5 定理の条件を満たす関数

この節では、定理 1 を満たす関数について考える。 実はそのような関数は、有理関数に限られることが証明できる。


定理 2

$F(s)$ が、有限個の極 $s=s_1,s_2,\ldots,s_N$ 以外では正則な関数で、 有界性条件 (1) と減衰条件 (2) を 満たすとすると、 それは分子の次数が分母の次数より小さい有理関数となる。


これはローラン展開とリューヴィルの定理から導かれる。 その概略を以下に示す。

$F(s)$$s=s_j$ でローラン展開すると

$\displaystyle F(s)
=\frac{a^{j}_{-m_j}}{(s-s_j)^{m_j}}+\cdots+\frac{a^{j}_{-1}}{s-s_j}
+a^{j}_0+a^{j}_1s+\cdots
$
のようになるが、この負巾の項の和を $F_j(s)$ とする:
$\displaystyle F_j(s)=\frac{a^{j}_{-m_j}}{(s-s_j)^{m_j}}+\cdots+\frac{a^{j}_{-1}}{s-s_j}
$
すると、$F-F_j$$s=s_j$ の周りで正則になり、 また $F_j$$s=s_j$ 以外では正則な関数であるから、
$\displaystyle G(s)=F(s)-\sum_{j=1}^NF_j(s)
$
とすると、この $G(s)$ はすべての $s=s_j$ 周りで正則、 つまり全平面で正則な関数となり、 有界性条件 (1) から $G(s)$ は全平面で有界であることが言え、 また減衰条件 (2) から
$\displaystyle \lim_{\vert s\vert\rightarrow\infty}G(s)
=\lim_{\vert s\vert\rightarrow\infty}F(s)
-\sum_{j=1}^N\lim_{\vert s\vert\rightarrow\infty}F_j(s)
=0
$
であることがわかる。 よってリューヴィルの定理から $G(s)$ は定数で、 その値は 0 となる。それは ゆえに
$\displaystyle F(s)=\sum_{j=1}^NF_j(s)
$
を意味し、この右辺を通分すれば、 分子の次数が分母の次数より小さい有理関数となる。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-07-20