5 錐の重心

3 節の分割・統合の原理で、 多くの一様な密度を持つ平面図形の重心を求めることができることがわかるが、 空間の立体図形で同じことをするには、 平面の三角形と同様に空間の四面体の重心を知る必要がある。 それは、より一般の錐体の重心に対して成り立つ次の命題から求められる。


命題 2

底面が $S$、頂点が A の、密度が一様な錐体に対して、 $S$ の面としての重心を M とするとき、 この錐体の重心 G は線分 AM を 3:1 に内分する点となる。


証明

体積分 (12) の計算により示すこともできるが、 4 節と同様の方法を用いて、 簡単な積分に帰着させることを考える。

4 節の三角形の場合と同様に、 この錐体を底面と平行な面で細かく切り分けると、 それぞれの薄い分割部分は、 底面が $S$ と相似で高さが十分低い (薄い) 柱体とほぼ等しく、 よってその重心は $S$ の重心 M とほぼ相似な位置にあり、 すなわちほぼ線分 AM 上にあることになる。

各分割部分の質量はその断面積にほぼ比例し、それは $S$ に相似であるから、 それは結局 AM 上の A からの距離の 2 乗に比例することになる。

よって、その分割の極限を考えれば、この錐体の重心 G は、 AM 上に A からの距離の 2 乗に比例する線密度を持つ、 線としての重心と等しいことがわかる。

あとは、AM を $x$ 軸上にのせて、 A を原点、M の位置を $x$ 軸上の $h$ ($>0$) とし、 線密度 $\rho(x)$$\rho(x)=ax^2$ $(a>0)$ として (6) の計算をすればよい。

G の座標を $g$ とすれば、(6) より、

\begin{displaymath}
g
=\frac{\displaystyle \int_0^h ax^2\cdot x\,dx}{\displaystyle \int_0^h ax^2\,dx}
=\frac{ah^4/4}{ah^3/3}
=\frac{3}{4}\,h
\end{displaymath}

となり、G は AM を 3:1 に内分する点であることがわかる。


例えば四面体 ABCD の場合は、 $\triangle\mathrm{ABC}$ の重心 M は

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OM}}=\frac{1}{3}(\overrightarrow{\ma...
...A}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}+\overrightarrow{\mathrm{OC}})
\end{displaymath}

であるから、四面体 ABCD の立体としての重心 G は、命題 2 より
\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OG}}
=\frac{\overrightarrow{\mathrm{...
...B}}+\overrightarrow{\mathrm{OC}}+\overrightarrow{\mathrm{OD}})
\end{displaymath}

となり、これは三角形の場合と同様に、 4 頂点 A,B,C,D が同じ質量を持つ場合の質点系の重心に一致することがわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2010年4月23日