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1 1 次元波動方程式と移流方程式

2 階の線形偏微分方程式
\begin{displaymath}
u_{tt}-a^2 u_{xx}=0 \hspace{1zw}(u=u(t,x),\ a\mbox{ は正の定数})\end{displaymath} (1)

は、上下に小さく運動する弦の振動などをあらわす方程式で、1 次元波動 方程式と呼ばれる。弦の振動の場合は $t$ は時刻、$x$ は場所、$u$ は 弦の高さを意味する。

図 1: 弦の振動
\includegraphics[width=\textwidth]{image/string.eps}

ただし、大きい振幅に対しては、この方程式を満たす関数と物理現象とは 必ずしも対応しない。それはこの方程式をどのようにして導くかを見れば わかる。方程式の導出については [8], [11] などを 参照せよ。

今、偏微分を微分演算子を用いて

\begin{displaymath}
D_t=\frac{\partial}{\partial t},\
D_x=\frac{\partial}{\partial x}
\end{displaymath}

のように書くことにすると (1) は

\begin{displaymath}
(D_t^2 - a^2 D_x^2)u = 0
\end{displaymath}

と書け、$a$ は定数なので、微分演算子に対して成り立つ公式

\begin{displaymath}
D_t^2 - a^2 D_x^2 = (D_t - aD_x)(D_t + aD_x)
=(D_t + aD_x)(D_t - aD_x)
\end{displaymath}

により、

\begin{displaymath}
(D_t - aD_x)(D_t + aD_x) u =(D_t + aD_x)(D_t - aD_x) u = 0
\end{displaymath}

が成り立つ。この式から明らかに、1 階の偏微分方程式
\begin{displaymath}
(D_t+a D_x)u=0\end{displaymath} (2)

または
\begin{displaymath}
(D_t-a D_x)u=0\end{displaymath} (3)

を満たす関数 $u(t,x)$ は (1) の解であることがわかる。 この逆、すなわち (1) を満たせば (2) または (3) を満たす、ということはもちろん成り立たない。

この (2), (3) はそれぞれ次のような 解を持つ。

$\displaystyle u(t,x)$ $\textstyle =$ $\displaystyle f(x-at)$ (4)
$\displaystyle u(t,x)$ $\textstyle =$ $\displaystyle g(x+at)$ (5)

ただし、$f(x)$, $g(x)$ は滑らかな任意の関数である。これらがそれぞれ (2), (3) を満たすことは偏微分 の計算により容易に確かめられる。

今、(4) を $x$ の関数と考えると、この関数は $f(x)$ のグラフを右に $at$ 平行移動したものになっている。つまり、 グラフの形は変わらずに、右に 1 秒当たり ($t$ の単位を秒とすれば) $a$ cm だけ ($x$ の単位を cm とすれば) 平行移動したことになり、 すなわち、速度 $a$ [cm/秒] で平行移動している、とみなすことが できる。これは右へ進む ``波'' と見ることができる。

図 2: 右へ進む波
\includegraphics[width=\textwidth]{image/move.eps}

(5) は逆方向に $g(x)$ のグラフを平行移動した 形の関数になっていて、すなわち $-a$ [cm/秒] で進む ``波'' である。

元の方程式 (1) は線形であり、解のいくつかを加え合 わせたものもまた解となるので、よって (1) は

\begin{displaymath}
u(t,x)=f(x-at)+g(x+at)\end{displaymath} (6)

という形の解を持つ。

実は、逆に (1) の解は必ず (6) の形に なることが知られている (これについては [8], [11] などを参照)。

2 階の方程式の解が、常に 1 階の方程式の解から得られるとは限らないが、 1 次元の波動方程式の場合は (1) と、 (2) や (3) の形の方程式

\begin{displaymath}
u_t+a u_x=0 \hspace{1zw}(\mbox{または } u_t-a u_x =0)
\end{displaymath}

には深いつながりがあることがわかる。この方程式は 波動現象を解析する上で基本となるものであり、移流方程式 と呼ばれている。

以下、この 1 階の移流方程式を基点にして、線形、非線形の波動現象を 考えてみる。


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Shigeharu TAKENO
2001年 9月 21日