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7 Tartar 方程式の解法

単独の保存則方程式の場合、任意の $C^2$ 関数 $\eta (u)$ に対し

\begin{displaymath}
q(u)=\int^u \eta'(v)f'(v)dv
\end{displaymath}

とすれば (8) により $(\eta(u),q(u))$ は エントロピー対になるから、非常にたくさんのエントロピー対があることになる。 これを使って Tartar 方程式 (10) を解くことにする。 以下で述べる方法は、Tartar ([13]), Chen-Lu ([24]) らによる。Chen ([22]) も参照のこと。

まず、 $(\hat{\eta}(u),\hat{q}(u))=(u,f(u))$ とする ($(u,f(u))$ もエントロピー対の自明な一つ)。 $\bar{u}$, $\bar{f}$$(x,t)$ の関数で、Young 測度 $\nu=\nu(u)$ で の積分に関しては定数とみれるので

\begin{eqnarray*}
\lefteqn{\overline{\eta\hat{q}-\hat{\eta}q}
-(\bar{\eta}\bar...
...& = &
\langle\nu,\eta(u)(f(u)-\bar{f})-(u-\bar{u})q(u)\rangle
\end{eqnarray*}



と変形できる。よって、
\begin{displaymath}
\langle\nu,\eta(u)(f(u)-\bar{f})-(u-\bar{u})q(u)\rangle =0 \hspace{1zw}\mbox{a.e. $(x,t)$}\end{displaymath} (11)

となる。 今、例えばこの $\nu$ に関する被積分関数 $\eta (u)(f(u)-\bar {f})-(u-\bar {u})q(u)$ が、 もし $\eta$, $q$ を適当に選ぶことで

\begin{displaymath}
\eta(u)(f(u)-\bar{f})-(u-\bar{u})q(u)
\left\{\begin{array}{ll}
=0 & (u=\bar{u})\\
<0 & (u\neq\bar{u})\end{array}\right.\end{displaymath}

のようにできるならば、

図 3: $\eta (u)(f(u)-\bar {f})-(u-\bar {u})q(u)$ の理想的なもの
\includegraphics[height=15zh]{just.eps}

(11) から $\mathop{\rm supp}\nu = \{\bar{u}\}$ (一点) であることがわかり、よって $\nu=\delta_{\bar{u}}$ であることになる。

それに似た役割をする $(\eta,q)$ として 単独の保存則方程式の理論で良く用いられる

\begin{displaymath}
\eta(u)=\vert u-\bar{u}\vert,\hspace{1zw}q(u)=\{f(u)-f(\bar{u})\}\mathop{\rm sign}(u-\bar{u})
\end{displaymath}

を取る。

14

ただし、この $(\eta,q)$$u=\bar{u}$ では微分可能ではなく、 よって $C^2$ 級関数でもない。しかし、$C^\infty$ 級関数 $\bar{\eta}_n$ で この $\eta (u)$ を一様に近似することはでき、

図 4: $\eta (u)$$\eta _n(u)$
\includegraphics[height=15zh]{standard.eps}

$q_n(u)=\int^u\eta_n'(v)f'(v)dv$ とすれば $(\eta_n,q_n)$ は (11) を満たし、そして $n\rightarrow\infty$ のときに、Young 測度 $\nu$ の積分に関する Lebesgue 収束定理によりその極限としてこの $(\eta,q)$ に対して (11) が成り立つことが示される。


この $(\eta,q)$ に対し、

\begin{eqnarray*}
\lefteqn{\eta(u)(f(u)-\bar{f})-(u-\bar{u})q(u)}\\
& = & (f(...
...\{f(u)-f(\bar{u})\}
=\vert u-\bar{u}\vert\{f(\bar{u})-\bar{f}\}
\end{eqnarray*}



となり、 $f(\bar{u})-\bar{f}$$u$ に関しては定数なので (11) は

\begin{displaymath}
\langle\nu,\vert u-\bar{u}\vert\{f(\bar{u})-\bar{f}\}\rangle...
...angle\nu,\vert u-\bar{u}\vert\rangle =0\hspace{1zw}\mbox{a.e.}
\end{displaymath}

となる。よって、
$f(\bar{u})=\bar{f}$ または $\langle\nu,\vert u-\bar{u}\vert\rangle =0$ a.e.
すなわち
$f(\bar{u})=\bar{f}$ または $\nu=\delta_{\bar{u}}$ a.e.
が言えたことになる。

