3 問題設定と問題の変形

まず、問題を明確に設定する。

$x>0$ で定義された連続関数 $f(x)$ で、次の性質を持つものを求めることを 目標とする:

「任意の正数 $A$ に対して、 『すべての $x>0$ に対して (4) を満たす』 ような正数 $k$ ($A$ には依存するが $x$ にはよらない) を取ることができる」
この『』の部分を「条件 I」と呼ぶことにする。

なお、当然 $f(x)\equiv 0$ は常に (4) を満たすが、 ここではそれ以外の関数を考える。

この問題は、このままでも考察できるが、少し変形して考察しやすくする。 まず、

  $\displaystyle
f(x) = xg(x)$ (5)
とすると、(4) は、
$\displaystyle kA\,\frac{x}{k}\,g\left(\frac{x}{k}\right) = xg(x)
$
より、
  $\displaystyle
Ag\left(\frac{x}{k}\right)=g(x)$ (6)
となり、さらに $x>0$, $k>0$ より、
  $\displaystyle
g(x) = h(\log_e x)\hspace{1zw}(h(y)=g(e^y))$ (7)
とすると、(6) は
$\displaystyle Ag\left(\frac{x}{k}\right)
=Ah\left(\log_e\frac{x}{k}\right)
=Ah\left(\log_e x-\log_e k\right)
=h(\log_e x)
$
となるので、$p=\log_e k$, $\log_e x-p = y$ とすれば、 「条件 I」は、「すべての実数 $y$ に対して
  $\displaystyle
Ah(y) = h(y+p)$ (8)
が成り立つこと」に変わる。この条件を「条件 II」と呼ぶことにし、 以後しばらくこの条件 II の形で考える。すなわち、
「任意の正数 $A$ に対して、 条件 II を満たすような実数 $p$ ($A$ には 依存するが $y$ にはよらない) を取ることができる」
ような連続で恒等的には 0 ではない $h(y)$ は何か、 を考えることにする。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-07-24