5.4 収束性のための評価

この節では、Glimm 差分近似解の収束性を示すのに必要な評価を 定理 5.1 より導く。


定理 5.2

$U_0$ に関する定理 5.1 の仮定の下、 $\Delta x$ には無関係なある正の定数 $C_1$, $C_2$ が存在して、 次が成り立つ。

    $\displaystyle \mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U^\Delta(t,\cdot)\leq C_1\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U_0
\hspace{1zw}(t>0),$ (5.79)
    $\displaystyle \sup_{x\in R}\vert U^\Delta(t,x)-\bar{U}\vert
\leq \hat{\delta}_3
\hspace{1zw}(t>0),$ (5.80)
    $\displaystyle \int_R\vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x)\vert dx
\leq C_2(\Lambda\vert t-s\vert+2\Delta x)\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U_0
\hspace{1zw}(t,s>0)$ (5.81)


(5.29) は、定理 5.11. より OK. また (5.28) は、 $t_{n-1}\leq t\leq t_n$ に横たわる唯一の $I$-曲線 $J_n$ を考えれば、 (5.7) より $t_{n-1}<t<t_n$ に対して

\begin{displaymath}
\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U^\Delta(t,\cdot)\leq M_2L(J_n)
\end{displaymath}

であるが、(5.8), (5.25) より
\begin{displaymath}
L(J_n)\leq \frac{3}{2}L(O)\leq \frac{3}{2}\sqrt{N}M_1\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U_0
\end{displaymath}

なので、よって、
\begin{displaymath}
\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U^\Delta(t,\cdot)\leq \frac{3}{2}\sqrt{N}M_1M_2\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U_0
\end{displaymath}

が得られる。なお、差分の形より、明らかに
\begin{displaymath}
\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U^\Delta(t_{n-1},\cdot)\leq\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U^\Delta(t,\cdot)
\end{displaymath}

であるので、結局 (5.28) には $C_1=3\sqrt{N}M_1M_2/2$ とすればよいことになる。 よってあとは (5.30) を示せばよい。

(5.30) は、おおまかには以下の方針に従って証明する:

  1. $0<s<t$, $X=\Lambda(t-s)$ に対して
    $\displaystyle {\vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x)\vert}$
      $\textstyle \leq$ $\displaystyle \vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x-X)\vert +\vert U^\Delta(s,x-X)-U^\Delta(s,x)\vert$  
      $\textstyle \leq$ $\displaystyle C_4\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _{[x-X,x+X]}U^\Delta(s,\cdot)$ (5.82)

    を示す (図 5.6)。
  2. 一般に、$A>0$ に対して
    \begin{displaymath}
\int_R\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _{[x-A,x+A]}f dx\leq 2A\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _Rf
\end{displaymath} (5.83)

    なので、(5.28), (5.31) より
    $\displaystyle \int_R\vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x)\vert dx$ $\textstyle \leq$ $\displaystyle 2C_4X\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U^\Delta(s,\cdot)$  
      $\textstyle \leq$ $\displaystyle 2C_1C_4\Lambda(t-s)\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U_0$ (5.84)

    が得られる。
図 5.6: 差分の依存領域
\includegraphics[height=0.2\textheight]{triangle1.eps}
ただし、(5.30) と (5.33) には少し違いがあるが、 実際にはこの方針は離散的に少し修正すべきところがあり、 正確には (5.30) のようになる。 なお、この方針の 1. の部分については [Glimm] (および [Smoller]) のやり方ではなく、 [Dafermos] による少し特別な $I$-曲線を用いた方法を紹介する。 また、(5.32) は、 ここでは実際にはこれとは少し異なるその離散バージョンを用いるのであるが、 ここでの証明の参考になると思うので (5.32) の証明も A 節で紹介する。

方針 1. を示すために、 ここでは今までとは異なる、 $2\Delta t$ 幅にとどまらない有限長の $I$-曲線を考える。

$0<s<t$ として構わないのでそのようにし、しばらく $x$ は固定して考える。 今 $(t,x)\in \mathop{\mathrm{Cell}}\nolimits ^{n_1}_{m_1}$, $(s,x)\in \mathop{\mathrm{Cell}}\nolimits ^{n_2}_{m_2}$ ($n_1+m_1$, $n_2+m_2$ は奇数) とすると、 $n_1\geq n_2$ で、$m_1$$m_2$, $m_2\pm 1$ のいずれかになる。

まず $n_1>n_2$ の場合を考える。 このとき、$(t,x)$ を含むセル $\mathop{\mathrm{Cell}}\nolimits ^{n_1}_{m_1}$ 内の $a^{n_1}_{m_1}$ を頂上に持ち、 そこから山型に $t=t_{n_2-1}$ まで降ろした有限長の $I$-曲線を $J$ とし、 $t_{n_2-1}\leq t\leq t_{n_2}$ の範囲のこの山型の $J$ の内側にある $I$-曲線 ($J$ のギザギザな底辺) を $I$ とする (図 5.7)。

図 5.7: 有限な $I$-曲線 $I$$J$
\includegraphics[height=0.2\textheight]{triangle2.eps}
この $I$ 曲線を左右に無限に延長して $t_{n_2-1}\leq t\leq t_{n_2}$ 内に入る $I$-曲線 $J_{n_2}$ に対し、 (5.18) より
\begin{displaymath}
L(I)\leq L(J_{n_2})\leq \frac{1}{K}
\end{displaymath}

