4 一般の平面曲線の場合

ここまでは、平面曲線が $y=f(x)$ と表されている場合を考えてきたが、 一般の平面曲線はパラメータ $t$ により $x=x(t)$, $y=y(t)$ と表される。 この場合曲率半径 $R$ がどのような式になるかを考えてみる。

なお、$f(x)$, $g(x)$$x$ での微分の記号の $\mbox{ }'$ と区別するために、 $t$ での微分を $\dot{x}(t)$ のように $\dot{\mbox{ }}$ と表すことにする。 またこの節では、曲線上の点を $\mbox{\boldmath$r$}(t)=(x(t),y(t))$ のように ベクトル関数としての位置ベクトルで表し、ベクトルで議論を進めるが、 ベクトル関数の微分などについてはベクトル解析の本などを参照するといいだろう。

まず、パラメータに対して $\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(t)\neq \mbox{\boldmath$0$}$ であるとする。 これはある意味で曲線がパラメータに対して滑らかに定義されることを意味する。 また、曲率半径を考える方法は 3 節の方法によることにする。

曲線の接線方向のベクトルは $\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(t)$ であるから、 これを反時計回りに 90 度回転したベクトル

\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$\alpha$}(t)=(-\dot{y}(t),\dot{x}(t))\end{displaymath} (15)

がこの曲線の法線方向を表す。

2 階微分 $\ddot{\mbox{\boldmath$r$}}(t)=(\ddot{x}(t),\ddot{y}(t))$ は、 その接線方向のベクトル $\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(t)$ の変化率を意味するから、 これが接線方向よりも左に向いていればこの曲線は $t$ の増加に沿って左に曲がり、 右に向いていれば右に曲がることになる。 つまり、 $\ddot{\mbox{\boldmath$r$}}$ $\mbox{\boldmath$\alpha$}$ のなす角が 90 度より小さいか大きいかでそれがわかることになるので、 結局、内積

\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$\alpha$}\cdot\ddot{\mbox{\boldmath$r$}} = -\dot{y}\ddot{x}+\dot{x}\ddot{y}\end{displaymath} (16)

の値が正であれば左に、負であれば右に曲がることに注意する。

さて、 $\vert\mbox{\boldmath$\alpha$}\vert$ $\vert\dot{\mbox{\boldmath$r$}}\vert$ に等しいので、 法線方向の単位ベクトルは $\pm\mbox{\boldmath$\alpha$}/\vert\dot{\mbox{\boldmath$r$}}\vert$ であり、 よって、$P(x(a),y(a))$ での法線上の点 $S$

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mbox{\rm PS}}=\pm\vert PS\vert\frac{\mbox{\boldmath$\alpha$}(a)}{\vert\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(a)\vert}
\end{displaymath}

と表され、$Q(x(b),y(b))$ での法線上の点 $S$
\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mbox{\rm QS}}=\pm\vert QS\vert\frac{\mbox{\boldmath$\alpha$}(b)}{\vert\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(b)\vert}
\end{displaymath}

と表される。なお、この $\pm$ は曲線の曲がっている方向、 すなわち (16) の内積の符号と同じに取る。 これにより、交点 $S$ は、
\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mbox{\rm OS}}
=\overrightarrow{\mbox{\rm ...
...{\boldmath$\alpha$}(b)}{\vert\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(b)\vert}\end{displaymath} (17)

となり、よって、
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$r$}(a)\pm\vert PS\vert\frac{\mbox{\boldmath$...
...\boldmath$\alpha$}(b)}{\vert\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(b)\vert}
\end{displaymath}

が成り立つことになる。この式と $\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(b)$ との内積を考えると、 $\mbox{\boldmath$\alpha$}$ $\dot{\mbox{\boldmath$r$}}$ は垂直であるから、
\begin{displaymath}
\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(b)\cdot\mbox{\boldmath$r$}(a)
\pm\...
...vert}
=\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(b)\cdot\mbox{\boldmath$r$}(b)
\end{displaymath}

