4 sin x 等の定積分

これは、$-$ の間違いの問題とは関係ないが、 ついでにきれいな定積分の関係式
\begin{displaymath}
\int_0^{\pi/2}\sin\theta d\theta = \int_0^{\pi/2}\cos\theta d\theta = 1\end{displaymath} (3)

も図形的に説明できないかと考えた。 これは、 $y = \sin\theta$ のグラフの下の部分の面積を指している (図 6)。

図 6: $\sin \theta $ の定積分
\includegraphics[height=53mm]{data/sinarea}
図 7: 区分求積
\includegraphics[height=53mm]{data/sinarea2}
式 (3) が成り立つことは、 もちろん不定積分を計算すれば容易にわかるが、 ここでは不定積分を利用せず、それを図形的に説明することを考える。

この面積は、横幅を $n$ 等分して、その分点を $\theta_k$:

\begin{displaymath}
\Delta\theta = \frac{\pi}{2n},
\hspace{1zw}\theta_k = k\Delta\theta\hspace{1zw}(k=0,1,2,\ldots,n)
\end{displaymath}

とするとき、$n$ が大きければこの面積は 短冊状の長方形の面積の和で近似できる (区分求積法、図 7):
\begin{displaymath}
\int_0^{\pi/2}\sin\theta d\theta
\approx \sum_{k=0}^{n-1} (\sin\theta_k)\Delta\theta \end{displaymath} (4)

この、 $(\sin\theta_k)\Delta\theta$ であるが、 図 4$\mathrm{QR}$ は、 (2) より
\begin{displaymath}
\mathrm{QR} = -\Delta x \approx (\sin\theta)\Delta\theta
\end{displaymath}

となるので、 図 2$\Delta x$ の部分の絶対値である $x$ 軸上の横幅が、この一つ一つの短冊の面積に相当することになる。

よって、$\Delta \theta $ への分割を図 8 のように 円の中心角の分割に置き直して考えれば、 $\sin \theta $ の定積分 (面積) を $\theta =0$ から加えていくのは、 図 8 の各角度に対する $x$ 軸上の幅を U から S まで 加えていくことに対応する。

図 8: 円の中心角の分割
\includegraphics[height=70mm]{data/integral1.eps}
図 9: 定積分が表すもの
\includegraphics[height=70mm]{data/integral2.eps}
よって、$\sin \theta $$\theta =0$ から $\theta=\pi/2$ までの積分は、 単位円の $x$ 軸の右端の 1 のところから、 $x$ 軸の左端の 0 のところまでの横幅を求めることに対応する。 ゆえにその積分は 1 となる。

同様に、図 4 $\Delta x$ の代わりに $\Delta y$ で考えれば、

\begin{displaymath}
\Delta y \approx (\cos\theta) \Delta\theta
\end{displaymath}

より $\cos \theta $ の定積分が $y$ 軸上の幅に対応するので、 $\cos \theta $ の定積分は図 8 O から T までの幅を 考えていくことに対応し、結局
\begin{displaymath}
\int_0^{\pi/2}\cos\theta d\theta = 1
\end{displaymath}

がわかる。 今の議論を、$\pi/2$ まで伸ばさずに途中で止めて、 $0$ から $\alpha$ までの定積分を考えれば よりはっきりするが (図 9)、 これまでの考察より
\begin{displaymath}
\int_0^\alpha\sin\theta d\theta = 1-\cos\alpha,
\hspace{1zw}\int_0^\alpha\cos\theta d\theta = \sin\alpha
\end{displaymath}

が得られることになる。

さらについでに、図 2 の、 底辺が $-\Delta x$ で高さが $\sin \theta $ (= Q の $y$ 座標) の縦長の長方形の面積を考えれば、 この長方形の面積は

\begin{displaymath}
(\sin\theta)(-\Delta x) \approx (\sin^2\theta)\Delta\theta
\end{displaymath}

になるので、その和は $\sin^2\theta$ の定積分に相当し、 それはこのような長方形の和である円の一部分の面積に対応する (図 8 の網掛け部分)。よって、
\begin{eqnarray*}\lefteqn{\int_0^\alpha\sin^2\theta d\theta
= \mbox{(円の SUV ...
...OSV)}}
\ &=&
\frac{\alpha}{2} - \frac{\cos\alpha\sin\alpha}{2}\end{eqnarray*}


となる。 実際、不定積分を用いて計算すれば、
\begin{displaymath}
\int_0^\alpha\sin^2\theta d\theta
=
\int_0^\alpha\left(\frac...
...\sin 2\alpha
=\frac{\alpha}{2}-\frac{1}{2}\cos\alpha\sin\alpha
\end{displaymath}

となり、上の結果に等しいことがわかる。 これ以外にも、図形で説明できる同種の定積分が隠れているかもしれない。

竹野茂治@新潟工科大学
2014年7月2日