2 巾乗の相似性

まず、前節で述べた、放物線の相似性について説明する。

放物線は、形を変えずに平行移動するか上下反転することで、

  $\displaystyle
y=ax^2\hspace{0.5zw}(a>0)$ (1)
のグラフに変えることができる。この関数のグラフは、
  $\displaystyle
y=x^2$ (2)
のグラフを $y$ 方向に $a$ 倍したものになっているが、 $a\neq 1$ であってもこれが (2) と相似になる。 それを以下に示す。 まず、
$\displaystyle f(x) = ax^2
$
とする。 (1) と (2) のグラフが相似ということは、 (1) のグラフを $x$ 方向と $y$ 方向に等しく $k$ 倍 ($k>0$) したものが (2) のグラフに一致するような $k$ が存在する、ということになる。

$y=f(x)$ のグラフを $x$ 方向と $y$ 方向に $k$ 倍すると、それは

$\displaystyle y
= kf\left(\frac{x}{k}\right)
= ka\left(\frac{x}{k}\right)^2
= \frac{a}{k}\,x^2
$
のグラフになるので、$k=a$ とすれば、 これは確かに (2) と一致する。

この性質は、放物線だけでなく、巾乗

  $\displaystyle
f(x) = x^\alpha\hspace{0.5zw}(x>0,\ \alpha\neq 1)$ (3)
(およびその定数倍) も同様の性質、 すなわちグラフの $y$ 方向への任意の拡大が、 元のグラフに相似になるという性質を持つ。 (3) のグラフを $y$ 方向に $A$ 倍 ($A>0$) して、 $x$,$y$ 方向に $k$ 倍 ($k>0$) すると、
$\displaystyle y
= kAf\left(\frac{x}{k}\right)
= Ak\left(\frac{x}{k}\right)^\alpha
= Ak^{1-\alpha}x^\alpha
$
となるので、 $Ak^{1-\alpha}=1$, すなわち
$\displaystyle k=(A^{-1})^{1/(1-\alpha)} = A^{1/(\alpha-1)}
$
とすれば、すべての $x>0$ に対して
  $\displaystyle
kAf\left(\frac{x}{k}\right) = f(x)$ (4)
となり、$y$ 方向の $A$ 倍が元のグラフと相似になることがわかる。

なお、これは $\alpha=1$、すなわち $y=x$ については言えず、 $y=Ax$ は相似拡大しても $y=Ax$ のままなので、$y=x$ に相似にはならない。

本稿では、(4) の性質を持つ $f(x)$ が、 $x^\alpha$ ($\alpha\neq 1$) の定数倍以外にもあるかどうかについて考える。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-07-24