Next: 2 特性曲線
Up: 非線形偏微分方程式入門 1
Previous: はじめに
(PDF ��������: pdetutor.pdf)
1 1 次元波動方程式と移流方程式
2 階の線形偏微分方程式
 |
(1) |
は、上下に小さく運動する弦の振動などをあらわす方程式で、1 次元波動
方程式と呼ばれる。弦の振動の場合は
は時刻、
は場所、
は
弦の高さを意味する。
図 1:
弦の振動
![\includegraphics[width=\textwidth]{image/string.eps}](img12.gif) |
ただし、大きい振幅に対しては、この方程式を満たす関数と物理現象とは
必ずしも対応しない。それはこの方程式をどのようにして導くかを見れば
わかる。方程式の導出については [8], [11] などを
参照せよ。
今、偏微分を微分演算子を用いて
のように書くことにすると (1) は
と書け、
は定数なので、微分演算子に対して成り立つ公式
により、
が成り立つ。この式から明らかに、1 階の偏微分方程式
 |
(2) |
または
 |
(3) |
を満たす関数
は (1) の解であることがわかる。
この逆、すなわち (1) を満たせば (2)
または (3) を満たす、ということはもちろん成り立たない。
この (2), (3) はそれぞれ次のような
解を持つ。
ただし、
,
は滑らかな任意の関数である。これらがそれぞれ
(2), (3) を満たすことは偏微分
の計算により容易に確かめられる。
今、(4) を
の関数と考えると、この関数は
のグラフを右に
平行移動したものになっている。つまり、
グラフの形は変わらずに、右に 1 秒当たり (
の単位を秒とすれば)
cm だけ (
の単位を cm とすれば) 平行移動したことになり、
すなわち、速度
[cm/秒] で平行移動している、とみなすことが
できる。これは右へ進む ``波'' と見ることができる。
図 2:
右へ進む波
![\includegraphics[width=\textwidth]{image/move.eps}](img28.gif) |
(5) は逆方向に
のグラフを平行移動した
形の関数になっていて、すなわち
[cm/秒] で進む ``波'' である。
元の方程式 (1) は線形であり、解のいくつかを加え合
わせたものもまた解となるので、よって (1) は
 |
(6) |
という形の解を持つ。
実は、逆に (1) の解は必ず (6) の形に
なることが知られている (これについては [8], [11]
などを参照)。
2 階の方程式の解が、常に 1 階の方程式の解から得られるとは限らないが、
1 次元の波動方程式の場合は (1) と、
(2) や (3) の形の方程式
には深いつながりがあることがわかる。この方程式は
波動現象を解析する上で基本となるものであり、移流方程式
と呼ばれている。
以下、この 1 階の移流方程式を基点にして、線形、非線形の波動現象を
考えてみる。
Next: 2 特性曲線
Up: 非線形偏微分方程式入門 1
Previous: はじめに
Shigeharu TAKENO
2001年 9月 21日