5 ベッセルの方程式への帰着と境界条件

さて、3 節に戻って、 (10) を満たす $w(x)$ を求めることにする。 それには、方程式 (10) を変数変換して、 ベッセルの微分方程式 (11) に帰着させる。

今、

\begin{displaymath}
w=x^{\alpha}\hat{w}(\hat{x}),
\hspace{1zw}\hat{x}=\gamma x^\beta
\hspace{1zw}(\gamma>0, \beta>0)\end{displaymath} (18)

とすると、
\begin{eqnarray*}w'(x)
&=&
\alpha x^{\alpha-1}\hat{w}+\gamma\beta x^{\alpha+\...
...eta(2\alpha+\beta-1)\hat{x}\hat{w}'
+\beta^2\hat{x}^2\hat{w}''\}\end{eqnarray*}


となるので、これらを (10) に代入して整理すると、
\begin{displaymath}
\hat{x}^2\hat{w}''+\frac{2\alpha+\beta}{\beta}\hat{x}\hat{w}'
+\frac{\alpha^2+\lambda^2 x}{\beta^2}\hat{w}=0\end{displaymath} (19)

が得られる。よって、
\begin{displaymath}
\frac{\lambda^2}{\beta^2}x=\hat{x}^2  (=\gamma^2x^{2\beta})
\end{displaymath}

となるように $\beta=1/2$, $\gamma=2\lambda$ とし、
\begin{displaymath}
\frac{2\alpha+\beta}{\beta}=1
\end{displaymath}

となるように、$\alpha=0$ とすると、 (19) は $\nu=0$ のベッセルの方程式となる。 よって、この $\hat{w}$ は、4 節に述べたように
\begin{displaymath}
\hat{w}=C_3J_0(\hat{x})+C_4Y_0(\hat{x})
\end{displaymath}

と書けるので、元の $w(x)$ に戻すと、
\begin{displaymath}
w(x)=\hat{w}(2\lambda\sqrt{x})
= C_3J_0(2\lambda\sqrt{x})+C_4Y_0(2\lambda\sqrt{x})\end{displaymath} (20)

となる。

この $w(x)$ は、もちろん $x=0$ では有界である必要があるが、 4 節に述べたように $Y_0$$x=0$ で有界ではないので、 $C_4=0$ でなければならない。 よって、$w(x)$$x=0$ での境界条件がないまま (厳密には、「$w(0)$ は有限である」という境界条件によって)、 1 つの任意定数が決定されて、

\begin{displaymath}
w(x)=C_3J_0(2\lambda\sqrt{x})
\end{displaymath}

となる。これを 3 節の $u=v(t)w(x)$ に戻せば、
\begin{displaymath}
u=(A\cos\lambda t+B\sin\lambda t)J_0(2\lambda\sqrt{x})\end{displaymath} (21)

と書ける。

さて、この (21) が、境界条件 (3) を満たすためには、

\begin{displaymath}
J_0(2\lambda\sqrt{L})=0
\end{displaymath}

すなわち、 $2\lambda\sqrt{L}$$J_0(x)$ の零点である必要がある。 よって 4 節の (16) により、$\lambda$
\begin{displaymath}
\lambda=\lambda_j = \frac{\tau_{0,j}}{2\sqrt{L}}
\hspace{1zw}(j=1,2,\ldots)
\end{displaymath}

という離散的な値のいずれかであることになる。

方程式 (8) は線形であるから、 この $\lambda_j$ に対する (21) の重ね合わせ

\begin{displaymath}
u=\sum_{j=1}^\infty (A_j\cos\lambda_j t+B_j\sin\lambda_j t)...
...mbda_j\sqrt{x})
\hspace{1zw}(\lambda_j=\tau_{0,j}/(2\sqrt{L}))\end{displaymath} (22)

も (8) の解となる。 これが初期条件 (2) を満たすとすると
\begin{displaymath}
f(x)=\sum_{j=1}^\infty A_jJ_0(2\lambda_j\sqrt{x}),
\hspace{1zw}
F(x)=\sum_{j=1}^\infty \lambda_j B_jJ_0(2\lambda_j\sqrt{x})\end{displaymath} (23)

となるが、 4 節のフーリエ・ベッセル展開 (17) により
$\displaystyle A_j$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{2}{J_1(\tau_{0,j})^2}\int_0^1\xi f(L\xi^2)J_0(\tau_{0,j}\xi...
...
% &=&
=
\frac{1}{LJ_1(\tau_{0,j})^2}\int_0^Lf(x)J_0(\lambda_j\sqrt{x})dx,$ (24)
$\displaystyle B_j$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{1}{L\lambda_jJ_1(\tau_{0,j})^2}\int_0^LF(x)J_0(\lambda_j\sqrt{x})dx$ (25)

となり、この $A_j$, $B_j$ とフーリエ・ベッセル展開の完全性により、 (23) が確かに $f(x)$, $F(x)$ を表すことがわかる。 よってこの $A_j$, $B_j$ による (22) は、 方程式 (8) の 初期条件 (2) と境界条件 (3) を満たす解となることがわかる。

つまり、$\mu =1$ の場合の方程式 (8) は、 $x=0$ での境界条件 (6) は必要なく 解がちゃんと決定することになり、 これは、$\mu =1/2$ の場合とは状況が異なる。 つまり $x=0$ での境界条件 (6) の必要性は、 方程式 (5) の主要部 (4) のみでは決定せず、 低階の項 $u_x$ の係数に依存するものであることがわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年6月22日