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2 差分近似解

外力項のない方程式

\begin{displaymath}
u_t+\left(\frac{u^2}{2}\right)_x=0 \hspace*{1em}(0<x<1, \hspace*{1em}t>0),\end{displaymath} (6)

の初期値境界値問題
\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{ll}
u(t,0)=u(t,1) & (t>0),\\
u(0,x)=u_0(x) & (0<x<1)
\end{array}\right.\end{displaymath} (7)

の解は, $x$-方向の積分による平均 $\int_0^1u(t,x)dx$ を保存するため, $t\rightarrow\infty$ のとき $\bar{u}=\int_0^1 u_0(x)dx$ という定数 解に収束し, またその収束の速さは $O(t^{-1})$ となることが知られて いる[2]. これにより, 任意の初期値に対して, 周期的外力を与えた方程式 (1) の 初期値境界値問題 (7) の一意に定まる エントロピー解は $t\rightarrow\infty$ のときに周期解に近づいていく と予想される.

よって数値計算では初期値は適当に与えて, その近似解の $t=mT (m=1,2,3,\ldots)$ での近似解の値 $u(mT,x)$ の, $m$ を大きく していったときの様子を調べてみることにした. ただし, この方法では不安定な周期解を得ることはできない.

近似解は, その収束性が保証されていて[1], 周期解の存在証明にも使用されている[3] 段階的な Lax-Friedrichs 型の差分近似

\begin{eqnarray*}
u^{n+1/2}_{j} & = & \frac{u^n_{j+1/2}+u^n_{j-1/2}}{2}
- \fr...
...1,2,\ldots, j=0,1,2,\ldots, L-1, u^n_j=u(n\Delta t,j\Delta x))
\end{eqnarray*}



を用いた. また, 境界の所では境界条件 (7) を考慮して, $u$$x$-方向に周期拡張して計算した.

この差分近似は計算精度はそれほどよくはないが, 計算が楽であり, 安定であることから今回のような漸近的な解析には 用いやすい. ただし, その誤差は

\begin{displaymath}
\frac{\Delta x^2}{2\Delta t}u_{xx}
\end{displaymath}

の形で発生し, この項の持つ粘性効果のために解が平滑化される. Courant-Friedrichs-Lewy 条件と呼ばれる差分幅に対する安定化条件

\begin{displaymath}
\{\vert f'(u)\vert+T\vert g\vert\}\frac{\Delta t}{\Delta x}\leq 1
\end{displaymath}

を与えるために, $\Delta x$ を小さくすればこの粘性効果は少なくなるが, 周期解の数値解析には影響を及ぼす. この効果については 4 節で述べる.


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Shigeharu TAKENO
2001年 7月 20日