty<x<\i...
...rk ),\\
u(0,x)=f(x) & (-\infty<x<\infty)
\end{array}\right. \end{displaymath}

この方程式の場合、特性曲線を与える方程式は

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{l}
\displaystyle \frac{d x}{d t}=2t \hspace{1zw}(t>0), \\ [1zh]
x(0)=x_0
\end{array}\right. \end{displaymath}

であるので、これを解いて $x=t^2+x_0$. この曲線に沿った $u$ の変化を調 べると

\begin{eqnarray*}
\frac{d }{d t}u(t,t^2+x_0) & = & \frac{\partial u}{\partial t...
..._0} \\
& = & \left. (x+t)\right\vert _{x=t^2+x_0} = t^2+t+x_0
\end{eqnarray*}



より、この両辺を $0$ から $t$ まで積分して

\begin{displaymath}
u(t,t^2+x_0) - u(0,x_0) = \int_0^t(s^2+s+x_0)\ ds
=\frac{t^3}{3}+\frac{t^2}{2}+x_0t
\end{displaymath}

よって

\begin{displaymath}
u(t,t^2+x_0)=\frac{t^3}{3}+\frac{t^2}{2}+x_0t+u(0,x_0)
=\frac{t^3}{3}+\frac{t^2}{2}+x_0t+f(x_0)
\end{displaymath}

となる。$x=t^2+x_0$ とすると $x_0=x-t^2$ なのでこれを代入して

\begin{displaymath}
u(t,x)=\frac{t^3}{3}+\frac{t^2}{2}+(x-t^2)t+f(x-t^2)
=-\frac{2}{3}t^3+\frac{t^2}{2}+xt+f(x-t^2)
\end{displaymath}

が得られる。

図 7: 特性曲線 $x=t^2+x_0$
\includegraphics{image/char3.eps}



例 2

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{ll}
u_t+xu_x=tu+e^t & (t>0,-\infty<x<\infty),\\
u(0,x)=f(x) & (-\infty<x<\infty)
\end{array}\right. \end{displaymath}

特性曲線は

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{l}
\displaystyle \frac{d x}{d t}=x \hspace{1zw}(t>0), \\ [1zh]
x(0)=x_0
\end{array}\right. \end{displaymath}

より (変数分離形)、$x=x_0e^t$ であることがわかる。これに沿って

\begin{eqnarray*}
\frac{d }{d t}u(t,x_0e^t) & = & u_t(t,x_0e^t)+u_x(t,x_0e^t)x_...
... = & \left. (tu+e^t)\right\vert _{x=x_0e^t}
= tu(t,x_0e^t)+e^t
\end{eqnarray*}



となるので、 $v(t)=u(t,x_0e^t)$ とすると $v=v(t)$

\begin{displaymath}
\frac{d v}{d t}=tv+e^t
\end{displaymath}

の、非斉次線形常微分方程式を満たす。よってこれを解いて

\begin{displaymath}
v(t)=e^{t^2/2}\int_0^t e^{s-s^2/2}ds + v(0)e^{t^2/2},
\end{displaymath}

すなわち

\begin{displaymath}
u(t,x_0e^t)=e^{t^2/2}\int_0^t e^{s-s^2/2}ds + u(0,x_0)e^{t^2/2}
=e^{t^2/2}\int_0^t e^{s-s^2/2}ds + f(x_0)e^{t^2/2}
\end{displaymath}

が得られる。$x=x_0e^t$ より $x_0=xe^{-t}$ だから結局

\begin{displaymath}
u(t,x)=e^{t^2/2}\int_0^t e^{s-s^2/2}ds + f(xe^{-t})e^{t^2/2}
\end{displaymath}

となる。



next up previous
Next: 4 半線形方程式の解の爆発 Up: 非線形偏微分方程式入門 1 Previous: 2 特性曲線
Shigeharu TAKENO
2001年 9月 21日