2 巾乗と指数関数の積の積分

本節では、$x^n$$e^{\alpha x}$ の積の積分
  $\displaystyle
I_1(x; n, \alpha) = \int x^ne^{\alpha x}dx
\hspace{1zw}(n\geq 0: \mbox{ 整数},\ \alpha\neq 0)$ (1)
を考える。まず、簡単な置換により、 この積分は $\alpha = 1$ の場合に帰着できる。$\alpha x=t$ により、
  $\displaystyle
I_1(x; n, \alpha)
= \int \left(\frac{t}{\alpha}\right)^ne^t\fr...
...
= \frac{1}{\alpha^{n+1}}I_1(t;n,1)
= \frac{1}{\alpha^{n+1}}I_1(\alpha x;n,1)$ (2)
となるからである。よってとりあえず、$\alpha = 1$ の場合を考える。

部分積分

  $\displaystyle
\int f'gdx = fg - \int fg'dx$ (3)
により $I_1(x;n,1)$ は、
$\displaystyle I_1(x;n,1)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \int x^ne^x dx
\ = \
\int x^n(e^x)' dx
\ = \
x^ne^x - \int (x^n)'e^x dx$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle x^ne^x - nI_1(x;n-1,1)$ (4)

$n$ を一つ下げた積分に帰着でき、 これを繰り返すことで最終的に

$\displaystyle I_1(x;0,1) = \int e^xdx = e^x +C
$

に帰着でき、積分が終わる、というのが通常の大まかな方針である。

一方、(4) の式の両辺を $(-1)^n/n!$ 倍すれば、

\begin{eqnarray*}\frac{(-1)^n}{n!}I_1(x;n,1)
&=&
\frac{(-1)^n}{n!}x^ne^x - \fr...
...
\frac{(-1)^n}{n!}x^ne^x + \frac{(-1)^{n-1}}{(n-1)!}I_1(x;n-1,1)\end{eqnarray*}

となり、
  $\displaystyle
\left\{\begin{array}{l}
\displaystyle \frac{(-1)^n}{n!}I_1(x;n,...
...-1)^0}{0!}I_1(x;0,1)
= e^x + C = \frac{(-1)^0}{0!}e^x + C
\end{array}\right.$ (5)
と書けるので、この階差数列から、
  $\displaystyle
\frac{(-1)^n}{n!}I_1(x;n,1)
= \sum_{k=0}^n \frac{(-1)^k}{k!}x^ke^x + C$ (6)
という一般式が得られる。 この式の右辺は、$e^{-x}$$n$ 次のマクローリン展開式と、$e^x$ との 積の形になっているが、それについては、5 節で 改めて紹介する。

また、(2) を考えれば、

$\displaystyle I_1(x;n,\alpha)
= \frac{1}{\alpha^{n+1}}I_1(\alpha x;n,1)
= \fra...
...1)^n}{\alpha^{n+1}}
\sum_{k=0}^n \frac{(-1)^k}{k!}(\alpha x)^ke^{\alpha x} + C
$

となるので、
  $\displaystyle
\frac{(-\alpha)^n}{n!}I_1(x;n,\alpha)
= \frac{1}{\alpha}\sum_{k=0}^n \frac{(-\alpha)^k}{k!}x^ke^{\alpha x} + C$ (7)
となっていることがわかる。

なお、(6) は、積の微分から得ることもできる。 今、 $f_1(x;n,\alpha)$

  $\displaystyle
f_1(x;n,\alpha)
= \frac{(-\alpha)^n}{n!}x^ne^{\alpha x}
= \frac{(-\alpha x)^n}{n!}e^{\alpha x}
\hspace{1zw}(= f_1(\alpha x;n,1))$ (8)
とすると、

\begin{eqnarray*}f_1'(x;k,1)
&=&
\left\{\frac{(-1)^k}{k!}x^ke^x\right\}'
\ =...
...(x;k,1),
\\
f_1'(x;0,1)
&=&
(e^x)' \ =\ e^x \ =\ f_1(x;0,1)\end{eqnarray*}

なので、$k=1$ から $k=n$ までの和に $f_1'(x;0,1)=f_1(x;0,1)$ を 追加すれば、

\begin{eqnarray*}\sum_{k=0}^n f_1'(x;k,1)
&=&
f_1'(x;0,1) + \sum_{k=1}^n f_1'(...
...x;0,1) + \sum_{k=1}^n(f_1(x;k,1)-f_1(x;k-1,1))
\ =\
f_1(x;n,1)\end{eqnarray*}

となって、これを積分すれば、
  $\displaystyle
\int f_1(x;n,1)dx = \sum_{k=0}^n f_1(x;k,1) + C$ (9)
が得られる。 これが丁度 (6) になっている。

同様のことを $f_1(x;n,\alpha)$ に行えば、以下のようになる。

\begin{eqnarray*}f_1'(x;k,\alpha)
&=&
\frac{(-\alpha)^k}{k!}(kx^{k-1}e^{\alph...
... x})'
\ =\
\alpha e^{\alpha x}
\ =\
\alpha f_1(x;0,\alpha)\end{eqnarray*}

なので、

$\displaystyle \sum_{k=0}^n f_1'(x;k,\alpha) = \alpha f_1(x;n,\alpha)
$

となり、よって、これを積分すれば
  $\displaystyle
\int f_1(x;n,\alpha) dx = \frac{1}{\alpha} \sum_{k=0}^n f_1(x;k,\alpha) + C$ (10)
が得られる。これが (7) である。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-03-12