9 K6 の評価

本節より、$P[\Psi_n]$ を含む $K_6$, $K_9$, $K_{10}$ を評価 していくが、$P[\Psi_n]$ の特異性が高いため、 少しこれまでより厄介である。 まず本節は $K_6$ の評価を考える。

なお、(98) で $\sigma_n$ の代わりに $\bar{\sigma}_n$ を使う形にしたのは、 実は $\psi_n(z)P[\hat{\Psi}_n]$ の形を消す目的もあり、$K_6$ $\psi_n(w)P[\hat{\Psi}_n]$ ( $=\Psi_n(0)P[\hat{\Psi}_n]$) なら評価できるのであるが、 $\psi_n(z)P[\hat{\Psi}_n]$ ( $=\Psi_n(1)P[\hat{\Psi}_n]$) だと特異性が高すぎて評価が難しい。

まず本節では、$P[\Psi_n]$ を以下の形に変形して考察する。

\begin{eqnarray*}P[\Psi_n]
&=&
\mathop{\mathrm{p.v.}}\int_0^\infty\Psi_n(x)\,\...
...i_n(x)-\Psi_n(1)}{x-1}
+\Psi_n(1)\,\frac{\xi(x)}{x-1}\right\}dx}\end{eqnarray*}
と分けると、$\xi(x)/(x-1)$$x=1$ で奇対称なので その積分は 0 となり、
  $\displaystyle
P[\Psi_n]
=
\int_{1/2}^{3/2}\xi(x)\,\frac{\Psi_n(x)-\Psi_n(1)}...
...int_{\mbox{\scriptsize\boldmath$R$}}\xi(x)\,\frac{\Psi_n(x)-\Psi_n(1)}{x-1}\,dx$ (119)
となる。 この表現を用いると、
\begin{eqnarray*}K^{(1)}_6
&=&
\int_{\mbox{\scriptsize\boldmath$R$}}(w-z)h(a)\...
...)N_n\,
\frac{\hat{\psi}_0(s-N_n x)-\hat{\psi}_0(s-N_n)}{x-1}\,dx\end{eqnarray*}
となる、 2 つ目の積分の $N_n$$\hat{\psi}_0$ に取り込むこと を考えるが、$\psi_0$ と その部分の分数式の積は、 分子に合わせて分母に $N_n$ 倍を作って評価する必要があるので、
  $\displaystyle
K^{(2)}_6
=\psi_0(s)N_n^2\frac{\hat{\psi}_0(s-N_n x)-\hat{\psi}_0(s-N_n)}%
{N_n x-N_n}$ (120)
$N_n^2$ を取り込む形での変形を行う。 そのために、次の補題を利用する。


補題 7

$\phi(x)\in\mathcal{S}$ に対して $(\Delta\phi/\Delta x)(x)=(\phi(x+\Delta x)-\phi(x))/\Delta x$, $\phi_j(x)=x^j\phi(x)$ と書くことにすると、次が成り立つ。

  1. $\displaystyle x\frac{\Delta\phi}{\Delta x}(x)
=\frac{\Delta\phi_1}{\Delta x}(x)-\phi(x+\Delta x)
$
  2. $\displaystyle x^2\frac{\Delta\phi}{\Delta x}(x)
=\frac{\Delta\phi_2}{\Delta x}(x)
-2\phi_1(x+\Delta x)+\phi(x+\Delta x)\Delta x
$


証明

1. $x=(x+\Delta x)-\Delta x$ より

\begin{eqnarray*}x\frac{\Delta\phi}{\Delta x}(x)
&=&
\frac{(x+\Delta x)\phi(x+...
...ta x)
\ =\
\frac{\Delta\phi_1}{\Delta x}(x)-\phi(x+\Delta x)
\end{eqnarray*}
となる。

2. $x^2=(x+\Delta)^2-2(x+\Delta x)\Delta x+(\Delta x)^2$ より、

\begin{eqnarray*}x^2\frac{\Delta\phi}{\Delta x}(x)
&=&
\frac{\phi_2(x+\Delta x...
...phi_2}{\Delta x}-2\phi_1(x+\Delta x)
+\phi(x+\Delta x)\Delta x
\end{eqnarray*}
となる。