であり、また $I$ から $J$ へは一つ一つ直後の有限な $I$-曲線を取って 有限回でたどりつくことができる。 しかも、その直後の $I$-曲線に対しては、これまでの $I$-曲線に関する議論が そのまま成り立ち、よって、この $I$$J$ に対しても単調性 (5.20), (5.21) が成り立つことが示される。

Riemann 問題の解の値は、原点を出る半直線上では一定であるから、 $\mathop{\mathrm{Cell}}\nolimits ^{n_1}_{m_1}$ 内での $U^\Delta$ の値も 底辺の中点 $(t_{n_1-1},m_1\Delta x)$ から出る線分上一定であり、 よって、この点と $(t,x)$ とを結ぶ直線と $J$ との $\mathop{\mathrm{Cell}}\nolimits ^{n_1}_{m_1}$ 内の交点を $(t',x')$ とすれば、 $U^\Delta(t,x)=U^\Delta(t',x')$ となる。

同様に、$(s,x)$ $(t_{n_2-1},m_2\Delta x)$ を結ぶ直線と $I$ との $\mathop{\mathrm{Cell}}\nolimits ^{n_2}_{m_2}$ 内の交点を $(s',y')$ とすれば、 $U^\Delta(s,x)=U^\Delta(s',y')$ となる。

$(t',x')$, $(s',y')$ はそれぞれ $J$, $I$ 上にあり、 また $J$$I$ の共通の左端の一つ右隣りの頂点を $P=a^{n_2}_{m_1-(n_1-n_2)}$ とすれば、 (5.7) より、

\begin{eqnarray*}\vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x)\vert
&=&
\vert U^\Delta(t',...
...+ \mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _I U^\Delta
\leq M_2L(J)+M_2L(I)\end{eqnarray*}


となる。 ここで、(5.18), (5.21) より
\begin{displaymath}
L(J)\leq L(I)+KL(I)^2 \leq 2L(I)
\end{displaymath}

となるから、結局
\begin{displaymath}
\vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x)\vert\leq 3M_2L(I)\end{displaymath} (5.85)

が成り立つ。

次に、$x$ を動して考えてみると、 この (5.34) は $(t,x)\in \mathop{\mathrm{Cell}}\nolimits ^{n_1}_{m_1}$ である間は同じ式が成り立ち、 $(t,x)$ が隣りのセルに移れば ($m_1$ が一つ変われば) この式の $I$ もこの形のまま横に $2\Delta x$ 平行移動したものになる。 よって、今 $m_1$, $n_1$, $n_2$ によって決定する (5.34) の $I$-曲線 $I$ $I(m_1;n_1,n_2)$ と書くことにすると、 (5.34) は

\begin{displaymath}
\vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x)\vert\leq 3M_2L(I(m_1;n_1,n_2))\end{displaymath} (5.86)

となる。

次は、$n_1=n_2$ のときを考える。この場合は $(t,x)$$(s,x)$ も 同じセル $\mathop{\mathrm{Cell}}\nolimits ^{n_1}_{m_1}$ 内に入り、 $I(m_1;n_1,n_2)=I(m_1;n_1,n_1)$ は、 $a^{n_1-1}_{m_1-1}$$a^{n_1}_{m_1}$ $a^{n_1-1}_{m_1+1}$ とを結ぶ 2 本の線分からなる有限 $I$-曲線となる。これに対して、

\begin{eqnarray*}\vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x)\vert
&=&
\vert U^\Delta(t',...
...{TV}}\nolimits _{I(m_1;n_1,n_1)}U^\Delta\leq M_2L(I(m_1;n_1,n_1))\end{eqnarray*}


となるので、(5.35) は $n_1=n_2$ のときも成り立つと見ることができる。 この (5.35) が方針 1. の (5.31) に対応する。

次は、方針 2. であるが、 (5.35) を $x$ で積分すると、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\int_R\vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x)\vert dx
=
\s...
...2\Delta x \sum_{\mbox{\scriptsize$n_1+m$ は奇数}}L(I(m;n_1,n_2))\end{eqnarray*}


となるが、 ギザギザの有限な $I$-曲線 $I(m;n_1,n_2)$ の山の数は $(n_1-n_2+1)$ 個で、 よって、$(n_1-n_2+1)$ 個おきの $m$ に対して $I(m;n_1,n_2)$ をつなげると これは $J_{n_2}$ になる。つまり、
\begin{displaymath}
\sum_{k=-\infty}^\infty L(I(k(n_1-n_2+1)+r;n_1,n_2))=L(J_{n_2})
\end{displaymath}

が言えるので、よって、
\begin{displaymath}
\sum_{\mbox{\scriptsize$n_1+m$ は奇数}}L(I(m;n_1,n_2)) = (n_1-n_2+1)L(J_{n_2})
\end{displaymath}

となる。結局、
\begin{displaymath}
\int_R\vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x)\vert dx
\leq
6M_2\Delta x (n_1-n_2+1)L(J_{n_2})
\end{displaymath}

が言えることになる。これが方針 2. の (5.33) の最初の不等式に相当する。 ここで $t_{n_1}-\Delta t\leq t$, $s<t_{n_2}$ より
\begin{eqnarray*}\Delta x (n_1-n_2+1)
&=&
\frac{\Delta x}{\Delta t}(n_1\Delta ...
...O)\leq \frac{3}{2}\sqrt{N}M_1\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U_0\end{eqnarray*}


であるので、結局
\begin{displaymath}
\int_R\vert U^\Delta(t,x)-U^\Delta(s,x)\vert dx
\leq
9\sqrt{...
...\{\Lambda(t-s)+2\Delta x\}\mathop{\mathrm{TV}}\nolimits _R U_0
\end{displaymath}

となって (5.30) が示されたことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年1月18日