まず、汎弱収束列の非線形関数の極限を「ある測度による積分」ととらえる Young 測度から説明する。
の開集合 、 関数列 に対して の有界集合 を a.e. となるものとすると、 次を満たすような のある部分列 と、 a.e. に対して決定する 上の確率測度、 すなわち非負で全測度 1 の Borel 測度の族 が存在する。
この を に対する Young 測度 と呼ぶ。
4 節の性質 1. より は一様有界、よって となる , が取れるから、 この定理 4 によりある部分列 ( ) と Young 測度 が存在して、 で、 上の任意の連続関数 に対して
(36)
しかし、 は弱い収束であるから、 , であっても、 そのスカラー積
しかし、1 階微分の弱いコンパクト性があれば、積の収束が保証される。
を の有界な開集合で、 が
(36) より、 Darboux の公式 (14), (15) で得られる弱エントロピー対 () に対しては
(38)
(39)
ところで、この関係式 (39) から を決定する段階 (6 節以降) では、 を固定した上でこの関係式 (39) の (), ( ) を色々に取り替えて考察するが、 そこには注意が必要である。
(39) は、 2 つのエントロピー対 (), ( ) に対して a.e. 成立する式であるが、それが成立する の集合、 すなわち からある零集合を除いた集合 は、 上の論法からわかるように (), ( ) に依存する。 よって、Tartar の関係式を使用するエントロピー対が高々可算個 であれば、それらに対しては共通の が取れて、
しかし、 は Borel 測度であるから、この可算個のエントロピー対 が一様有界で、各 に対して各点収束する極限 を持つならば、 Lebesgue 有界収束定理により
例えば 3 節で見たエントロピーで言えば、 (16), (18) によるエントロピー、 および (19), (20) のエントロピーは、パラメータ を有理数と取ることにすれば、 その全体は可算個であるからそれらに対して共通の が取れ、 よってその極限として得られる , も同じ で Tartar 関係式が成り立つエントロピー群に入れることができる。 さらに、有理数 を動かした極限を考えれば、 その を実数全体に広げたものも同じエントロピー群に入れることができる。
以上をまとめると、次が言えたことになる。
ある の部分集合 が存在して、次を満たす。
竹野茂治@新潟工科大学