$y=s-N_n$, $\Delta y = (s-N_n x)-(s-N_n)=N_n(1-x)$ とすると、 $N_n=s-(s-N_n) = s-y$ なので、(120) は 補題 7 により以下のように変形できる。

\begin{eqnarray*}K^{(2)}_6
&=&
-(s-y)^2 \psi_0(s)\frac{\Delta\hat{\psi}_0}{\De...
...hat{\psi}_0(s-N_n x)\Delta y
\\ &=&
K^{(2)}_{6,1}+K^{(2)}_{6,2}\end{eqnarray*}
なお、$K^{(2)}_{6,2}$ は最後の項で、 それ以外の和を $K^{(2)}_{6,1}$ とする。 このとき $K^{(2)}_{6,1}$ は、
\begin{eqnarray*}\vert K^{(2)}_{6,1}\vert
&\leq&
\vert\psi_{0,2}(s)\vert\Vert\...
...Vert _{L^\infty}
+2\Vert\hat{\psi}_{0,1}\Vert _{L^\infty}\right)\end{eqnarray*}
と評価され、この右辺は $s$$L^1$ 関数なので、 これで $s$ に関する積分の部分はまかなえることになる。 $x$ の積分は $\xi(x)\in L^1$ でまかなえばよいので、 これで $K^{(1)}_6$ のうち $K^{(2)}_{6,1}$ の項を持つ 積分 $K^{(1)}_{6,1}$ ($K^{(2)}_{6,1}$$h$, $\xi(x)$ の積の積分) は 一様有界となる。 $K^{(1)}_6$ の残りの部分 $K^{(1)}_{6,2}$ ($K^{(2)}_{6,2}$$h$, $\xi(x)$ の積の積分) には $\Delta y=N_n(1-x)$ が含まれるが、 これは置換積分で $N_n$ を消す。すなわち $s-N_n x=\bar{y}$ により、
\begin{eqnarray*}K^{(1)}_{6,2}
&=&
\int_{\mbox{\scriptsize\boldmath$R$}}h\left...
...
\left(\frac{s-\bar{y}}{N_n}\,-1\right)
\hat{\psi}_0(y)d\bar{y}\end{eqnarray*}
とすれば、$\xi(x)(x-1)$ は有界なので、
$\displaystyle \vert K^{(1)}_{6,2}\vert
\leq\Vert h\Vert _{L^\infty}\Vert\psi_0\Vert _{L^1}
\Vert\xi(x)(x-1)\Vert _{L^\infty}\Vert\hat{\psi}_0\Vert _{L^1}
$
となり、よって $K^{(1)}_{6,2}$ も一様有界となる。 これで、$K^{(1)}_{6,1}$, $K^{(1)}_{6,2}$, そして $K_6$ が 一様有界となることが示された。

$n\rightarrow\infty$ のときの極限は、 $h(w-s/n)\rightarrow h(w)$ で、また

$\displaystyle \frac{\Delta\phi}{\Delta y}
=\frac{\phi(s-N_n x)-\phi(s-N_n)}{(s-N_n x)-(s-N_n)}
=\int_0^1\phi'(s-N_n((x-1)t+1)) dt
$
であり、 $(x-1)t+1\geq \min\{x,1\}\geq 1/2$ なので、
$\displaystyle s-N_n((x-1)t+1)\rightarrow -\infty
$
となるから、 $\phi=\hat{\psi}_0, \hat{\psi}_{0,1},
\hat{\psi}_{0,2}$ に対して $\Delta\phi/\Delta y\rightarrow 0$ となり、 よって
$\displaystyle K^{(2)}_{6,1}\rightarrow 0
$
より Lebesgue 収束定理により $K^{(1)}_{6,1}\rightarrow 0$ となる。 $K^{(1)}_{6,2}$ は、
$\displaystyle \xi\left(\frac{s-y}{N_n}\right)
\left(\frac{s-y}{N_n}\,-1\right)
\rightarrow\xi(0)(-1) = 0
$
となるので、Lebesgue 収束定理により $K^{(1)}_{6,2}\rightarrow 0$ となり、よって
  $\displaystyle
K^{(1)}_6
= K^{(1)}_{6,1} + K^{(1)}_{6,2}
\rightarrow 0,
\hspace{1zw}K_6\rightarrow 0$ (121)
となる。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-04-03