6 関数の決定

本節で、任意の正数 $A$ に対して条件 II を満たす正数 $p$ が存在する ような関数 $h(y)$ を決定する。

まず、$A$ の任意性から、1 ではない正数 $A_1$, $A_2$ に対して、 0 でない実数 $p_1$, $p_2$ が存在して、任意の $y$ に対して

  $\displaystyle
h(y) = \frac{1}{A_1}h(y+p_1) = \frac{1}{A_2}h(y+p_2)$ (14)
が成り立つ。よって、(9) より、
  $\displaystyle
h(y) = A_1^{y/p_1}u_1(y) = A_2^{y/p_2}u_2(y)$ (15)
と書け、$u_1$ は周期 $p_1$ を、$u_2$ は周期 $p_2$ を持つ 連続な周期関数となる。 よって、
  $\displaystyle
\left(A_1^{1/p_1}A_2^{-1/p_2}\right)^yu_1(y) = u_2(y)$ (16)
となるが、$u_1$, $u_2$ は連続な周期関数なので有界で、
$\displaystyle A_1^{1/p_1}A_2^{-1/p_2} > 1
$
ならば $y\rightarrow\infty$ を考えれば (18) は $u_1$, そして $u_2$ が恒等的に 0 でなければならず、 よって $h(y)\equiv 0$ となってしまう。
$\displaystyle 0<A_1^{1/p_1}A_2^{-1/p_2} < 1
$
の場合も $y\rightarrow-\infty$ を考えれば $u_1$, $u_2$ が恒等的に 0 となり $h(y)\equiv 0$ しかありえないので、 よって
$\displaystyle A_1^{1/p_1}A_2^{-1/p_2} = 1
$
すなわち
  $\displaystyle
A_1^{1/p_1} = A_2^{1/p_2}$ (17)
となり、そして (18) より任意の $y$ に対し
  $\displaystyle
u_1(y) = u_2(y)$ (18)
が成り立つことになる。(17) より、
$\displaystyle \frac{1}{p_1}\log_e A_1 = \frac{1}{p_2}\log_e A_2
$
よって
  $\displaystyle
\frac{p_2}{p_1} = \frac{\log_e A_2}{\log_e A_1}$ (19)
となるので、$A$ の任意性より、この右辺が無理数に なるように $A_1$, $A_2$ を選ぶことができ、その場合 $p_2/p_1$ は 無理数になり、(18) より $u_1$ は周期 $p_1$, $p_2$ を 持つので、補題 2 より $u_1$ は定数となる。

よって、(15) より $h$

  $\displaystyle
h(y) = C A^{y/p} = CB^y\hspace{1zw}(B>0,\ B\neq 1)$ (20)
の形になることがわかる。

このとき $f(x)$ は、(5), (7) より、

$\displaystyle f(x)$ $\textstyle =$ $\displaystyle xh(\log_e x) = C xB^{\log_e x} = C x^\alpha,$(21)
$\displaystyle \alpha$ $\textstyle =$ $\displaystyle 1 + \log_e B
\hspace{1zw}(\neq 1)$(22)
となるので、結局、任意の正数 $A$ に対して条件 I を満たす 正数 $k$ が存在するような関数は、 2 節で紹介した巾乗 (の定数倍) しか存在しないことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-07-24