A 有界変動関数の性質
この節では、有界変動関数に関するの性質のうち、
Glimm の差分法に必要なものを簡単に紹介する。
を閉区間 の分割、すなわち、
とするとき、
と定める。ここで、
とする。これに対し、このような の分割すべてに対する上限を考え、
とし、それぞれ の全変動、正変動、負変動
と呼ぶ。
開区間や半開区間 , ,
(無限区間
, , も含む)
に対しては、
のように定義し、, も同様に定義する。
これらは、より広い区間に対するものの方が値が大きくなるから、例えば
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(A.123) |
等は容易にわかる。
もちろんこれらは , に対しても同様のことが言える。
である関数 を、 上の 有界変動関数 と呼ぶ。
の分割 に対して、その の分点をすべて含む
(よって より細かい) の分割を
の 細分 と呼ぶ。
命題 A.1
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(A.124) |
証明
まず、
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(A.125) |
および、
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(A.126) |
に注意する。 の任意の分割 に対し、
(A.9) より、
となるので、 の上限をとれば
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(A.127) |
が得られる。一方、 の分割 , に対し、
その共通の細分である、
と の分割点すべてからなる分割を
と書くことにすれば、
(A.10) より
が成り立つので、
となる。よって、, の上限を取れば
|
(A.128) |
となるので、(A.11), (A.12) より
(A.8) が成り立つ。
系 A.2
開区間、半開区間に対しても以下が成り立つ。
この系 A.2 は、
(A.7) より容易に示される。
命題 A.3
のとき、
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(A.129) |
証明
命題 A.1 より、
ならば
,
となる。よって、任意の
に対して、 のある分割
, が存在して、
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(A.130) |
とできる。今、(A.9) より、
なので、(A.14) より、
となる。 は任意なので、
よって (A.13) が成り立つ。
命題 A.4
のとき、 に対して、
はいずれも に関して単調増加関数で、
への片側極限
(ただし では , では )
が常に存在し、不連続点は高々可算個である。
証明
前半部分は明らか。後半部分は一般の単調増加関数に対して言える。
今、 を 上単調増加な関数であるとすると、
単調収束定理により (端点では片側のみ)
の存在は明らか。よって、不連続点は
となる であり、この間には有理数が少なくとも一つ存在する。
つまり、不連続点の個数は 内の有理数の個数以下であるから
高々可算個。
命題 A.3, A.4、および
(A.7) より次の系も容易に得られる。
系 A.5
開区間、半開区間 (無限区間も含む) に対しても、
命題 A.3 と同様に以下が成り立つ。
この系 A.5 も、
(A.7) より容易に示される。
命題 A.6
で、かつ
のとき、
で、
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(A.131) |
証明
平均値の定理により、任意の分割 に対し、
となるので、
が言える。また、この命題の仮定の元 はリーマン可積分であり、
任意の分割 に対し、
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(A.132) |
であるが、今
と書くことにすると、
となる分割列
を取ると、
(A.16) とリーマン可積分性により、
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(A.133) |
となる。よって、
で
とすれば
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(A.134) |
となる。逆に、
より、任意の
に対し、
となる分割
が取れるが、
これに対し
となる に対し、
を考えれば、
となるので、
で
とすれば (A.17) より、
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(A.135) |
が得られる。よって、 の任意性と
(A.18), (A.19) により
(A.15) が成り立つ。
命題 A.7
に対し、
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(A.136) |
証明
の分割 , の分割 を取ると、
これを合わせて の分割ができる。
これを
と書くことにすると、
となるので、, の上限を取れば
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(A.137) |
となる。一方、 の分割 に対し、
に を分点として追加した細分を とし、
を の分割 と
の分割 に分けて
とすると、
となるので、 に関する上限を取れば
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(A.138) |
となるので、(A.21), (A.22)
より (A.20) が成り立つ。
命題 A.7 より、以下の 2 つの系も容易に得られる
(よって証明は省略する)。
系 A.8
開区間、半開区間に対しても以下が成り立つ。
系 A.9
任意の と に対して、
命題 A.10
のとき、任意の に対し、
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(A.139) |
証明
まず、
より、系 A.8
から
は
と有界な単調増加関数の差と書けるので、
これは に関して Lebesgue 可測関数となる。
任意の に対して、
となるが、ここで
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(A.140) |
となる自然数 を取ると、 より
であり、よって、
|
(A.141) |
となるが、系 A.9 より、
であるので、(A.25) の右辺は、
に等しく、
(A.24) より となるので、結局、
となる。 は任意なので、
よって (A.23) が成り立つ。
竹野茂治@新潟工科大学
2009年1月18日