となり、よって、
\begin{displaymath}
\vert PS\vert=
\pm\frac{\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(b)\cdot(...
...ox{\boldmath$\alpha$}(a)}\vert\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(a)\vert\end{displaymath} (18)

と表されることになる。 この式の $b\rightarrow a$ の極限が曲率半径となる。

この式 (18) の分母は、このままでは

\begin{displaymath}
\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(b)\cdot\mbox{\boldmath$\alpha$}(a)...
...ot{\mbox{\boldmath$r$}}(a)\cdot\mbox{\boldmath$\alpha$}(a) = 0
\end{displaymath}

となるので、少し変形して
\begin{displaymath}
\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(b)\cdot\mbox{\boldmath$\alpha$}(a)...
...-\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(a))\cdot\mbox{\boldmath$\alpha$}(a)
\end{displaymath}

とすれば、 $b\rightarrow a$ に対して、
\begin{eqnarray*}\vert PS\vert
&=&
\pm
\frac{\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(b)\cd...
...3}{\ddot{\mbox{\boldmath$r$}}(a)\cdot\mbox{\boldmath$\alpha$}(a)}\end{eqnarray*}


となるが、この $\pm$ は、(16) の符号、 すなわち丁度この分母の符号と等しかったから、
\begin{displaymath}
\pm\ddot{\mbox{\boldmath$r$}}(a)\cdot\mbox{\boldmath$\alpha$...
...t{\mbox{\boldmath$r$}}(a)\cdot\mbox{\boldmath$\alpha$}(a)\vert
\end{displaymath}

となるので、よって曲率半径 $R$ を表す式は
\begin{displaymath}
R
=\frac{\vert\dot{\mbox{\boldmath$r$}}(a)\vert^3}{\vert\d...
...3/2}}%
{\vert\dot{x}(a)\ddot{y}(a)-\dot{y}(a)\ddot{x}(a)\vert}\end{displaymath} (19)

と得らえることになる。 この場合、曲率 $\mu$
\begin{displaymath}
\mu
=
\frac{\ddot{\mbox{\boldmath$r$}}(a)\cdot\mbox{\bold...
...t{y}(a)\ddot{x}(a)}%
{\{(\dot{x}(a))^2+(\dot{y}(a))^2\}^{3/2}}\end{displaymath} (20)

と定められ、また (17) の $b\rightarrow a$ の極限を考えると $\vert PS\vert\rightarrow R$ であるから、
\begin{eqnarray*}\overrightarrow{\mbox{\rm OS}}
&\rightarrow &
\mbox{\boldmath...
...x}(a)\ddot{y}(a)-\dot{y}(a)\ddot{x}(a)}
(-\dot{y}(a),\dot{x}(a))\end{eqnarray*}


が曲率中心の位置ベクトルとなる。

(20) の分子は (16) と同じであるから、 $y=f(x)$ の場合と同様に、$\mu$ が正なら $t$ の増加に伴い左に曲がり、 負なら右に曲がることもわかる。

また、$y=f(x)$$x=t$, $y=f(t)$ と考えることもでき、 これを (19) に代入すれば容易に 2 節の (10) と同じものが得られることがわかる。 これとは逆に、前の $y=f(x)$ に対する (10) から (19) を導くこともできる。 $x=x(t)$, $y=y(t)$ のときに $dy/dx$, $d^2y/dx^2$$x$, $y$ の微分で表せば、

\begin{eqnarray*}\frac{dy}{dx}
&=&
\left.\frac{dy}{dt}\right/\frac{dx}{dt}
=
...
...
%\\ &=&
=
\frac{\ddot{y}\dot{x}-\dot{y}\ddot{x}}{(\dot{x})^3}\end{eqnarray*}


となるから、これを (10) の 2 乗に代入すれば、
\begin{displaymath}
R^2
=
\frac{\{1+(y')^2\}^3}{(y'')^2}
=
\left.\left\{1+\lef...
...{x})^2+(\dot{y})^2\}^3}%
{(\ddot{y}\dot{x}-\dot{y}\ddot{x})^2}
\end{displaymath}

となり (19) が得られる。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年3月3日