そして、 $\nu=\delta_{\bar{u}}$ ならばもちろん $f(\bar{u})=\bar{f}$ で もあるので、 よってどちらにしても元の目標であった (7) が言えたことになり、 $\bar{u}$ が弱解であることが示された。

ただし、エントロピー条件、または

\begin{displaymath}
u^{\varepsilon ''}\rightarrow\bar{u}\hspace{1zw}\mbox{a.e.}
\end{displaymath}

を示すにはやはり $\nu=\delta_{\bar{u}}$ であることを示す必要がある。 よって以下でそれを考察する。

今度は

\begin{displaymath}
\eta(u)=f(u)-f(\bar{u}),\hspace{1zw}q(u)=\int_{\bar{u}}^u(f'(v))^2dv
\end{displaymath}

として (11) に代入してみる。この場合

\begin{displaymath}
H(u)=\eta(u)(f(u)-\bar{f})-(u-\bar{u})q(u)
\end{displaymath}

とおくと、 $f(\bar{u})=\bar{f}$ なので

\begin{displaymath}
H(u)=(f(u)-f(\bar{u}))^2-(u-\bar{u})\int_{\bar{u}}^u(f'(v))^2dv
\end{displaymath}

となるが、Schwarz の不等式により

\begin{displaymath}
\vert f(u)-f(\bar{u})\vert=\left\vert\int_{\bar{u}}^uf'(v)dv...
...-\bar{u}\vert}\left\vert\int_{\bar{u}}^u(f'(v))^2dv\right\vert
\end{displaymath}

となるので $H(u)\leq 0$ で、その等号が成立するのは $u=\bar{u}$ か または $u$$\bar{u}$ との間で $f'(u)$ が定数である場合、となる。

図 5: 部分的に線形な $f(u)$
\includegraphics[height=15zh]{linear.eps}

この場合、(11) の

\begin{displaymath}
\langle\nu,H(u)\rangle =0
\end{displaymath}

により $\mathop{\rm supp}\nu$$H(u)$ は 0 でなくてはならず、よって $\mathop{\rm supp}\nu$ の凸包の上で $f'(u)$ が定数でなければならないことになる。

故に、例えば $f(u)=u^2/2$ (Burgers 方程式) のように $f''(u)>0$ を満たす 単独保存則方程式の場合は $\mathop{\rm supp}\nu$ は 1 点になり、結局 $\nu=\delta_{\bar{u}}$ であることが言える。

15

凸ではなく、実際に一部分で線形退化しているような $f(u)$ (図 5) に対しては Tartar 方程式 (10) からは何も得られない。 例えば $f(u)$ が区間 $(a,b)$ 上で $f'(u)\equiv c_0$ (定数) であるとする。

このとき、$a\leq u\leq b$ に対して

\begin{eqnarray*}
q(u)
& = & q(a)+\int_a^u\eta'(v)f'(v)dv=q(a)+c_0\int_a^u\eta'(v)dv
=c_0\eta(u)+c_1\\
&& (c_1=q(a)-c_0\eta(a))
\end{eqnarray*}



となり

\begin{displaymath}
\left\vert\begin{array}{ll}\eta&q \hat{\eta}&\hat{q}\end{...
...0\hat{\eta}+c_2\end{array}\right\vert
=c_2\eta-c_1\hat{\eta}
\end{displaymath}

となるので、 $\mathop{\rm supp}\nu\subset[a,b]$ である場合、

\begin{eqnarray*}
\lefteqn{\langle\nu,\left\vert\begin{array}{ll}\eta&q \hat{...
...(\mbox{Young 測度は全測度 1 より $\langle\nu,c_j\rangle =c_j$})
\end{eqnarray*}



となる。すなわち、 $\mathop{\rm supp}\nu\subset[a,b]$ かつ $\langle\nu,1\rangle =1$ である 任意の測度に対し Tartar 方程式が成り立ってしまうことになり、 言い換えると Tartar 方程式 (10) からは Young 測度に関する情報は何も得られないことになる。

つまり、Tartar 方程式は線形の方程式には自明な関係式であり そこからは何も得られないが、非線形性が強い方程式には威力を発揮する、 といった性質のものであることが分かる。

よって、補完測度法によって Tartar 方程式を導く手法は どんな保存則方程式 (系) にも有効なのではなく、 非線形性の弱い線形に退化した方程式などにはあまり有効ではないだろうと 思われる。



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Shigeharu TAKENO
2001年 12月 17日