8 <Bn> が 0 に収束すること
次は、
の 0 への収束性を示す。
ここでは DiPerna の方法を多少改良した方法を紹介する。
DiPerna ([5]) は、
を考え、これらの組み合わせによって
|
(43) |
を示している。
しかし、[4],[5] では (43) を示すために , に強い制限を与えることで
,
が有界で、
,
が有界
となるようにしている。
しかし、その議論を見直してみると、以下の式を用いれば , の制限を多少緩くできることがわかる。
補題 9
とすると、
次が成り立つ。
|
(44) |
なお、
は の , を , で置き換えたものを意味する。
証明
一般に、Tartar の関係式を満たすようなエントロピー対 , (
) に対して、
とするとき、
|
(45) |
が成り立つことを示せばよい。
(45) は、Tartar の関係式
を直接代入して整理しても得られるが、
4 次の行列式
を、1,2 列目に関して 2 次の小行列式同士の積の形にラプラス展開して、
Tartar の関係式
を用いても得られる ((45) を 2 倍した式が得られる)。
[4],[5] でも、
実質的には (44) を用いたような議論はしているのであるが、
直接 (44) を積極的には使っていないために , に強い制限が必要になっていて、
特に [4] ではその の選択がかなり複雑になっている。
本稿では、(44) を積極的に用いることで、
, には強い制限を与えないような議論を行う。
なお、関係式 (45) は [11] p450 にも見られるが、
Lions ら ([6]) はこれを用いてはおらず、
内エントロピー のみを用い、
そのパラメータを変えたエントロピー対に対する 3 次の行列式
を 1 列目に関して展開して
とし、この式をパラメータ , などについて 回微分する、
といった手法を用いている。
補題 10
とすると、 は有界で、
に対しては 、
に対しては となる。
証明
は、
であるから 上有界で、(42) より
となるが、
に対して
なので
となる。一方、
に対しては、
命題 8 の 1. より
か、 であるが、いずれの場合も
は
に対して 0 になってしまうので、
となる。
次に、, の極限を考える。
それには次の補題を用いる。
補題 11
(
)、
および任意の有界な区間 に対して、次が成り立つ。
-
() は、, に関して有界で、
- が 上連続ならば、
は、 (), に関して有界で、
以下が成り立つ。
証明
1.
と書くことにすれば、
であり、
だから は有界で、
も有界である。
のとき、
ならば
なので 大きい に対しては は のサポートを越えてしまうので
となる。
ならば なので OK.
2.
, とすると、
なので、
となり は確かに有界となる。 のサポートは
|
(46) |
なので、 ならば であり、
ならば十分大きい に対して となり、
そのような に対しては だから
となる。
ならば十分大きい に対し となるから、
そのような に対して
となる。ゆえにこれをまとめて
となる。
ここまでは ,
に対して、
のようにしてきたが、
を用いれば
となるので、この形で考えることにする。
まず は、(17), (21), (23) より
となるので、補題 11 より は
, に関して有界で、
となる。同様に を考えると、
となるが、
等より、補題 11 から も
, に関して有界であることがわかり、
なので
となる。よって Lebesgue 収束定理により、
が言え、同様に
が言えるから、補題 9 より
となる。よって補題 10 より、
に対しては
となることもわかる。
命題 12
はすべての に対して有界で、
|
(47) |
となる。特に
に対しては
となる。
なお、本稿では [4],[5] とはやや異なり、
よりもむしろ
の方を用いる。
竹野茂治@新潟工科大学
2010年1月6日