6 Tartar 方程式の解法の概要

本節以降は、Tartar の関係式 (Tartar 方程式) (39) から、 $\nu=\nu_{(t,x)}(U)$$\delta $ 関数となることを導くことを考えるが、 本節ではその概要について説明する。

Tartar 方程式 (39) は、 命題 6$Q$ 内の各 $(t,x)$ 毎で考えればよく、 また各 $(t,x)$ に対する方法に違いはないので今後 $(t,x)$ は省略することとし、 $\nu$ による積分も、$\nu$ を省略して簡単に

\begin{displaymath}
\langle \nu_{(t,x)}(U),\eta(U)\rangle =\langle \eta\rangle
\end{displaymath}

のように書くこととする。

また、$U$ $(\rho,\rho u)=(\rho,m)$ ではなく、 リーマン不変量 $(w,z)$ を中心に考えることとする。 つまり、例えば $\langle \eta\rangle $

\begin{displaymath}
\langle \eta\rangle = \langle \nu_{(t,x)}(w,z),\eta(w,z)\rangle
\end{displaymath}

を意味することとする。

Tartar 方程式の解法の、おおまかな方針は以下の通りである。

  1. $w>z$ の範囲に $\nu$ のサポートがあるとき、 そのサポートを含む最小の三角領域
    \begin{displaymath}
\Sigma_1 = \Sigma(w_1,z_1)\subset \Sigma(A,B)
\end{displaymath}

    を取れば、その頂点 $(w_1,z_1)$$\nu$ のサポートに含まれることを示す
  2. 同じ条件の元、$(w_1,z_1)$ 以外には $\Sigma _1$$w>z$ の部分に $\nu$ のサポートがないことを示す
  3. 1., 2. により、
    \begin{displaymath}
\nu(U) = \bar{\nu}(U)+\alpha \delta(w-w_1,z-z_1),\hspace{1zw}
\mathop{\mathrm{supp}}\nolimits \bar{\nu}\subset\{w=z\}
\end{displaymath}

    が言えるので、そこから $\alpha = 1$ を示すことで $\nu(U)=\delta(w-w_1,z-z_1)$ を示す

DiPerna ([5]) にしても Lions らの方法 ([6],[8]) にしても、 おおまかな方針はこの通りであるが、 1. に関しては Lions らの方法 ([6]) の方がシンプルであり、 2. を示すのは DiPerna の方法 (を少し改良した方法) の方が少し易しいだろうと思う。 3. は両者には違いはなく容易である。 次節以降でこの 1. から順に見ていくことにする。

竹野茂治@新潟工科大学
2010年1月6日